今回【実録】介護の本質chからは
第36回【介護福祉士試験】
筆記試験解答速報&合格ライン予測
現役介護福祉士が「気になる問題」を徹底解説!
と題してお送りします。
この記事では、令和6年1月28日に行われた「第36回介護福祉士試験」においての解答速報を見ながら、実際に出題された問題の中で「選択肢に迷った」や「意味が解らなかった」などといった「気になる問題」について現役介護福祉士である筆者が徹底解説していきます。
後半の方では、今回の筆記試験の難易度や合格ライン、予想される合格率などについてもお伝えしますので、どうぞ最後までご覧ください。
それでは始めていきますね!
第36回介護福祉士試験・解答速報ならびに「気になる問題」の解説
では早速「解答速報」からご覧いただきますが
ご覧になる前に注意点がありますので確認しておいてくださいね。
記載している解答速報については 各社サイトが掲示しているものをベースに 筆者が実際に問題を解いて導き出したものと整合したものです。 あくまでも「速報」ですので、正式な解答ではない ということをお伝えしておきます。 解答内容に関する問い合わせなどには お答えできない旨ご了承の上でご覧くださいませ。
前回同様、各部門において解答速報をお伝えした後に「気になる問題」を解説していく流れになりますので、しっかりと復習していってくださいね。
①人間の尊厳と自立
問題1 | 問題2 |
5 | 2 |
<解説>
今回は比較的易しい問題が並びましたが、気になる問題としては問題2。
「自立」についての問いになりますが、皆さん分かりましたか?
よく「人に頼らないで自分でできるようになる」、「今まで一人ではできなかったことが、アドバイスや助けによってできるようになる」ことが自立だという人がいますが、それは一般論であり、介護や福祉分野において考えた場合どちらも違います。
「自己実現力を高め、自らの意思や自己決定によって主体的な暮らしが営めること」
これが本当の意味での自立になりますので、選択肢を見ると2番が正解になります。
②人間関係とコミュニケーション
問題3 | 問題4 | 問題5 | 問題6 |
5 | 3 | 4 | 1 |
<解説>
この分野においては「問題文をよく読めば点数が取れる」のではないでしょうか。
具体的には、問題3であれば「介護福祉職のチーム全員で共有」、問題5であれば「介護福祉職の精神的健康を守る」といった部分がキーワードになるので、そこから自ずと正解は導き出せると筆者は考えます。
引き続き、次の分野を見ていきましょう。
③社会の理解
問題7 | 問題8 | 問題9 | 問題10 | 問題11 | 問題12 |
1 | 3 | 5 | 5 | 2 | 3 |
問題13 | 問題14 | 問題15 | 問題16 | 問題17 | 問題18 |
5 | 4 | 4 | 1 | 3 | 2 |
<解説>
「知っているか、知らないか」で、かなり差がつく問題が並びましたね…
ここで満点を取るのは至難の業ですが、半分取れたら十分だと筆者は考えます。
その中で気になる問題としては、問題9と問題18。
問題9の「貧困地域に住み込んで…生活上の援助を行ったもの」という説明のすべてがセツルメントになります。よって正解は5番。
問題18は、1つ1つの情報を整理すると正解できたと考えます。一緒に見ていきましょう。
生活困窮しているのは問題文からも明らか。「未就労で父親の年金で生計」、「父の死による独居」、「家賃滞納」などを考えた場合、”働いて生計を立てないと”という考えから4番を選びそうですが「ひきこもり」とあるので×。既に父親は亡くなっているので年金事務所も意味がないため5番も×。
であれば、3番を選ぼうか? 早合点し過ぎです。
問題文の中に「障害の有無は不明」だということが記されているのを考えた場合、3番は違う。「55歳」という年齢を踏まえると、1番も×。正解は2番になります。
こういった感じで、以降も進めていきますね。
④こころとからだのしくみ
問題19 | 問題20 | 問題21 | 問題22 | 問題23 | 問題24 |
3 | 1 | 3 | 1 | 1 | 4 |
問題25 | 問題26 | 問題27 | 問題28 | 問題29 | 問題30 |
5 | 4 | 2 | 2 | 5 | 4 |
<解説>
気になる問題としては、問題23と問題29。
問題23は、自分の爪を視ながら問題を解いた人が多いのではないでしょうか?
