今回の【実録】介護の本質chからは
【介護福祉士試験】実技試験の傾向と対策
過去問や例題、体験談を交え現役介護福祉士が徹底解説!
と題してお送りします。
※2023年1月29日(日)に行われた「筆記試験」の解答などはコチラから。
介護福祉士実務者研修を受講した人や介護職員基礎研修、喀痰吸引等研修を修了した人については実技試験は免除となっているため、筆記試験の合否のみにはなるのですが介護福祉士初任者研修のみ、もしくは実際の介護現場での実務経験のみなどで筆記試験を受験した人については「実技試験」を受けることになります。
今、率直に伺います。
準備は万全ですか?
この記事では、介護福祉士試験の実技試験の概要や傾向(概要内で「例題」をご紹介します)、現役介護福祉士である筆者が実際に受験した実技試験の問題を体験談として交えながら、合格へ向けての攻略法をお伝えします。
筆記試験の結果待ちの人も「どういった試験が行われるのか」を知っておく必要はあると考えますので、どうぞ最後までご覧ください。
それでは始めていきましょう!
介護福祉士試験・実技試験の概要(例題付き解説)
まずは、介護福祉士試験・実技試験の概要についてお伝えします。
出題は1事例のみで、その事例に対するポイントを考えながら
制限時間内に介助を行うことになります。
例題を挙げると、こんな感じです。
Aさん(75歳)は、脳梗塞後遺症で左半身麻痺です。 Aさんは夕食後の口腔ケアを済ませ、パジャマに着替えたいと思っています。 Aさんの担当介護士であるあなたは、Aさんの更衣と車椅子からベッドへの移乗、安楽な姿勢をとれるように介助して、布団をかけて差し上げてください。 (制限時間:7分)
1人ずつ個室に呼ばれ、介護者のモデルさんと試験管2名が見守る中で介助を行います。
採点については基準が3つ。
- ・介護者の安全を確保しているか
- ・声掛けやコミュニケーションの取り方は十分かつ適切か
- ・介護者が自分で決められるように促しているか
「制限時間は?」ということを思っている人もいるでしょう。
この「制限時間」については後半の「体験談」を交えた攻略法で触れますので
今は気にしなくて大丈夫です。
基準内容については、まさに「介護の基本」になる部分ですので
ある意味で実際の施設や現場で介護をしていることが問われる内容でもあります。
実技試験の合格基準点は、出題される課題の総得点の約60%(100点満点でいえば60点以上)です。
基本をしっかりと理解していないと合格は難しいですし、その時だけテキストの通りにすれば大丈夫といった「よそ行き介護」では通用しません(もちろん「我流」も同様です)
※本質をしっかりと押さえた介護技術が合格のカギ。ぜひ読んで身に着けておきましょう。
介護福祉士試験・実技試験の傾向
この章では、介護福祉士国家試験・実技試験の傾向についてお伝えします。
1事例といっても様々なものがあり、どんな事例の人の介助をするのかは「未知数」
どんな対策をしようにも「傾向」を知る必要はありますよね。
過去に行われた実技試験の詳細な内容はお伝えしかねますが
実際にどんな問題が出ているのかをお伝えしますね。
第1回~第24回までの実技試験では、主として「片麻痺の人の介助」が出題されていることが多かったのですが、第25回では「シルバーカーを使用する人の介助」、第26回では「全盲の人の介助」といった感じで、多種多様の介助問題が出題されてきています。
「私が関わる人の中に全盲の人はいないから」とか
「シルバーカーではなくて歩行器だから違う」とかを思う人もいるでしょう。
そういった場合には
「自分がもしそういう人に出会い、その人が困っている様子であればどうするか?」
を考えて介助をすると、いい結果につながるかもしれません。
過去問を交えた実技試験対策:実際に試験を受けた筆者の「リアル」をお伝えします!
