【実録】介護の本質chからは、前回より3回シリーズで
介護の本質をしっかりと押さえた介護技術についてお伝えしています。
このシリーズのねらい
世間一般にもよく知られている3大介護(排せつ介助・入浴介助・食事介助)について、介護未経験の人から介護福祉士の資格取得を目標としている人まで幅広く「自己研鑽」を行える意味合いから、本質を押さえた介護技術を、現役介護福祉士の筆者が分かりやすくお伝えします。
※前回の内容は「排せつ介助」でした。
振り返りは、コチラ!
今回は、第2弾!
【介護の基本】「入浴介助」の本質をしっかり押さえた介護技術
実を言うと、3大介護の中で最も神経を遣うのが「入浴介助」になります。
どうしてか?
初めから終わりまで気を抜くことができないからです。
介護される人は裸の状態なので、突発的な事象にはすぐに対応できません。
浴室の床で足を滑らせたり、脱衣場でつまずいたりしたら
もろに身体を打ちつけることになり、大きな事故につながってしまいますよね…
それをも含めて、体調や環境、移動や浴槽に入ってからの状態確認など
すべてにおいて気を配り、しっかりと見て介助しないといけない訳ですから
その疲労は私も経験しましたが、想像をはるかに超えるものがあります。
実際に入浴介助が要因となって、志が高くても介護士を辞めてしまう人もいますから
どれだけのものかは分かってもらえると思います。
では、それを避けるためにはどうしたらいいのか。
結論から言うと「技術よりも想いを先に理解すること」が一番重要です。
介護される人の状況をきちんと見て
発する言葉や動きに対して対等に向き合うことで
しっかりとした対応ができるということなのです(^.^)
お伝えする内容は
- 入浴介助の目的は、単なる清潔保持ではありません!その真意とは?
- 入浴介助には危険がいっぱい…実際に起こった事故5例!
- 入浴介助において特に気をつけるべきポイントは、油断と過信をしないこと
- 入浴介助を上手に行うコツ。それが「技術より想いを先に」です!
このことをしっかりと押さえておくことで、お互いに安心と安全の下での介護ができるようになりますので、どうぞ最後までご覧ください。
それでは始めていきましょう!
入浴介助の目的は、単なる「清潔保持」ではありません!その真意とは?
入浴介助の目的は何ですか? と聞かれたら
あなたは何と答えますか?
おそらくこんな風に答えるのではないでしょうか。
- 身体の清潔保持
- 気分転換
それでいいんですよ。
それが基本になりますからね。
でも、本当にそれだけでいいのでしょうか?
これだけでは、一番基本的なことが抜けています。それは何か?
不安な気持ちを取り除くこと になります。
まずは「お風呂に入る時の状態」を思い浮かべてください。
冒頭にもお伝えした通りお風呂に入る訳ですから
介護される人は裸です(当たり前ですよね…)
身内ならまだしも、他人となると誰にも見られたことのない姿ですから
恥ずかしい気持ちが大きいですよね。
しかも何も身にまとうものがない訳ですから、その不安は計り知れません…
しかしながら言い換えれば
「その人の素の部分が一番出ている」ともいえます。
もちろん、プライバシーやお気持ちなどには必要以上に気を配ることになりますが
言葉かけや洗い方など、1つ1つ思いを確かめ合い、丁寧にすることが大切です。
そうすることで、初めはお互いに緊張していたとしても
次第に打ち解け合えるようになり
自然と会話も弾んで来るようになるでしょう。
誰でもそうですが
不安なままでは、気持ちよくできないですからね(^-^)
入浴介助には危険がいっぱい…実際に起こった事故5例!