『爪ってそんなに早く伸びたっけ?』などと考えながら筆者も解いていました。
先に正解をお伝えすると、1番が正解です。
爪はケラチンというたんぱく質が主成分で
1日に約0.1㎜(1ヶ月で約3~4㎜)伸び
健康な爪であれば「薄いピンク色」です。
問題29の「概日リズム睡眠障害」とは、平たくいえば「昼夜のサイクルと体内時計のリズムが合わず、寝なければいけない時に眠れず寝てはいけない時に眠ってしまう」といった障害をいいます(職務上、夜勤を頻回に行っている人などに診られます)。
選択肢を見てみると、そのことが顕著に書かれている5番が正解になるでしょう。
⑤発達と老化の理解
問題31 | 問題32 | 問題33 | 問題34 |
3 | 2 | 5 | 1 |
問題35 | 問題36 | 問題37 | 問題38 |
4 | 5 | 3 | 4 |
<解説>
比較的易しい問題が並んでいる中に、思わず「は?」という問題も含まれていましたね…
気になる問題としては、問題32、問題35と問題36です。
解説していきますね。
問題32の「広汎性発達障害」とは、コミュニケーション能力が弱く、パターン化した行動などに独自のこだわりを抱き、それに強く囚われるために社会生活が困難になりやすい特徴を持つ先天性の神経発達障害のことをいいます。
問題文の中でキーワードになるのが「毎日一人で砂場で砂だんごを作り、きれいに並べる」であり、次の日ブルーシートがかかっている砂場を見たらパニックになった。とあります。
これを見たあなたの心の中には「事前に教えておいてあげたら良かったかも」という心情が生まれますよね。それが答えになるのです! 正解は2番が一番近いです。
※1番も正解の可能性はあると考えられますが「理由を含めた説明」と考えた場合、2番の方が伝わりやすいと筆者は考えました。
問題35は、「冷や汗を伴う激しい胸痛」と「30分以上軽快しない」がキーワード。
正解は、4番の心筋梗塞です。
問題36の「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいいます。
選択肢にはそのまま記されていますね。正解は5番です。
どんどん進んでいきましょう!
⑥認知症の理解
問題39 | 問題40 | 問題41 | 問題42 | 問題43 |
1 | 1 | 4 | 2 | 5 |
問題44 | 問題45 | 問題46 | 問題47 | 問題48 |
3 | 3 | 5 | 1 | 2 |
<解説>
この分野も「知っているか、知らないか」が分かれ目になる問題が多かったですね。
気になる問題としては、問題46。
問題46の「バリデーション」とは、認知症の方の言動や行動を意味のあることと捉え、認め、受け入れることをいいます。それを踏まえ、選択肢を見ていくと、内容はこうなります。
- センタリング…(介護者)の精神集中、瞑想、深呼吸などにより気持ちを落ち着かせる
- リフレージング…反復話法。例)「○○が好き」⇔「○○が好きなんですね」
- レミニシング…回想話法。過去について質問しながら懐かしい昔話を引き出す
- ミラーリング…「鏡」のように相手の動作や姿勢、仕草、話し方などをマネる
- カリブレーション…「共感」を意味し、感情が表れる部分(表情、呼吸の仕方など)を観察し、一致させていく
4番と5番で悩ましいですが
バリデーション本来の意味と照らし合わせた場合
正解は5番になると筆者は考えます。
ただ「相手の言動をマネる」だけでは、反感を買ってしまうリスクが高いと考えられるので、筆者は5番を正解としました。
⑦障害の理解
問題49 | 問題50 | 問題51 | 問題52 | 問題53 |
1 | 2 | 5 | 2 | 4 |
問題54 | 問題55 | 問題56 | 問題57 | 問題58 |
3 | 3 | 2 | 5 | 4 |
<解説>
この分野は、正直言って満点が取れる問題が並んでいたと筆者は考えます。
事例問題においては、問題53は「糖尿病の末梢神経障害で介護福祉職が観察できる範囲のこと」、問題54、55は「障害を持つ人たちの状態をいかにリアルにイメージできるか」がカギとなる問題だったと考えられ、ある意味において「日頃どれだけ利用者のことをしっかり視ているか」が問われたのではないでしょうか。
⑧医療的ケア
問題59 | 問題60 | 問題61 | 問題62 | 問題63 |
