今回の「よもやま話」は
国際ロマンス詐欺の手口と実態~【実録】引っかかってみた結果~
2021年に入って以降、日本においてインターネットやSNSを通じて軍人や医師を名乗る外国人異性と知り合い、恋人のような関係性になった所で多額のお金をだまし取られるといった「国際ロマンス詐欺」という詐欺が急増しています。
この記事では、筆者のSNSに実際に訪れた「詐欺師」が
どのような手口で話を進め、お金を騙し取ろうとするのかについてお伝えし
後半では、その実態について世界の状況も交えながらお伝えします。
Instagramでのやり取りから始まり、その後LINEでの交流を持ちかけ
最終的には筆者の実名や住所、メールアドレスなどを聞き出そうとする内容までに至ります。
実際にやり取りしたものが筆者のスマートフォンデータに残っていますので
これをご覧いただきながら解説していきたいと考えます。
なお、交わした会話はすべて英語で行っていますが
こちらでお伝えする際の解説は日本語に戻してお伝えしていきますのでご安心を(^-^)
それでは始めていきましょう!
【実録】国際ロマンス詐欺の手口~その全容~
第1章:InstagramへのDM
令和3年11月20日夕方。
筆者のInstagramにEricaと名乗る女性からフォローされたとの通知が届きました。
外国人からのフォローについては珍しくなく、興味を持ってくれることは有難いことなので、躊躇なくフォローバックしておくことにしました。
同日22時46分。
筆者のInstagramに、今度はDMが届きました。
開いてみると、夕方にフォローバックしたEricaと名乗る女性からのものでした。
(ここからは実際に交流した内容を、スクショ画像にして公開します)
始まりはお互いの自己紹介程度のDM(住まいや仕事についてなど)が続きますが、注目すべきは11月22日のやり取り。仕事についてのDMでのEricaの発言。
私はシリアで平和維持活動を行う軍人です。
筆者は以前にも、相手は違いますが似たような感じの経験がありました。
その人も女性でアメリカ軍人。
シリアではありませんでしたが「紛争地帯の平和維持活動をしている」とのことで、数カ月滞在の後に任務を終えてアメリカに還るとのことでした。
数日間DMの交換が続き、突然「紛争地帯での活動で、母国に隠しているお金をヨーロッパの銀行へ送金する際に、日本の銀行を経由させるために協力してほしい」旨のDMが。
- ・「なぜSNS上で知り合っただけの一般人にそんな大掛かりなことを頼むのか?」
- ・「寄付するなど、他に方法はいくらでもあると思うが?」
といった返信をすると、やたらと日本の銀行に詳しい内容が書かれてきて
文面の中には詳細な送金方法についても送られてきました。
そして、行き詰まると「あなたを愛しているから」の一点張りで話にならない。
以降、返信をせずにいると、数週間後にはアカウント自体が無くなっていたので
筆者とのつながりについては諦めたようでした。
そんなことがあって、直観的に「ヤバそう」と判断した筆者は立て続けに
- ・「私のInstagramにメッセージを送って来たのは何故か?」
- ・「接点があるとすれば、メンタルエイドの英語版記事以外にないが」
旨の内容を送ると、返信には
「メッセージを送ることで、あなたに迷惑をかけたか?」との内容が。
迷惑はかかってはいないものの
記事の内容に関して何も触れることなく
相手のパーソナルデータを根掘り葉掘り訊いてくることには抵抗がある。
ただ、先程の発言については何か返事をしないといけない…
当たり障りないように「興味を持ってもらえて嬉しい。ありがとう」とだけ伝えることにすると、機嫌が直ったのか、また内情を訊き続けられることになりました。
そして、11月23日12時06分。
Instagramに届いたメッセージには「LINE」での交流を持ちかける内容が。
別にInstagramでのDM交流で良いようなものを…
そう思いながらも、LINEでの交流に応じることにしました。
ここまでがInstagramでのやり取りです。
次の章ではLINEでのやり取りに移りますが
LINEでの会話の冒頭において
筆者が抱いていた疑念が「確信」に変わります。
どういった内容なのか?
