
今回は「LIVE」にてお送りする「NON SEALD」。
久しぶりの「介護・福祉のお話」chからの発信になります。
先日、東京都知事が会見で話していた「リモートハラスメントの急増についての相談窓口を設置して対応を行っていく」旨の内容がメディアを通じて報じられているのを、あなたも見たことがあるでしょう。
リモートハラスメント(リモハラ)。
正式には「リモートワーク・ハラスメント」というんですが、どういったものなのか?
調べてみると、このような記述があります。
主に在宅勤務中、ウェブカメラを通して見える相手のプライベート(部屋の様子や同居人の生活音、服装など)に関わる事項の指摘、業務遂行に必要な範囲を超えた干渉、そして性的な言動といったハラスメント行為のことを指します。
引用元-産業医トータルサポート
相手の通信インフラへの苦情や私費での改善の強要、過度の監視など、業務時間内外問わず、精神的に過度の圧迫感を与える行為もリモハラに含まれます。
国(政府)が考えているリモハラの定義は、こんな感じです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響による在宅勤務やノマドワークに伴うweb会議などオンライン上でのやりとりで発生するセクハラ、パワハラ、モラハラなどを指します。 具体的には、webカメラに映るその人の容姿や生活感などについて非難したり、威圧的な態度をとったり、性的な言葉を発したりするといった行為を指します。
概ね齟齬はないので、これが一般的な定義になるようですが、政府の定義の中で注目すべきは「新型コロナウイルス感染拡大の影響で」との文言が入っているところです。
コロナ禍になってから急速にZOOMやチャットワークなどが普及したので、こういった事案が増えたという見方によって、このように定義されたのかもしれませんが、「カメラで監視する」というもっと広い定義で考えた場合には「ずっと前からあったもの」だというのが私の見解です。
今回は、私がケアマネージャーの頃に体験した2件の「実話」を通して、この問題について一緒に考えてみてください。
実話1⃣:「防犯」の名を借りて、体よく職員を監視しようとする事業所
まず、1つ目の実話です。

私が居宅介護支援事業所でケアマネージャーをしていた頃ですので、今から10年以上前の話になりますが、近隣で空き巣や強盗事件が度重なって発生したことがあり、事業所に防犯カメラを設置することになったんですが、問題になったのが「設置する場所」。
設置当日、カメラを片手にやって来た取締役が、手先も器用にカメラを設置していく場所は「店先」ではなく「事業所内」。しかも所長と私が仕事をしているデスクへ向けて設置を始めていたんです。
「そこでいいんですか?」と私が申し上げると
「うん。ここがベスト」と嬉しそうに仰る取締役。
モニターで確認すると、所長と私が座っている映像がバッチリ映っていて感度は良好の様子。
ただ、これはあくまでも「感度のみ」の話であって、防犯の意味ではほとんど皆無。
- カメラは「固定式」であり、パノラマ撮影などが行えないものなので、映し出される場所は「1点」に集中されている。
- 店頭から私が座っているデスクまでの距離は3m以上あって、例えば店に入ってから、もしくは店の外から拳銃などで撃たれた場合、何の防犯にもならない…。
この2点において疑問を抱いた私は、取締役に
「私たちを監視するために設置するのか」と確認したところ、
今まで笑顔満面だった取締役の表情が一気に青ざめたのを私は見逃がしませんでした。
結果としてカメラの向きを店に入ってすぐの商談フロアに向けて事なきを得ましたが、そのまま設置されたら「監視付きで仕事をすること」になり、謂れのない不条理を強いられることになってしまうところでした。
実話2⃣:「安心・安全」の名の下に、人の自由を束縛する施設
次に、2つ目の実話。

私が介護福祉施設でケアマネージャーをしていた4年前の出来事。
「入居されている高齢者の方々と面談を行い、日々の暮らしの中での困りごとなどを話していただきながら、現状から未来へ向けての支援内容を模索する」という「モニタリング」をしていた際、ある高齢者の一言が、ある意味今回の「リモハラ」に通じる部分がありました。
箇条書きでまとめると、このようになります。
- あれやっちゃいけない。これやっちゃいけない。「早よ早よ」といわれる
- トイレに行こうとして席を立つと「急に立つな」といわれる
- 何かをしようとすると、必ずピッタリと職員が付いて窮屈
- コールを鳴らしてもなかなか来ないのに、用事のない時に限ってやたら来る
- プライベートな場所であっても、常に誰かに見られている感じがする
その高齢者は、こういったことを総称して
まるで刑務所のようだ
と、泣きながら私に話してくださいました。
各施設においては「入居者様の安全と安心のため」を旗頭に、様々な取り組みをしていることは私も従事者だったので否定しませんが、窮屈を感じてしまう部分においてはある意味「機械的な目でのハラスメント」と言えるのではないでしょうか。
【本質】:信頼関係の薄さから、リモートハラスメントが生み出される
視野を大きく広げた形で「リモハラ」を考えてみましたが
何もコロナ禍だからではなく、以前からこういった部分において「リモハラ」は存在していたと、私は考えています。
こういったリモートハラスメントが生み出される最大の要因は何か?
信頼関係の薄さ ではないでしょうか。
人と人とが関わる中で一番の安心と安全をもたらすものが抜け落ちていて、それを手っ取り早く補おうとすることが、反って疑念を抱かせる形で不信感を生み、考えている方向とは逆向きにベクトルが向いてしまう…
時代の流れと変化によって、要因にすり替えられる「モノ」が変わっただけで、実際のところは何も変わってはいないですし、何より人々が心に抱えている問題や課題にしっかりと向き合わないで「状況判断のみ」で事を済ませていては「信頼」など得られるはずがありません。
今までほったらかしにされてきた、こういった数々の「広義のリモハラ」において、結果として何の解決にも至っていないのであれば「リモートハラスメントの問題についての相談窓口を云々」など「上っ面」でしかないことは明白ですよね。
今後においてもこの問題については、どんどん「NON SEALD」で取り上げていきますので、ぜひご覧ください。
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