「私、介護職をやめたいんです」
介護職での悩みを打ち明け、結果としてこれを手渡す人が本当に多いんです…
一所懸命知識や知恵、技術を学んで、高齢者の介護や支援に対する志を持って、施設や事業所において介護の仕事をしている人々。
実際に介護職への転職を希望する人は多く、現世においては特に「エッセンシャルワーカーの1人」として重要視されている訳ですが、皆さんご承知の通り「施設や事業所での定着率が悪過ぎる」んですよね…
どうしてこういった状況になるのか?
そこには長きに亘って施設や事業所内に蔓延する「毒」の存在があるからなんです。
細かなものは数え切れませんが、大きく分けると2つ存在する「毒」
どんな「毒」なの?
そう思われている人たちへ【実録】介護の本質chでは
今回から「前・中・後編」に亘り
「施設や事業所に蔓延する2つの毒」
というお話をしていきます。
内容的には
前編・中編では「2つの毒」についての問題提起を一緒に考えていただき
後編では「2つの毒を解消する方法」について私の考えをお伝えする。
といったものです。
これを見た人の中には単純に
「コロナウイルス」、「インフルエンザ」って思われた方もおられるんじゃないですか?
はっきり言いますが、それではありません。
むしろ、それよりもずっと質(たち)の悪い物です。
今からお伝えする内容は、施設を利用されている人や介護事業所から支援を受けている人への直接の影響はありませんのでご安心を。
ただ、施設に大切なお父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんを預けておられるご家族にとっては、間接的に影響がある話になるかもしれませんね。
あくまでも「職場内」においてのことなので、施設や事業所でお仕事をされている人からすれば「あるある」の部分にあたるかもしれません。
これからお伝えする「2つの毒」によって、
施設で今、何が起きているのか。
何が行われているのかを、しっかりと押さえておいてください。
施設や事業所に蔓延する毒:正しいことを言っていても潰される仕組み
まず、今回お伝えする「毒」と呼ばれるものとは
正しいことを言っていても、キャリアや若さを理由にして潰される仕組み
難しい言い方では「年齢・キャリアだけを重視した指示・命令下による業務」です。
「このことは、何も今に始まったことではない」
という人もおられますが、実際のところ以前よりもさらにひどくなっています。
具体的な例として、とある施設の介護職員さんの業務について挙げてみます。
施設の場合、入居者の24時間365日を支援・介護する仕事は、こんな時間の流れになっています。
「6:00~7:00 起床介助・おむつ交換」 「7:00~7:30 検温、血圧測定など」 「7:30~8:30 朝食(介助)・配膳・下膳」 「9:00~9:30 排せつ介助・おむつ交換」 「10:00~11:30 水分補給、朝の集まり(体操、簡単なレクリエーションなど)」 ※入浴のある日は 9:30~11:30 入浴介助(午前)が加わります。 「12:00~13:00 昼食(食事介助)・配膳・下膳」 「13:00~13:30 排せつ介助・おむつ交換」 「13:30~14:30 レクリエーション・体操」 「15:00~15:30 おやつ(介助)・配膳・下膳」 ※入浴のある日は 13:00~16:30 入浴介助(午後)が加わります。 「17:30~18:30 夕食(食事介助)・配膳・下膳」 「19:00~20:00 就寝介助・おむつ交換」 「20:00~21:00 フロア清掃・後片付け・記録」 「21:00 消灯(以降翌朝6:00まではコール対応、排せつ介助、巡視)」
時系列でかなり細部に亘っての業務内容が盛り込まれていますよね。
実際に私が勤めていた施設でも、時間にズレはあっても時系列はほぼ同じ内容だったので、おそらくどの施設でもこういった内容ではないかと考えます。
これらのことを介護職員さんは、その日の出勤者で担当を決めて、この流れに合わせて入居者の支援を行っていくんですが、私からすれば「この段階で既に入居者の支援や介護について無理がある」と考えられます。
どうしてか?