冒頭でお伝えした通り、入浴介助は関連するすべてのことで気配りや目配りを必要とするので、介助の上でも本当にしんどいものです…
そんな中、どんなに気をつけていたとしても起こってしまうのが「事故」。
この章では、実際に入浴介助の時にどれだけの事故が起こっているのか。
体験からお伝えします。
(今回5つお話しますが、数字が増えるごとに事故の程度は深刻になっていきます)
皮膚がめくれたり、傷を負ってしまう事故(表皮剥離)
例としては
お風呂の入る前に服を脱いだりする時に、服が引っかかってしまった。
気をつけながら脱がせていくけど、少し肘や膝の辺りがこすれてしまい、
そこで皮膚がめくれてしまった。
身体を洗う介助の時、ふとした弾みで手が当たり、爪で皮膚をひっかいてしまった。
などの事故がよくあります。
浴槽やシャワーチェア、車椅子などに腕や足を打ちつけてしまう(打撲)
例としては
浴槽などに移る時、足を挙げようとして浴槽にすねを打ちつけてしまった。
シャワーチェアや車いすに座っていただく時、足が挙がりきらず
足の指やくるぶしを打ちつけてしまった。
などの事故がよくあります。
湯舟につかる時、お湯の温度が熱すぎてしまう事故(やけど)
例としては
温度設定ができるものだったが、高齢者の「熱い!」の声に異変を感じ すぐさま湯船から出した後、温度を見たら45度になっていた。 要因は、高齢者が誤って温度調節ボタンを押してしまったようだったとのこと。 結果として、その人は軽度のやけどを負うことになった。
という事故があります。
浴室の中を移動中にバランスを崩してしまう事故(転倒・転落)
例としては
脱衣場から浴室へお連れする時、床が濡れて滑りやすかったため 高齢者が足を滑らせてしまい、側で介助していた職員も一緒に転倒してしまった。
身体を洗った後、シャワーチェアに座っていただく時、座り方が浅かったため そのまま床にお尻から転落してしまった。
などの事故があります。
湯船につかっている時、不意に体勢が崩れておぼれてしまう事故(溺水)
例としては
髪の毛と身体を洗い終えて、湯船につかっている高齢者を確認したが
ナースコールで呼び出されてしまい、3分程度その場を離れて戻って来たら
その人が溺れていた。
という事故があります。
これらに加えて冬場になると「ヒートショック」といって
浴室の中と外との温度差で心臓発作などを起こしてしまい
事故になる例が増えてきます。
これらの事故例は、私が直接関わったものばかりではなくて
同僚が当事者だったりしたものも含まれています。
あってはいけないことですけど、避けられないものでもあるので
介助をする時には、充分すぎるくらい気をつけておかないといけません。
事故の怖さについてはよく分かってもらえたでしょう。
では、入浴介助において特に気をつけるべきポイントについて
次の章でお伝えしますね。
入浴介助において特に気をつけるべきポイントは、油断と過信をしないこと
事故の例をいくつかお伝えしました。
それぞれ違ったタイプの事故のように見えますが、本質の部分は2つです。
このことが、入浴介助において特に気をつけるべきポイントになります。
それが、タイトルにもある
油断と過信をしないことです。
これを1つにまとめると
「きっと(絶対)~だろう」という考えを持たないことになります。
- 「ちょっと手が当たっただけだから、大丈夫だろう」
- 「手や腕をしっかり持っているから大丈夫だろう」
- 「じっとしていてくれるだろう」
この思いの果てに、何が起こったか。
前章でお伝えした「事故」をみれば一目瞭然ですよね(^-^)
- 「今、手が当たったけど、もしかしたら引っ掻いたかもしれない」
- 「ひょっとしたら床に足を滑らせてしまうかもしれない」
- 「何かの弾みで身体を動かしてしまうかもしれない」
そう思いながら、一つ一つゆっくりと確実に介助することで
介護する人、される人双方の危険を避けすことができますし事故の確率もグーンと減ります。
そして、その1つ1つが信頼となって、お互いの安心と笑顔につながっていきます(^-^)
では、入浴介助を上手に行うコツについて
最後の章でお伝えします。
どうぞ続きをご覧ください!
入浴介助を上手に行うコツ。それが「技術より想いを先に」です!
入浴介助を上手に行うコツ。
それは「介護する人、される人双方が心も身体も無理をしないもの」でなければいけません。
では、どうしたらいいのか?
その前にまず、入浴介助の方法や手順についてを「確認」しておくことにします。
<最も理想的とされる入浴介助の方法・手順>
- 脱衣場、浴室内の室温や湿度に気を配る
- かけ湯をする際には、介護される人に湯温を確認してもらってから、かけ湯をする
- 髪の毛を洗う際には、声かけをして、かゆみなどのある部分を確認して洗う
- 身体を洗う際には、ボディーソープや石鹸をよく泡立て、心臓より遠い所から洗う
- 泡をお湯で流す際には、②+声かけをしてから、ゆっくりとお湯をかけていく
- 湯船に入る際にも、介護される人に湯温を確認してもらってから、入っていただく
- 湯船から出る際には、のぼせなどによるふらつきに気をつけて身体を支える
- 浴室内での移動は、足下に気をつけて、滑りやすい部分は特に注意する
より細かな介助方法については、コチラに関連記事があります。
筆者が「理想的」としているのには理由があります。
書かれているようなセオリー通りにはいかないものだからです。
セオリー通りに行かないのかどうしてか?