5 | 4 | 1 | 2 | 3 |
<解説>
今回も「喀たん吸引」と「経管栄養(胃ろう)」問題が散りばめられたこの分野。
気になる問題は、問題62。
一緒に見ていきましょう。
経管栄養を注入する際のミスと、それが起因する身体トラブルが合っているかになるのですが、先にお伝えすると2番が正解です。
解説では、起因する身体トラブルについて正しいものを記載しておきますね。
- 1番:「誤挿入」→敗血症・汎発性腹膜炎を起こす可能性
- 2番:「注入速度が速い」→嘔吐
- 3番:「(注入物の)温度調整不良」→下痢
- 4番:「(注入物の)濃度間違い」→下痢
- 5番:「姿勢不良」→嘔吐
ここまでが、午前中に行われた「前半戦」になります。
後半の解説も、こんな感じてお伝えしていきますので
どうぞ最後までご覧くださいね。
⑨介護の基本
問題64 | 問題65 | 問題66 | 問題67 | 問題68 |
5 | 5 | 3 | 2 | 3 |
問題69 | 問題70 | 問題71 | 問題72 | 問題73 |
4 | 1 | 3 | 4 | 5 |
<解説>
午後の部に入って最初の部門は、前回同様「介護の基本」でした。
今回気になる問題としては、問題64と問題71。
問題64において登場している用語をいくつか解説しておきますね。
- ダブルケア…育児と介護を同時に担う状態のこと。
- 家制度…「家」を単位として一つの戸籍を作り、家長(現在では世帯主)が家族を統率する仕組みのこと。1948年に廃止。
この時点で1番と3番は×。時代背景と増減するものの整合性を考えれば、正解は自ずと導き出せるでしょう。正解は5番です。
問題71に登場する図記号は「洪水・内水氾濫」を表しているのを知っていれば答えは簡単!
正解は3番になります。
この2問が正解できたとしたら、この分野は満点が取れたのではないでしょうか。
比較的解きやすい問題だったように筆者は感じました。
⑩コミュニケーション技術
問題74 | 問題75 | 問題76 |
2 | 3 | 2 |
問題77 | 問題78 | 問題79 |
2 | 1 | 4 |
<解説>
この分野においては、はっきり言って満点が取れないようではいけないと筆者は考えます。
ここで点数を落としてしまった人は、現在の自分のコミュニケーション力を適切に評価し、理論ではなく実務でのコミュニケーション力をしっかりと身に着けてもらうことをお勧めします。
⑪生活支援技術
問題80 | 問題81 | 問題82 | 問題83 | 問題84 | 問題85 | 問題86 | 問題87 | 問題88 | 問題89 |
3 | 1 | 4 | 2 | 5 | 4 | 5 | 3 | 5 | 1 |
問題90 | 問題91 | 問題92 | 問題93 | 問題94 | 問題95 | 問題96 | 問題97 | 問題98 | 問題99 |
2 | 3 | 3 | 2 | 4 | 5 | 1 | 1 | 5 | 4 |
問題100 | 問題101 | 問題102 | 問題103 | 問題104 | 問題105 |
2 | 5 | 3 | 4 | 2 | 3 |
<解説>
毎年一番問題数の多い「生活支援技術」。
問題83、問題84、問題87においては、利用者の状態についてしっかりとしたイマジネーションを働かせないと解けない問題なので、試験中に戸惑った人も多かったことでしょう。
26問ある中で筆者が気になる問題としては「問題102」。
問題102は「事例問題」。誤嚥性肺炎による入退院を繰り返し、終末期が近い利用者の支援について問われていましたね。
選択肢には様々な支援(確認)方法が並んでいますが、介護福祉職として最も大切なことは「利用者本人がどうしたいのか?」その思いを理解すること。ですよね。
そのことに直結する選択肢が正解になります。
正解はもちろん、3番ですよね。
⑫介護過程
問題106 | 問題107 | 問題108 | 問題109 |
2 | 4 | 1 | 3 |
問題110 | 問題111 | 問題112 | 問題113 |
5 | 4 | 3 | 1 |
<解説>
この分野においても、さほど難しい問題はなかったように筆者は考えます。
後半の事例問題は、キーワードとなる利用者の思いが明確に表されていましたので、正解に辿り着くことは容易だったのではないでしょうか。
次がいよいよ最後の分野です。
しっかりと復習していきましょう!