入居者をひとまとめに考えているから です。
入居者は人間です。
それぞれに意思を持ち、その人しか持ち合わせていない個性があります。
朝起きる時間や夜寝る時間、食事の時間や回数、排せつをしたりお風呂に入る時間も違いますよね。
それぞれに生活してきた、今でいう所の「ルーティーン」がある訳です。
そんな個々の入居者を「施設の決まりですから」といって、自分たちの決めた時系列にはめ込んで支援をすることなんて、初めから無理なことですよね。
(決められた時間に排せつできる人って、います?)
であれば、個々の入居者の生活サイクルに合わせた業務内容であって然るべきだと私は考えます。
このことに疑問を抱き、仕事の流れを入居者に合わせていくことを提案しようとして、潰されてしまった介護職員さんがいます。
具体的に、より理解を深めてもらえるように、一つの「実例」としてご紹介しますね。
※ここから登場する個人名などは、すべて仮名とさせていただきます。
施設や事業所に蔓延する毒:根拠となる実例(介護職員・上野さんの場合)
介護職員1年生の上野さんは、志高くモチベーションも高い職員さん。
日々の介護をする中で、先程私がお伝えした内容にいち早く気づきました。
ベテラン介護職員の西村さんに、業務内容の見直しを提言したところ
「長年これでやって来ているのに、1年生のあなたが言うことではない」
「もっと施設のことを勉強してから言いなさい」 などと返されてしまいます。
それでも諦めず、一所懸命施設のことを学べば学ぶほど、その思いは強くなる一方。
再度、西村さんに提言したところ
「まだそんなこと言ってるの?これでいいって言ってるじゃない。何も分かっていないのに口だけは立派ね。余計なこと考えないで仕事して。施設長も同じ考えよ」
と、またしても突っぱねられ…
同僚に話したところ
西村さんと施設長とは「ツーカー」の仲で、気に入らないことがあると、何かにつけ施設長に告げ口をするんだと聞かされます。
自分の意のままに動く職員を可愛がり、意に反することを言って来る職員には
「あなたにそんなことを言う権利はない」といって取り合わず。
『私の言うことを聴かない職員がいて、業務が回らないので困っている』と施設長へ。
施設長も「長年貢献してくれている西村さんの言うことに間違いはない」と、自ら確認もしないでそのまま信用。
時には当人を呼びつけ、恫喝まがいのことまでするということを聞かされてしまいます。
- 「西村さんの言う通りにしといた方がいい。」
- 「目をつけられたら、最悪だから。」
- 「ここで仕事したいなら、黙っとけ。」
との応えが返ってくるばかりで、上野さんの意見に賛同して一緒に動いてくれる人はいない。
次第に上野さんのモチベーションは下がり、結局は辞めてしまいました。
施設や事業所に蔓延する毒:実例から考えられる問題点
私がこの内容について「毒」としたものは
ある程度の経験や実績のない人は、施設において発言権はない
と言う考え方についてです。
問題点は、まだあります。
施設長たるものが、ベテランであることだけを理由に確認もせずに他言を排除する
という言動についてもです。
この件については、
在宅サービス事業所内においても同様の事案として存在しています。
人間関係と一言でいってしまえばそれまでではありますが、それは
実際に行われている不条理なことに
便利な言葉を探してきて理由付けして
事なかれ主義に未来へ背を向けているだけに過ぎない のではないでしょうか?
介護職員さんがしんどいのは、この部分にある。というのが私の見解です。
※関連する内容として、こんな記事もあります。よろしければご覧ください。
「介護職をやめたい」という職員さんが抱える「本当の想い」を、私はこれまでにいくつも聴かせてもらいましたが、多くの人がいうのが「理想と現実とのギャップ」に関すること。
「チームワーク」の名の下に、職員の疑問や意見をまともに聴くことなく、入居者の想いを聴くでもなく、あくまでも「根拠のない業務時間の割り当て」や「自分が正しいとするベテラン職員や管理者の思い上がり」によって、すべてを管理してしまう。
私からすれば、管理するのは「人の時間」ではなく「人の健康」ではないかと考えます。
まとめ
今回は1つ目の「毒」として
正しいことを言っていても潰される仕組み
について実例を挙げてお伝えしました。
どのような改善策があるか。皆さんも考えてみてください。
次回の「中編」では、もう一つの「毒」についてお話させていただきます。
次回もどうぞご覧ください。
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