【実録】介護の本質chよりお送りする今回は
介護保険制度なんかいらない
【不毛】「自立とは何か」を勘違いして突き進む支援
と題してお伝えします。
本サイトにてお伝えしている
「介護保険制度なんかいらない」シリーズ
本質、背景、総括、展望を網羅した「第1弾」
自立を望まない人たちにこそ介護保険制度は必要だとした「第2弾」
読者の方からいただいた疑問に答える形でお伝えした「第3弾」
「第4弾」となる今回は、現行の介護保険制度において筆者が最大の問題点と考える「高齢者の自立を勘違いして突き進む支援」についてスポットを当て、その勘違いの基になっている「自立」の本意についてや、現行の介護保険制度下において本当の意味での「高齢者の自立を支援する方法」についてお伝えします。
高齢者の自立を支援する方法論については
タイトルにある「メンタル8割・身体2割の自立支援」が筆者の考えなのですが、なぜそのような考えに到っているのか?
その真意を含め、お伝えしますのでどうぞ最後までご覧ください。
高齢者の自立支援:「自立」とはどういうことなのか?
現行の介護保険制度の根幹となるものは「高齢者の自立支援」であることは、おそらく業界の方々のみならず、業界外の方々も周知されているのではないでしょうか。
「高齢者の自立支援」
噛み砕いていえば「高齢者の自立を支援する」
もっと崩せば「年寄りが自分でできるように支える」
さらには、こうとも言えるでしょうね。
「おじいちゃん・おばあちゃんが、自分で何でもできるようになるためにお手伝いする」
(※ここまで噛み砕いてしまえば、おそらく小学生の子どもたちにも解るかな?)
では、ここで皆さんに伺います。
自立って、何ですか?
自立するって、何を以て自立するって思いますか?
皆さんの中で「自立する」とは「規則正しい生活ができること」であったり「親や上司から言われたことに対して、遅滞なく、きちんと行って行けること」などではないか。とお考えになられるかもしれませんね。
でも、それって自立ですか?
はっきりいうと、それは自立ではありませんし、自立しているともいいません。
自立とは、自己実現力のことであり
「自分でやりたいことを自分で見つけること」です。
それを以てして
「自分の進むべき道を自分の足で歩んで行くこと」が「自立」です。
- 自分がやりたいと思うことについて「足かせ」になっていることは何か。
- それを実現するために、今の自分には何が必要なのか。
- 支えてもらうことがどれくらいあるのか。
あくまでも「自分の生き方は、自分で決める」しか術はない訳であり、
誰も「代わりに人生を生きてくれる」訳ではありません。
(自分の人生ですら、これから先の不安に苛まれることがあるのにです。)
「言われたことをやれるようになること」は「自動化」です。
何度もいいますが「自立」ではありません。
教育評論家の「親野智可等(おやの・ちから)」さんという方がいらっしゃるのですが、こと「自立」に関する私の考え方は、その方のそれと似ています。
(親野さんは、子どもの教育に関するサイト「親力(おやりょく)」を管理しておられます。よろしければどうぞ、ご閲覧ください。)
親野智可等さん「親力」
このことを踏まえ、改めて現在の介護支援を考えた時
正常な判断ができる人であれば猛烈な違和感を覚えるはず。
その「違和感」こそが、現行の介護保険制度の基本理念の勘違いになります。
現在行われている介護支援サービスを「本来の基本理念」に照らし合した時、その答えが分かります。
その答えは、次の章で明らかになりますので、どうぞこのままご覧ください。
「勘違い」に気づくことなく突き進む「自動化支援」など不毛!
察しの良い人であれば、この段階でお気づきのことでしょう。
そうです。
現行の介護支援においては「自動化」を促進し、本来の自立の邪魔をしていることになるのです。
他人に指示されたことができるようになり
「出来た!出来た!自立してきた」と喜んでいる高齢者や家族、介護職員やケアマネジャー…
制度の理念は「高齢者の自動化支援」ではありません。
親野さんの言葉を借りれば「高齢者の自己実現力の支援」が本来の理念です。
この勘違いが20年以上に亘って疑うことなく、まだ嬉しそうにやっていることが、筆者が「介護保険制度なんかいらない」とする本意の1つであり、この支援を続けること自体「不毛」であると筆者は考えているのです。
「自立支援」を語るのであれば、自立の意味をきちんと踏まえた上で、介護保険制度の基本的な考え方に則った形での支援方法を、する側もされる側もしっかりと理解しておく必要があります。
では、筆者のいう「高齢者の自立(自己実現力)を支援する」方法とは、どんなものなのか?
それが「メンタル8割・身体2割の自立支援」へとつながっていくのですが
具体的な方法などについては次の章でお伝えしますね。
高齢者の自立(自己実現力)を支援する方法「メンタル8割、身体2割の自立支援」とは?具体例を挙げて解説します!
高齢者の自立(自己実現力)を支援する方法とはどういうものなのか?