⑬総合問題
問題114 | 問題115 | 問題116 | 問題117 | 問題118 | 問題119 |
1 | 1 | 4 | 4 | 3 | 5 |
問題120 | 問題121 | 問題122 | 問題123 | 問題124 | 問題125 |
5 | 2 | 3 | 4 | 3 | 2 |
<解説>
最後の分野にふさわしいくらい難しい問題が並んでいましたよね…
そんな中で筆者が気になる問題は、問題119です。
脊髄損傷(第4胸髄節まで機能残存)というのがポイントになるこの問題。
症状などについては「脚と胴体のマヒ、乳首より下の感覚が喪失しているが、肩や肘は正常に動く」というもので、このことからDさんができることに視点を置くと、両手腕は動くので、食事や寝返り、車椅子での自力移動、上半身の更衣はできることになりますよね。
そして、症状の中にある乳首より下の感覚が喪失しているという部分に着目すれば、排泄のコントロールが難しいということが分かり、在宅生活での留意点として挙げられる適切なものは5番になることが分かるでしょう。
こういう類の問題は「第6胸髄節まで機能残存」という形で過去に出題されたことがあるので、この場面においても過去問をしっかり解くことが重要だということがあらためて示されていると筆者は感じました。
第36回介護福祉士試験の解答速報と気になる問題の解説をお伝えしました。
第36回介護福祉士試験の難易度は?合格ラインは?予想される合格率などについて大胆予測!
筆記試験、お疲れさまでした。
難しかったですか? 手ごたえはあったでしょうか?
様々な思いが交錯しているとは存じますが
一先ず無事に終わった安堵感があるのではないかと筆者は考えます。
筆者も実際に問題を解いてみて、今年も幅広い知識と実務に沿った出題が多くあり、あらためて「介護職=総合職」ということを実感した試験でした…
ただ、今年に関しては「知っているか、知らないか」といった問題が多く出題されていたように感じたので、ある意味「過去問をしっかりと解いていれば、ちゃんと点数は取れた」のではないかと筆者は考えます。
したがって難易度は、A~Eで示すと「C(普通)」。
合格ラインは、77点~85点ではないかと考えられます。
※出題されている事柄や用語などを知っている人と知らない人の割合によって幅があるということです。
(ちなみに筆者の点数は、93点/125点満点でした。)
そして合格率ですが、前回は84.3%と高かったですが
今回は80%には届かないのではないかと筆者は予測します。
具体的な数値をいえば、例年並みの75%前後になると筆者は考えます。
まとめ
今回【実録】介護の本質chからは
第36回【介護福祉士試験】
筆記試験解答速報&合格ライン予測
現役介護福祉士が「気になる問題」を徹底解説!
と題してお送りしました。
今回の筆記試験を受けられた皆さん、本当にお疲れさまでした!
実技試験(令和6年3月3日)のある人は、先に筆記試験の合否が分かりますので、合格したら実技の方も手を抜かずに頑張りましょう。
合格発表は、令和6年3月25日(月)14時です。
一人でも多くの仲間ができることを、筆者は大いに期待しています!
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