介護施設での事故報告書・ヒヤリハットの上手な活用法【介護職必見】

【実録】介護の本質

はじめに

介護施設は、入居している高齢者の方々にとって「生活の場」であることは分かりますよね。

その生活の場において、度重なり起こるものが「事故」

私が住んでいる奈良県内の、とある特別養護老人ホームの平成30年度データによると、1年間で、施設内で発生した事故の総件数(事故・ヒヤリハットの総数)は613件。

これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは様々でしょう。

事故の内容については、主にこういったものが掲げられます。

  • 転倒(移動中に段差などにつまずいて転んでしまう)
  • 転落(ベッドからの寝返りや介助中に足を滑らせてしまう。車いすからずり落ちてしまう)
  • 誤嚥(食事の際に誤って喉を詰まらせてしまう)
  • 誤飲(ボタンや電池など、食べ物以外のものを誤って吞み込んでしまう)

高齢者に限らず、あなたを含めた私たちにおいても日々の暮らしの中で事故に見舞われる可能性があることを考えると、こういったことは「避けられないもの」だと考えられます…

それに対して、事故を未然に防いだものとして「注意喚起」の意味合いで「ヒヤリハット」というものがあります。

  • 転びそうになっている
  • 大きな食べ物を1口で頬張ろうとしている

などのような「事故になりそうな状況」を察知した際の「ヒヤリとした」「ハッとした」思いを職員間で共有する内容になるんですが、私も何回か経験していますからまさに「ヒヤリ・ハッと」するものです…

事故やヒヤリハットの事案については、たとえ軽微なケガであったとしても、その内容や対応策などについて細かく記載しておかなければならないんですが、いくつか問題があり、事故の報告やヒヤリハットの報告を十分に活かしきれない実情があります。

そこで今回は「介護施設における事故報告・ヒヤリハットの上手な活用法」についてお伝えします。

これは「事故0を目指せ!」ではなく、事故を少しでも減らすことに重点を置いた内容であり、高齢者のみならず介護職員においても安心を増やす意味合いのものですので、勘違いしないでくださいね。

事故報告・ヒヤリハットの基本的な書き方及び注意事項

まずは事故報告やヒヤリハットの書類について、一緒に確認していきましょう。

介護施設で発生した事故やヒヤリハットについての報告は、各々の施設独自の報告書があると考えられます。

記載する内容においては主として「5W1H」に則したものが求められるんですが、その基本的な書き方などにおいて分かりやすいものがありますのでご紹介します。

「いつ」「誰が」「どこで」「何を」「なぜ」「どうした」のうち、わかる部分だけでもいいので簡潔に記載します。内容を絞って短い文章にし、1文ごとに改行を。

内容がわかりやすくなります。

ヒヤリハットの例)


昼食後(いつ)、 ○○様(誰が)を車いすにのせ、××を(どこで)散歩中、

車輪が段差に引っかかり(なぜ)、バランスを崩して転倒しそうになった(どうした)。
急いで身体を支えたため、転倒せずに済んだ。

何かが生じた時、普通は「何があったんだろう」と推測します。

しかし、報告書への記録の場合、主観は交えず、見たままの内容、聞いたままの言葉をそのまま書き留めるようにします。

推測を入れる場合は、文章の最後に入れるようにします。

事故の例)


夕食前、○○様が廊下にうつぶせで倒れていたのを見つけた(見たままを書く)。
かたわらに車いすがあった(見たままを書く)。
立ち上がろうとして車いすから落ちたものと思われる(推測を入れる場合は最後に)。

報告書は職員だけでなく、利用者の家族など外部の人が見た場合にも理解できるように書かなければなりません。

専門用語や略語、施設内でしか通用しない言葉は使わないようにします。

例)
訪室したら、○○様が便器の前でお尻を床につけた状態で座っていた。
ナースコール(×Ns’c、NCなど)を押さずに、リハビリパンツ(×リハパン)を上げようとしたと思われる。

ここまでの内容になります。

施設介護において何回か書いた経験があるでしょうし、記載した内容について「こんな書き方では何が言いたいのか分からない」、「もっと具体的に書かないと」などと専門職の方々や施設長などから指摘を受けたりしたこともあるでしょう。

しかし「具体的に」とはいっても、事故というのは何の前触れもなく突然起こり得るものなので、当時の状況を振り返って見た場合、気が動転していてはっきりと覚えていないことが多いですよね…

今後、同じような事故を起こさないために、事故を未然に防ぐことができるようにするためのものですから、たとえほんの少しでも覚えていることを記載することが必要になりますが、ここで問題になるのが「今後の対応策」なるものです。

先程の「事故の例」から考えた場合、対応策としては

  • こまめにお部屋を訪れ、声かけにて状態を確認する
  • 車いすを介助バーと向かい合わせに置き、座り替えを楽にできるようにする
  • 「困ったときはナースコールを鳴らしてください」の貼紙をトイレなどに設置する

といったことが掲げられますよね

(もっとあるかもしれません。思いついた方、コメント欄で教えてください)

では、こんな事故の場合はどうでしょう?