どうぞ続きをご覧ください。
第2章:舞台はLINEへ
この章では、LINEでのやり取りについて、いくつかに分けてお伝えします。
内容的には
- ・11/23 私以外にアメリカの女性軍人との面識はあるか?と訊かれた
- ・11/23~11/26 人の外見や食べ物には興味津々
- ・11/27 突然のカミングアウト
- ・12/ 3 あなたは私に力と勇気を与えてくれる
- ・12/ 5 ついに核心に
1つ1つ見ていきましょう。
11/23 私以外にアメリカの女性軍人との面識はあるか?と訊かれた
LINEに移行してからも、他愛のない会話が続く中で
Ericaから送られてきたLINEをじっと見た筆者。
この言葉で、筆者は「これは詐欺だ」と確信しました。
なぜそう思ったのか?
筆者は軍人に興味を抱かれるような立ち振る舞いやブログ記事など微塵も書いてはいないのにもかかわらず、接触しようとするのは「カモにしようとしているに違いない」と判断したからです。
筆者自身に興味があるなら、筆者が誰と交流があろうとなかろうと関係ありませんし、記事に対する感想などを訊いたら、何某かのメッセージを伝えるはず(英語版の記事がありますからね)
「記事を興味深く読ませてもらった」、「記事の内容に共感した」などの返答があってもおかしくないにもかかわらず「DMを送ることで迷惑をかけたか?」と開き直られてもねぇ…
ただ、確信はしても確証がない…
以前の経験をふまえ「引っかかってみる」ことにして、筆者はDMを続けることにしました。
11/23~11/26 人の外見や食べ物には興味津々
この間の会話は、内容的には親しげな内容になりますが
裏を返せば「外見以外はどうでも良い」ような印象がありました。
「今日どこで何をしていたのか」が主な内容でしたが「家族構成」や「筆者の身長と体重」なども訊かれ、当たり障りない程度に答えていましたが、興味津々のようだと感じたのは、ほぼ毎日のように訊かれた「ディナーは何を食べたのか?」でした。
こんな感じです。
筆者が写真を送ると、大変お気に召したようで
「Nice!」「Great!」などの返事がきていました。
来年初めに日本を訪れるともいっていて、来日したら食べたいとも話していましたが、インターネットがあるんだから日本食の画像など容易に見られるだろうと考えると、何をさせたいのか分からないですよね。
家庭料理の写真を送らせることで、自分に興味があるんだと思わせたいのか。
ヘンな警戒心を抱かせることなく、注意をそらせたいのか。
そういった所が垣間見える内容でした。
11/27 突然のカミングアウト
いつも通りの会話が続き、時間も日本時間では深夜帯に差し掛かった時
Ericaは突然、自分のことをカミングアウトし始めました。
内容がコチラです。
自分がどうしてシリアの平和維持活動に参加することになったのか。
その内容が書かれていました。
仮に事実だとしたら、何ともお気の毒な話ですが
それを筆者に話して何になるというのでしょう?
単なる気休めで良いような話ではなさそうですが…
伝えてきた内容が内容だけに、筆者も人間ですから「励ましの言葉」などを送り
身体に気をつけるようには伝えました。
ある意味、この内容が「ネタフリ」だったのかもしれませんね。
12/ 3 あなたは私に力と勇気を与えてくれる
これまでの間にも、Ericaは、毎日1度はLINEを送ってきました。
筆者自身、この時期はクリスマスに向けての企画記事の構成や送迎の仕事などで慌ただしくしていたので、ろくに返事を返せませんでしたが、返事を返すと数分後には、Ericaは必ずまた新たなLINEを送ってきました。
何回か、こういったことが続いた中で送られてきたものの1つが、タイトルにある文面。
「あなたは私に力と勇気をくれる」
決して気持ちが悪いものではありませんが
InstagramでDMを交換し合って
2週間足らずで「勇気をくれる」といわれても…
悪い気はしなかったので「ありがとう」とだけ伝えましたが
筆者からすれば「そろそろ何か手を打ってくるかもしれない」と感じてはいました。
12/ 5 ついに核心に
これまでに「家族構成」や「晩ごはんのメニュー」などを訊いてきていたErica。
この頃になると、やたらと「今、1人か?」というLINEを送ってくるようになりました。
「今、晩ごはんを作っている」や「家族で晩ごはんを食べている」など、現状の通りのことを返していると「OK」。以降は連絡なし。ということが続き、ついに12/ 5に動きが!