人間は、それぞれに価値観や個性が違うからです。
それぞれの価値観や個性が違う中で、上手に入浴介助を行うコツは何なのか?
それが「技術より想いを先に理解する」になります。
人は誰もが「お風呂に入りましょう!気持ちいいですよ!」と声かけすれば
ウキウキしてお風呂に入る訳ではありませんよね。
特に認知症症状がある人やお風呂が嫌いな人の中には
「何でこんなことされるんだ!」と怒り出して、全力で抵抗される人もいます。
(こういった時に、介護する側がケガを負うこともあります)
高齢者施設の場合は時間をおいて声かけしたり、介助する人を替えたりなどするんですが
相手は「百戦錬磨の高齢者」ですから、そうそう一筋縄ではいかないこともあります…
こういう時、あなたはどう思いますか?
- 「時間に追われているのに…」
- 「面倒くさいなぁ…」 と思ってしまうかもしれません。
そんな時は、先程お伝えしたことを思い返してみてください。
介護する側はTシャツと短パン姿であっても、介護される人は「裸」。
身にまとうものが何もない訳ですから、恥ずかしさも頂点になっています。
他人に裸を見られることって誰でも恥ずかしいことですし
自分の身を守るために抵抗するのは当たり前ですよね。
時間に追われるのはあなたの勝手です。
人と人とが向き合う時には
時間の流れはいつも以上にゆっくりになっています。
気持ちを穏やかに、介護される人の時間の流れに合わせて
ゆっくりと確実に1つ1つ介助していくことが大切なのです。
また、中には、ご自身でできることまであなたにお願いする人や
「あれしろ」「これしろ」と命令口調でいわれる人もいます。
こういう時、あなたはどう思いますか?
- 「こっちは介助してやってるんだぞ!」
- 「なんでこんなに偉そうに言われなきゃいけないんだ?」
と思ってしまうかもしれませんね…
昨年になりますが、とある介護施設で入浴介助の際の利用者様の度重なる無理難題に疲れ果ててしまい、結果として心を病んで施設を退職してしまった介護士さんがいらっしゃいました。
こんな時、どうしたらいいのか?
高齢者施設を例に考えると、施設で暮らす高齢者とは
「お客様」ではなく「生活をする人」という考え方をするのが第一です。
生活をする上で「その人ができないことをする」のではなく
「できるようにサポートする」という考え方です。
そうなると、立ち位置としては横並びの関係性になります。
- 「なんでもかんでも言う通りにすればいい」
- 「ちょっとくらいサービスしてくれてもいいじゃないか」
という人に対しては「1人の人間としてどうなのか」を考えるということです。
あなたは確かに介護をする人ではありますが、介護士としても第一に「人」です。
本来、介護はサービスではありませんし接客業のように接待するのでもない。
介護をする人は
旅館の仲居さんやクラブのホスト(ホステス)でもなければ
侍従やセバスチャンでもありません。
変にご機嫌を伺ったり、ご機嫌を取ったりする必要はありませんので、
ケガを負ってまで、心を傷つけられてまでヘラヘラしている必要もないのです。
では、こんな時にどう対応すればいいのか?
「一番近くにいる他人」として感情表現をすればいいんです。
もちろんそこには「思いやりの気持ち」は持っておかなければいけません。
鬼の形相で罵声を浴びせるとか、手を出してしまうなどはナンセンスです。
心も身体もむき出しの状態になるからこそ
「想いを先に理解する」ことが大切なのは分かりますよね(^-^)
お互いが、心も身体も気持ちよくなるためには
どちらかが感情を押し殺してしまうことは、あってはいけないと筆者は考えます。
まとめ
【介護の基本】「入浴介助」の本質をしっかり押さえた介護技術 と題してお伝えした今回。
特に気をつけなければいけないことは「油断と過信をしないこと」
上手に介助するコツは「技術よりも想いを先に理解すること」でしたね。
なかなかすぐにはできないとしても、このことを心がけておくだけでも十分です。
介護する立ち位置が近ければ近いほど、心も身体も疲れてしまいますが
だからこそ「介護って奥深いもの」ですし「簡単にはできないもの」でもあるのです。
1つ1つしっかりとマスターして、経験を増やしていきましょう!
次回は「食事介助」について。
次回もどうぞご覧ください!
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