ツイートをご覧ください。対応策や顛末まで書かれています。

ポイントは以下の通り

  • 施設に入所してから4週間の間に2度の転倒をされている高齢者
  • 「危ないから立たないでって言ってるでしょう!」との声が飛び交う現場
  • 対応策として「向精神薬を増やしてほしい」とリクエストがあった

この中で、私が問題があるとしたポイントは

「対応策として向精神薬を増やしてほしい」とリクエストがあった

になります。

どうしてか。

人の正常な言動を阻害することは、いつの世においてもご法度だからであり

向精神薬がどのようなものかをきちんと理解していない発言だからです。

そして何より

「どちらの目線で物事を考えているのか」が最大の問題点だと私は考えます。

そういった意味では主治医の方が仰ることの方が、どちらかと言えば高齢者の目線に近い形になっていますが、どちらも「一方向からの視点」であることは間違いありません。

ヒヤリハットの例で考えた場合、対応策としては

・車いすの前方に障害物などがないかを確認する

・段差の少ない散歩道を選ぶ

などが掲げられると考えます(まだあるかもしれません。思いついたらコメント欄で教えてください)

「事故」とは異なり「事故を未然に防ぐことができた事案」になるので、本来であれば「ヒヤリハットが活かせれば、事故を減らすことができる」と考えられ、職員間での情報共有もスムーズにいくものではあるんです。

ですが、なかなか上手くいっていない要因があるんです…

ツイートをご覧ください。

責める側からすれば「きっちり見守りしておけば、ヒヤリハットにもならなかった」とでも言いたいのでしょうが、高齢者の方からは「ケガしないで済んだ。ありがたい」という気持ちでおられるのではないでしょうか。

こちらの件も、責める側の「一方向からの視点」での言動であるといえるでしょう。

介護施設における事故報告・ヒヤリハットの上手な活用法

先程の2つの例やそれに関するツイートなどをご覧いただきましたが、「どうして介護施設において事故報告やヒヤリハットが活かしきれていないのか」ということについて、分かりましたか?

察しの良い方であれば、もうお分かりのことでしょうし、私、ここまでで何回かお伝えしていますよ。

そうです。

一方向からの視点です。

事故のみならず何事においてもいえますが「事が起こる際には、何某かの要因がある」

事が起こった際には、最低でも2つの視点(高齢者側の視点と施設職員側の視点)が存在します。

事故発生から経緯までについては発見者(職員)の視点から「見たまま・聞いたまま」を書けばいい。

ですが「今後の対応策」については「どちらか一方向からの視点」だけでは意味がない。

ましてや「誰かの意見や動きを阻害すること」など以ての外。

「事故が起こった」ことだけに焦点を当て、その当事者を責めることもナンセンスです。

「一方向からではなく双方向」の視点で対応を考え、それを双方が無理のない範囲で行っていけるものが本来の意味での「今後の対応策」になり、そのことが高齢者と介護職員との安心と安全が担保されるものであるとすればなおのこと良いですよね。

「事故報告・ヒヤリハットの上手な活用」

これを実現させるためには、これまでにも、そしてこれからも発生するであろう事故やヒヤリハットの事案についての報告の際に3つのことが必要になります。

  1. 報告内容について決して否定や非難をしない
  2. 客観的な事実に基づいて、事故の本質について突き詰めて考える
  3. 当事者である高齢者と職員の気持ちを理解し「今後においてどうしたいのか」を確認する

これができるようになれば、あなたが従事する施設は「高齢者と介護職員が共に生活をする場としてトップクラスの居心地の良さ」になるかもしれません。

まとめ

今回は「介護施設における事故報告書・ヒヤリハットの上手な活用法」についてお伝えしました。

高齢者も介護職員もみな「縁あって一緒に人生を歩んでいる人々」です。

施設に集うすべての人々が安心して過ごせるような日々を一緒に創り上げていきたいですよね!

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