その日はたまたま晩ごはんが早く終わり、ゆっくりと寛いでいました。
そんな中、LINEの着信音が。
「今、何をしている?」と。
筆者が「ゆっくりと寛いでいる」と返事をすると
Ericaは、次のような内容を送ってきたんです。
細かな内容を知りたい人は
Google翻訳でご覧になると分かりますので、ここでは概要だけ。
戦争で見つけたお金や貴重品などを生き残った者たちで分け合うことになり、150万USドルを手に入れたが、まだ危機のある状況下のため、赤十字の女性を通じて自分のお金などをロンドンに移した。 まだ自分はシリアにいるので、自分で持っておくことも送金することもできない。 だから、あなたが私の近親者となって行動してほしい。 赤十字の女性があなたの名前などを登録し、配送会社があなたの指定する場所に届けてくれるので、あなたはそれを受け取り、私が日本に行った時にお互いに会って、それを渡してほしい。 その時にいくらかのパーセンテージで、あなたに報酬を差し上げます。 フルネームと住所、メールアドレスを教えてほしい。
やはり…
度重なるこういったDMなどの内容を確認するため様々な情報収集をした結果
国際ロマンス詐欺の手口と酷似していることが判明したため
これ以降の一切の連絡を絶ちました。
2週間ほど後、LINEアカウントを確認したところ「メンバーなし」となっており、Ericaと名乗る女性は、アカウントを削除したようでした。
ここまでが、筆者が実体験した「国際ロマンス詐欺の手口」の全容です。
あなたのInstagramやLINEに突然のフォローや友達登録などがあったら注意してくださいね。
国際ロマンス詐欺の実態
こういった「ロマンス詐欺」というのは世界規模で発生していて、日本においても10数年前から既に存在している「特殊詐欺」の1つにはなりますが、まだまだメジャーなものではなく、この記事を読んで初めてその存在を知った人も多いと考えます。
2020年のデータによれば、被害が多い国としてアメリカ、イギリス、オーストラリアの3か国が挙げられていて、被害総額は3か国総合で日本円に換算すると約455億円。
(内訳:アメリカが約324億円。イギリスが約99億円。オーストラリアが約32億円)
日本でいう「特殊詐欺」における被害総額が、2020年のデータで約278億円ですから、アメリカはロマンス詐欺のみで日本のすべての特殊詐欺の被害総額を超えています。
海外においては、それだけメジャーな詐欺だということがわかってもらえましたか?
こういったことから、SNSの普及やデジタル化が進んだこともあって
世界中どこにいても、詐欺師は簡単に詐欺が行えるというのが実態です。
現住所を特定する必要性はなく、ちょっとばかし英語が話せて通信手段と集金手段さえ整えれば、後は今回のようにInstagramやTwitter、facebookなどでターゲットを見つけ、海外駐留の軍人や医師、弁護士などを名乗れば、SNSでのコンタクトや海外送金だって真実味を帯びます。
あなたという人間の周りを
人工衛星のように詐欺師が回っていると考えると分かりやすいかもしれませんね。
デジタルに強くてもリアルに疎く、経験もあまりない若い世代よりも
経験は豊富にあってもデジタルに疎く、リアルを受け入れられない中高年世代の方が極端に多い日本。
犯罪から身を護るためには、双方の持ち味を活かしたお互いの協力が不可欠なのではないでしょうか。
まとめ
今回は
国際ロマンス詐欺の手口と実態~【実録】引っかかってみた結果~
と題して、筆者の実体験をふまえた内容をお伝えしました。
今回公表するに至ったのは、実態からこういった手口に引っかかり
数千万円ものお金をだまし取られる例が頻発している現状を踏まえ
1人でも多くの人を被害から護ろうと考えたからです。
人を騙して搾取するという行為は、犯罪であると同時にその人の人格をも問われます。
1人1人が不安少なく笑顔の多い暮らしができるように、お互いに気にかけ合っていきましょう!
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