筆者が介護福祉士試験を受験する時には、現在のような「実務者研修」などというものはなく、無資格で福祉施設に入職し、実際に高齢者などの介護を行う中で「食事・排せつ・入浴・更衣・起居動作・移乗・移動介助」などを実践しながら学び、理論などは参考書などで勉強するといった形でした。
筆者が介護福祉士試験を受験したのは平成14年1月27日の「第14回」。
無資格の人は筆記試験と実技試験に合格しないといけないのは現在と同じです。
2月半ば過ぎに筆記試験の合格通知を手にした筆者は
実技試験の受験番号を確認しながら会場へ向かいました。
試験会場では5~10人程度のグループに分けられ、グループごとに別室へ。
先程お伝えしたように1人ずつ個室に呼ばれ、ホワイトボードに掲示されている事例を確認。
「始めて大丈夫ですか?」との試験管の問いかけがあり
心の準備ができた段階でOKを伝えてからいよいよ試験開始になります。
筆者が実際に行った事例は、こんな感じでした。
Fさん(77歳・女性)は右半身麻痺です。 朝になり、Fさんは服を着替えて起きようと思っています。 担当の介護士であるあなたは、Fさんの上半身の更衣を介助してください。 そして、朝の洗顔と口腔ケアのため、Fさんの車椅子への移乗、洗面台までの誘導を行い、Fさんに歯ブラシを手渡してください。 (制限時間7分)
実際のところ、これだけのことを丁寧に行うには7分では足りません。
現に、筆者はFさんの車椅子への移乗までで7分経ってしまいました…
何をしていたのか?
リアルをお伝えしますね。
まず、Fさんに声かけ。
「Fさん、おはようございます。担当のしょうらくです。今日も1日よろしくお願いいたします。お目覚め如何ですか?」
次に、Fさんの反応を待ってから
「スッキリ目覚められたのですね。良かったです。それでは今からベッドから起きて、着替えをお手伝いさせていただきますね。今、身体を起こしても大丈夫ですか?」
そして、身体を起こす介助をFさんの状態を見ながらゆっくりとした後
「Fさん、身体を起こしました。気分は如何ですか?めまいとかはありませんか?」
こういった感じで、何かを始めるにしても
「1つの動作、1つの介助に対して2~3つの声かけをする」ことを心がけ、介助しました。
その後も
- 「Fさん。今から袖を通しますが、痛かったら仰ってくださいね」
- 「痛くないですか?では、もう少しだけ腕を上げさせていただきますね」
- 「大丈夫ですか?少し休憩しましょうか?」などといった感じで声掛けを続けました。
Fさんは右麻痺の人なので「失語」があり、首を縦、横に振ることで思いを伝えてくださいましたので、その様子に合わせて介助をするというイメージになります。
Fさんを車椅子に移乗した段階で
「はい。終了です」と試験管に告げられましたので、介助はそこで終了。
介護者のモデルさんと試験管に「ありがとうございました」と告げて会場を後にしました。
これが当時の「リアル」になります。
実技試験の合否を分けるのは「制限時間」ではなく「誠実さ」
筆者は制限時間オーバーであり、介助途中で終了となりましたが
筆者が合格できた理由は何なのか?
この段階で最終の合否判定が「時間厳守」ではないことは明らかですよね。
- ・介護者の安全を確保しているか
- ・声掛けやコミュニケーションの取り方は十分かつ適切か
- ・介護を受ける人が自分で決められるように促しているか
確かに採点基準はこの3つなのですが
これらのすべてに通じている想い
そこに「合否の分かれ道」があったと筆者は考えます。
それが、表題にある「誠実さ」
介護を必要としている人の想いを先読みして
「すべてをして差し上げること」は簡単なことです。
しかしながら、それでは介護者の心と身体のレベル低下につながりますし、自己決定の力は失われて、最終的には主導権が「介助者」になってしまいます。
あくまでも主導権は「介護者(介護を受ける人)」でなければいけない訳ですから、その人の思考や手足の動き、重心の位置や移乗の様子などをしっかりと見定める必要があります。
それに何よりも「介護者には介護者の意思がある」のですから
「したいと思っていないことをしろと言われてもできない」ですよね。
私たちも同じです。
できないことへの不安よりも
今、できていることへの喜びを多く感じてもらいたい
この想いこそが「誠実さ」であり
日頃の介護へとつながっていくものだと筆者は考えます。
そういった意味で「よそ行き介護」や「我流」では合格は難しいのです。
1つ1つの介助を
ゆっくりでもいいから丁寧に
そのことを忘れずに実技試験に臨めば
おそらくその段階でほぼ合格を手にすることができると筆者は考えます。
まとめ
今回は
【介護福祉士試験】実技試験の傾向と対策
過去問や例題、体験談を交え現役介護福祉士が徹底解説!と題して
試験の概要や傾向などを踏まえ
例題や筆者の体験談を交えた実技試験のリアル、対策についてお伝えしました。
第35回介護福祉士国家試験の実技試験は
令和5年3月5日(日)です。
1人でも多くの介護福祉士が誕生し、一緒に介護ができることを
筆者は心から期待しています。
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