
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】
BRAND-NEW MUSIC DAYS

毎回、一つの楽曲を徹底考察し、あなたの心に癒しと力をお届けする本シリーズ。
今回は、Mrs. GREEN APPLEの楽曲「天国」を考察します!
はじめに
「#真相をお話しします」と主題歌「天国」

Mrs. GREEN APPLEの楽曲「天国」は、大森元貴さんと菊池風磨さんのW主演映画『#真相をお話しします』の主題歌として書き下ろされました。

舞台となるのは、匿名性が支配する“暴露配信”の世界。
誰もが画面越しに見守る中、真相がひとつずつ明かされるたび、空気は張り詰め、静かに緊迫していきます。
そして物語は、傍観者だったはずの警備員たち自身に焦点を当てながら、観る者を”知らなくてもよかったかもしれない真実”へと導いていく…
そんな物語を包み込むように、「天国」はそっと寄り添います。
ただしその響きは、”救い”のように甘くはありません。
今、わたしたちが耳を澄ませるべきなのは──煌めきの中に忍び寄る影の気配なのかもしれません。
楽曲イメージ
「天国」という楽曲が放つ、美しさと切迫感

映画の予告で流れる「天国」は、一聴すると澄んだ美しさを感じる楽曲。
けれど耳を澄ませると、そこには“天国”という言葉が似合わないほどの切迫感や葛藤が潜んでいます。
煌めくようなサウンドのなかで、まるで「そこに行きたい」ともがくような、でも何かに引き摺られていくような……。

“天国”に向かっていたはずの手のひらが、
いつの間にか遠ざかってしまう——そんなイメージ。
その不思議な感覚は、この楽曲が持つ”美しさ”と”痛み”がせめぎあう世界観を象徴しているように筆者は感じます。
歌詞の意味を徹底考察!

それでは歌詞考察に入ります。
※考察を進める上で、一部の歌詞を引用しています。全文を知りたい方は、以下のリンクからご確認ください。
「夜」と「朝日」、闇と光が交差する場所
夜は ただ永い 人は 捨てきれない 見苦しいね この期に及んで尚 朝日に心動いている
「夜」は闇や過去の禍根、「朝日」は光や新たな希望。
その狭間で揺れる“信じること”への葛藤が、自分の心を夜と朝日のどちらに誘うのか?
そんな想いが、心にじわじわと染み込んできます。
絶頂から奈落へ―「天国」が描く”輝き”と”喪失”
抱きしめてしまったら もう最期
信じてしまった私の白さを憎むの
あなたを好きでいたあの日々が何よりも
大切で愛しくて痛くて惨め
「抱きしめてしまったらもう最期」といった極端な表現に至る流れの中で、信じることの頂点=「愛しい」から、裏切られる痛み=「惨め」へと、一気に心が突き落とされていく様が描かれます。

救いきれない痛みと、消えかけた温もりが交錯し、信じていた自分すらも憎むようになってしまう…
まるで幸福の絶頂から奈落へ突き落とされるような、残酷な心情の移り変わりを表しているのではないでしょうか。
そう考えた時”天国”とは、過去に置き去りにしてきた「かけがえのないもの」のメタファーなのかもしれません。
「どうすればいい?」の問いと、キスの違和感
どうすればいい? ただ、ともすれば もう 醜悪な汚染の一部 なら、どうすればいい? いっそ忘れちゃえばいい? そうだ 家に帰ってキスしよう どうすればいい?を どうすればいい? 腐ってしまうこの身を飾ってください 私のことだけは忘れないで
中盤の歌詞では「どうすればいい?」という問いが繰り返されます。
その問いの合間に挟まれるのが、印象的なこの一行です。
そうだ 家に帰ってキスしよう
醜悪な汚染の一部となってしまった記憶や関係を「忘れてしまえばいいのでは?」と自問しながらふと口に出てしまう「キスしよう」というフレーズ。
これは混乱した心の中で、安らぎや救いを求める“無意識の逃避”ではないでしょうか。
しかしその後も続く自問自答の果て、たどり着いたのは次の言葉です。
腐ってしまうこの身を飾ってください
私のことだけは忘れないで
ここで言う「腐ってしまうこの身」とは、肉体の死ではなく、真実を語ることでボロボロに壊れていく「心」そのものなのではないでしょうか。

「真相を語る」ということは、伝えられる側だけでなく、伝える側にも大きな代償をもたらします。
伝えれば、心は崩れる。
語らなければ、苦しみは続く。
その選択の末、すべてを失ってでも“真実”に向き合うという覚悟が「腐ってしまうこの身を飾ってください」という願いに繋がっていると筆者は考えます。
そして、「私のことだけは忘れないで」と訴える言葉には、すべてを壊してでも、何かを残したいという切実な思いが滲んでいると考えられます。
「其方に往く」けれど「此方へ戻らない」──覚悟と再生
もうすぐ其方に往くからね
もうすぐ此方に来る頃ね
終盤に変化するこのフレーズも、深い意味を湛えています。
其方に往くからね/此方に来る頃ね
この言葉には、「往く」ことはあっても「戻る」ことは描かれていません。
つまり一方通行=復路のない決断なのです。
戻ってくることはできない
元には戻れない
そんな恐れや喪失感を受け入れた上で「それでも語る」決意がここにはあります。
真相を伝えるという行為は、もはや後戻りできない道。
しかしその先にあるのは、終わりではなく「新しい私に生まれ変わること」「未来へ歩み出すこと」なのではないでしょうか。
まとめ:「天国」とは、壊れた心の再生を願い歌

今回は、Mrs. GREEN APPLEの「天国」を徹底考察しました。

「天国」というタイトルからは、穏やかで救済的なイメージを抱くかもしれません。
しかしこの曲が描く「天国」とは、死後の理想郷ではなく、真実を語り、心が壊れ、それでもなお祈りのように願う“再生の光”なのです。
あの頃のままの君に また出会えたとして
今度はちゃんと手を握るからね
このラストフレーズには、痛みを抱えたまま、それでも「未来へ進む」という微かな希望が宿っています。

Mrs. GREEN APPLEの「天国」は、崩壊の果てにこそ、再び歩き出す力があるということを、静かに、でも確かに伝えてくれているのではないでしょうか。
この記事が「天国」の歌詞に込められた想いを読み解く一助になれば幸いです。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
この他にも多くの楽曲を考察していますので
そちらの方もどうぞご覧くださいね。
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