筆者が考える基本的なコンセプトは、コチラになります。
高齢者の自己実現力を蘇らせていくことにより
自分の人生をあるがままに謳歌していただくために
現状で高齢者ができないことをお手伝いしていく
このコンセプトに則って、具体的な例を挙げて分かりやすく解説しますね。
ケアマネジャーの元に、次のような高齢者の情報が届きました。
脳梗塞を発症して入院となり治療を受けておられたが、片側のマヒが少し残ったものの、身体の調子も良くなり、検査結果でも再発リスクは少ないと判断され、退院許可が出た。
この人がお家に戻って暮らすのに必要なことを
ケアマネジャーは高齢者との話の中で探っていくのですが
筆者であれば、ここで4つのことを伺います。その4つとは何か?
- 「退院し、家に帰ってから何をしたいか」
- 「家に帰って、自分がどういう暮らしを送りたいか」
- 「それを実現するために、自分はどうするのか。何をしようと考えているのか」
- 「それが実現するまでの間、お手伝いしてもらいたいことはないか」
この4つです。
先程のコンセプトに照らし合せて、筆者が導き出した支援方法。
それがメンタル8割・身体2割の自立支援です。
まず、メンタル8割の方から解説して行きますね。
メンタル8割の支援。最も重要なことは「思いやりの言葉かけ」
高齢者の方々は、人生のターニングポイントを過ぎ、自分なりの終幕へ向けての準備をされています。
「病気やケガをすること」は「想定外」のことなので
過去に思っていた「理想」とはかけ離れてしまうこともあるでしょう。
それに、親しかった方との疎遠や死別などによる孤独感
身体の機能の衰えなどによる喪失感が加わり
メンタル面においてはボロボロと言っても過言ではない状況…
そんなメンタル面を、しっかりと支えることに重点をおくことが大切になります。
「得ることが少ない」、「失うことが多い」といった考え方をしていると、ドツボにはまります。
『何もかも手伝ってもらわないと、私、生きて行けない』と思ってしまう人もいるでしょう。
でも、そう思ってしまうと「現行の介護保険制度の範疇から外れてしまう」ことになります。
なぜか?
現行の介護保険制度の基本理念は「高齢者の自立(自己実現力)支援」だからです。
では、こういった考え方にならないために必要なこと。
それがメンタル8割の支援においての最重要部分「思いやりの言葉かけ」です。
高齢者であれ子どもであれ、人が何かに打ちひしがれた時、支えとなるのが「思いやり」
それは、ただ単なる「言葉かけ」ではなく「心からの思いやりの言葉」ですよね。
人生の終焉までの間
生きて行くのは「その人」であり、生き方を決めるのも「その人」
生きて行くのを止めるのも「その人」
すべて「その人の思い一つ」です。
誰しもが「生きよう」とする思いを持たなければ、自分の人生を謳歌できない。
ある程度のモチベーションを快復させることによって、人はまた歩こうとするのです。
会話の中で、打ちひしがれた思いを分かち合い、
「生きていることが愉しい」と感じる部分を温めて、モチベーションを高めて行く。
「失ったものは少なくはないけれど、命という大きなものを得た」という観点から
「病気も1つの個性」と捉え『こんな私でも、できることがあるんだ!』と思っていただける「言葉かけ」こそが、高齢者の自立を実現させる大きな支援要素だと、私は考えます。
このことに8割の支援を行う。それだけメンタルが重要だということです。
次に、身体2割の支援について解説しますね。
身体2割の支援。最も重要なことは「高齢者個々の経験則を活かすこと」
身体2割の支援方法ですが、この支援においての最重要部分は
「高齢者個々の経験則を活かす」ことになります。
高齢者には、これまで歩んで来られた人生の中での「経験則」がありますよね。
これまで培ってきたものや体験したこと、思いなどが、その人なりに備わっていますから、ある程度の支えがあれば、ご自分でできてしまうことも多いのです。
よく巷でもいわれる「残存能力を活かして」というのがそれにあたるのですが、そのことがよく分かる記事がありますので、ぜひあわせてご覧ください。
もちろん、高齢者の身体機能(お年寄りの身体の状態)は年々衰えてくるので、一概に経験則のみに頼ることは難しいのですが、身体に染みついた多くの経験から得た「生きる術」というものは、その人にとっての「唯一無二の方法」だと認め、尊重しながら支援を進めることで、高齢者の自信(自己実現力)を上向きにすることにつながると筆者は考えます。
まとめ
今回は
介護保険制度なんかいらない
【不毛】「自立とは何か」を勘違いして突き進む支援 と題して
現在の介護支援活動の実情を踏まえながら
その問題点や具体的な支援方法などについてお伝えしました。
現状は極めて危ない状況であり
このまま「自動化支援」が進んだ場合、介護保険制度だけに留まらず
日本の未来も大変なことになりかねないといった懸念が筆者にはあります。
その懸念は「自動化支援」から「自立を望まない高齢者の増加」へとつながり
その延長線上にあると筆者が考える「最終到達地点」にあるというものです。
具体的に書いた記事をご紹介して、まとめとしたいと考えます。
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