
“レインボーホール”——それは煌びやかな色彩の裏に、幾重にも張り巡らされた陰謀と愛が渦巻く、迷宮のような場所。

【メンタルエイド】
BRAND-NEW MUSIC DAYS

-心に効く、音楽の処方箋―
毎回、一つの楽曲を徹底考察し、あなたの心に癒しと力をお届けする本シリーズ。
今回は、Mrs. GREEN APPLEの楽曲「クスシキ」を考察します!
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はじめに

TVアニメ『薬屋のひとりごと』第2クールオープニングテーマとして話題のMrs. GREEN APPLEの楽曲「クスシキ」。
この記事では、歌詞に込められた深い意味と、楽曲に漂う幻想的な世界観を、じっくりと言葉で紐解きながら、伝えたい想いの本質に迫ります。
どうぞ最後までお付き合いください。
楽曲タイトル「クスシキ」の2つの意味

まずは、楽曲タイトルについて考察していきます。
タイトルからして一筋縄ではいかない、不思議な余韻を感じさせますよね。
一体“クスシキ”とは何を意味し、どんな物語を描いているのでしょうか?
「クスシキ」とは、漢字で書けば「奇しき(くしき)」となり、厳密にいえば「クスシキ」なる言葉はありません。
古語において「くすし」は「神秘的・霊妙・不思議」といった意味を持っています。
それと同時に「薬(くすり)」という語源とも結びついているのですが、ここには2つの意味があると筆者は考えました。
「奇しき術」=治癒と再生の魔法
歌詞冒頭に出てくる「奇しき術」。
これは単なる“魔法”ではなく、「治す」「癒す」「再生させる」という意味を孕んだ象徴的な表現。
後宮に生きる薬師・猫猫の立場ともリンクします。
ラストの「クスシキ時間」=“薬のような”時間
終盤の歌詞に登場する「クスシキ時間」というカタカナ表記には注目です。
これは現実と非現実の間にあるような、不思議な時間の流れ。
心の病や喪失を、そっと癒すような時間が流れている——そんなイメージさえ想起させますよね。
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楽曲イメージ
摩訶不思議でポップな“虹色の穴”に吸い込まれるような感覚
この楽曲の最大の特徴は、「明るく軽快なテンポ」と「どこか不穏な歌詞」のギャップ。

明るくポップなサウンドに身を任せながらも、どこか胸がざわつくような言葉が紡がれています。
筆者自身が最初に感じたのは、“レインボーホール(虹色の穴)”に吸い込まれていくような感覚でした。

カラフルで幻想的なのに、奥には闇や哀しみも潜んでいるような空間。
それはまるで、夢と現実の間を行き来する迷宮のようです。
この“虹色の穴”のイメージは、アニメの内容——後宮の陰謀や命の重み、猫猫と壬氏の心の変化——とも共鳴し、楽曲を通してアニメの“見えない部分”まで感じさせてくれます。
歌詞の意味を徹底考察!

それでは歌詞考察に入ります。
印象的な歌詞を深掘りし、読み解きながら、この歌が伝えたい想いの本質に迫っていきますね。
※全文を知りたい方は、以下のリンクからご確認ください。
“愛してる”と“ごめんね”の対比構造
この楽曲の要となるフレーズがコチラ。
「愛してるとごめんねの差って まるで月と太陽ね」
「愛してると大好きの差って まるで月と月面ね」
相反するようで、どちらも欠かせない感情。
光と影、主観と客観がそこにある――
大サビの「愛してるよ ごめんね じゃあね まるで夜の太陽ね」に続くとき、そこには矛盾しながらも共存する“感情のカオス”が立ち上がります。

“夜の太陽”という言葉は、美しくて、切ない。届かない光…
もう二度と触れられない存在へのラブレターのようにも感じられます。
一周半という時間軸の不思議:36時間? それとも一年半?
印象的な歌詞の中で、筆者は特に「一周半廻ったら 愛を喰らいたい」というフレーズに注目しました。

一周半廻るものを”地球”だと仮定すると、“地球が一周半回る”と聞いて、あなたはどれくらいの時間を思い浮かべますか?
地球の自転なら約36時間。ですが、“公転”と捉えると話は変わります。
1周は約365日ですから、1.5周は約1年半(540日)。
アニメの中でも、「過去の記憶」「失われた命」「再び会うまでの時間」が描かれており、この“一年半”という時間軸が何か象徴的な“別れ”や“再会”とリンクしているようにも思えるのです。
決して偶然ではないこの「一周半」という言葉。
ここに込められた時間感覚のズレが、曲全体の“輪廻”や“喪失と再生”のテーマを暗示しているのかもしれません。
「あなた」と「貴方」の使い分け:生と死の境界線

歌詞の中に登場する「あなた」と「貴方」、注目したいのは、“あなた”という言葉は1度しか登場しないということです。
「『あなたが居る』それだけで今日も/生きる傷みを思い知らされる」
ここでの“あなた”は、すでに亡くなった存在——つまり“故人”そのものを指していると考えられます。
一方、以降に登場する“貴方”は、残された記憶の中に生きる存在、あるいは今も心の中で寄り添ってくれている“面影”なのかもしれません。
この使い分けにより、「現世」と「来世」、「生と死」が静かに対比され、楽曲全体が“命”をテーマにした寓話のような深みを持つのです。
終わらない喪失と、続いていく時間

「病になった私の歌を/口ずさんで歩こう」
「クスシキ時間のなかで生きよう」
痛みを抱えたまま生きること。
誰かを喪ったまま、次の一歩を踏み出すこと。
「クスシキ」は、そんな“完治しない傷”を癒す、“薬のような歌”なのかもしれません。
まとめ

今回は、Mrs. GREEN APPLEの楽曲「クスシキ」を徹底考察しました。
「クスシキ」は、一見ポップで軽やかな曲に聴こえながら、そこには死・喪失・孤独・再生といった重層的なテーマが潜んでいます。

“レインボーホール”のようなこの曲は、現実の苦しみをほんの少し軽くしてくれる不思議な音楽。
そして、過去と未来、愛と別れ、生と死を包み込む“クスシキ(奇しき/薬的)時間”を、私たちにそっと与えてくれるのではないでしょうか。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
この他にも多くの楽曲を考察していますので
そちらの方もどうぞご覧くださいね。
※Mrs. GREEN APPLEの他の楽曲の歌詞考察も行っています。
彼らの音楽をゆっくりと堪能してください!
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