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【ぶつかり合う心】介護ブログドラマ「Pure Smile~祐二と智子のアイノカタチ」第10話

ノンフィクションドラマシアター
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第10話:ぶつかり合う心

平成11年3月。

結納を済ませ、家具や電化製品の購入など、祐二と智子はお互いに忙しい日々を過ごしていた。

祐二にはさらに「家を探す」と言う役割もあったので、休みの日には何軒もの不動産屋を回り、物件を選んでいた。

祐二と智子の「家」においての思いは一致していた。

  • 自宅周辺にスーパーや銀行、郵便局、学校関連施設があること
  • 近隣に「総合病院」があり、「内科・小児科」専門の医院があること

季節は「引っ越しシーズン」とも重なり、物件そのものは多くあったが、2人の思いと一致する物件となると、なかなか見つからない。

まして、しばらくの間は「祐二1人の収入」で賄う他はないため「新築物件」はとんでもない…

いくつかの物件を見て、祐二が選んだ場所。

周辺半径1kmの範囲に小学校から高等学校まであり、総合病院や内科・外科・小児科・歯科の専門医院、ホームセンターやドラッグストアまでが収まると言う、まさにベストな場所であった。

大家さん
大家さん

ほ~。

介護のお仕事をなさってるんですか。

それは素晴らしい!

祐二
祐二

できるだけ家賃のかからない場所が

いいと思って、ここを選んだんですが…

大家さん
大家さん

分かりました。

善処しましょう!

 次の日、祐二は智子に報告。

 2人で現地を視察し「ここがいい‼」。

 家主さんも2人の状況を見て、一番低めの家賃設定で受け入れてくださった。

 平成11年3月16日。  祐二と智子の「2人の生活」がスタートした。

 その日の夕方、2人で初めての買い物。

智子
智子

ねぇねぇ。

何が食べたい?

レパートリーはまだ少ないけど

何でもいいよ。

祐二
祐二

そうだなぁ…

俺、結婚したら奥さんに

肉じゃが作ってもらいたいって思ってたんだぁ。

智子
智子

じゃあ、肉じゃがに決定~‼

 

その夜智子が作った「肉じゃが」は、祐二が今まで母に作ってもらっていたそれとは違い、生涯忘れることのないほどの「美味」であった。

智子
智子

どう? おいしい?

祐二
祐二

おいしい‼

毎日でもいいくらい。

智子
智子

いくらなんでも…

でも、ありがとう!

祐二
祐二

ところでさぁ。

これからのことなんだけど…

智子の体調のことも考えて、俺もできるだけ

家事を手伝った方がいいと思ってるんだ。

できる範囲にはなるけど…

智子
智子

ありがとう。

でも…できる範囲って、大丈夫なの?

祐二
祐二

大丈夫だよ。

こう見えて、俺。

一応家事全般は一通りできるから。

智子
智子

じゃあ

その時にはお願いします。

でも…無理しないでね。

 新居での初めての夜は、こうして更けて行った。

 智子の勤務終了が「4月末」と決まった。

 結婚の準備や出産・産後のことを配慮しての「二人の決断」だった。

祐二も智子も懸命に仕事と家事とを頑張ってはいたが、如何せん智子の体調が落ち着かず、あまり芳しくない…

家に帰っても智子の状況は変わらず、お腹を擦りながら身体を横たえ、いつしか眠っている…

結局「祐二が家事全般を賄い、智子は療養する」と言った毎日が繰り返されていた。

祐二
祐二

‥‥‥‥‥‥

智子の苦しみを「どうにもしてやれない気持ち」や、毎日繰り返される「恒常化した状況」に『何で自分ばっかり・・・』と言う思いが重なって、祐二の苛立ちは爆発寸前であった。

 平成11年4月29日夜、ついに祐二の苛立ちは「頂点」に達した。

祐二
祐二

ねぇ、ちょっと。

話があるんだけど…

智子
智子

どうしたの?

祐二
祐二

いつもいつも

「しんどいから」って言って

横になってばかりじゃないか。

智子
智子

ごめんなさい…

でも、本当にしんどいの…

祐二
祐二

妊娠中は【つわり】なんかがあって

体調身不安定になるのは分かってるけど…

いくらなんでもひどすぎるんじゃないか?

智子
智子

そんなこと言ったって

やろうと思っても

出来ないんだもの…

祐二
祐二

そんなにしんどいんだったら

病院に行けばいいじゃないか!

何もしないで寝てばかりいて。

こっちは一杯しなけりゃいけないことだらけで

疲れてるんだよ!

智子
智子

確かに何も出来ていないのは

申し訳ないと思っているけど、

私だって苦しんでるのよ。

祐二
祐二

自分のことだけ

考えてりゃいいじゃないか!

もう疲れたよ!

智子
智子

どうして分かってくれないの?

祐二
祐二

分かってほしいのは

こっちの方だよ‼

 口論は1時間を越え…

 バシン!  祐二は、智子の頬を打った。

 その瞬間、祐二はハッと我に返った。

祐二
祐二

!‥‥‥ごめん…

智子
智子

…分かった…

私、ここを出ていく!

祐二
祐二

待てよ‼

智子
智子

いや‼

出ていく‼

祐二
祐二

いいから待てって‼

玄関先で約10分間… 出て行こうとする智子の腕を掴み、必死に止めようとする祐二。

祐二
祐二

そんなしんどい身体で

ここを出て行ってどうするんだよ。

お腹の赤ちゃんのことを考えて見ろよ‼

 

智子の動きが止まった。  しばらくの沈黙・・・

智子は落ち着きを取り戻した様子…

2人はリビングへと戻り、これまでのことを話し合った。

祐二
祐二

…さっきの平手打ちは

本当にごめんなさい…

痛かったでしょう?

智子
智子

ううん。いいの。

祐二に我慢ばかりさせていたのは

私が悪かったんだから…

祐二
祐二

お腹の赤ちゃんは

大丈夫なのかなぁ。

智子
智子

どうして?

祐二
祐二

あんまりお母さんに

泣いたり怒ったりさせると

お腹の赤ちゃんによくないって

聞いたことがあるから…

智子
智子

大丈夫だと思うよ。

でも、本当にごめんね。

祐二
祐二

何が?

智子
智子

落ち着いて周りを見たら…

いつも帰ってからお掃除してくれてたんだね。

ありがとう…

祐二
祐二

いやぁ…

智子
智子

しばらくはまだ迷惑をかけると思うけど

私も頑張るから…

祐二
祐二

くれぐれも無理しないで。

それと…

智子
智子

何?

 祐二は智子のお腹に手を当てながら

祐二
祐二

赤ちゃん? お父さんだよ。

ごめんね… 心配かけて。

でも、もうお父さんもお母さんも大丈夫だから。

元気に大きくなってね。

会える日を楽しみにしてるからね!

智子
智子

祐二…

祐二
祐二

智子。

愛してるよ。

智子
智子

祐二…

私も、愛してる。

 「分かってほしいから、人はぶつかり合う」

 そのことを知った祐二と智子は、より一層「絆」を強くした。

 結婚式まで、あと10日…。

 (次回へつづく)

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