
――あなたが、あなた自身と向き合うことから、すべては始まる。
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS

毎回、一つの楽曲を徹底考察し、あなたの心に癒しと力をお届けする本シリーズ。
今回は、あいみょんさんの楽曲「いちについて」を取り上げます。
▶はじめに

「いちについて」は、2025年7月スタートの
富士屋カツヒトさん原作・松本潤さん主演
TBS系「日曜劇場」ドラマ「19番目のカルテ」の主題歌として書き下ろされた一曲。

“人の命とその心に向き合う”というテーマを軸に、
ただの医療ドラマではない、“生き方”そのものに踏み込んだ作品です。
そんな重厚なドラマの主題歌として流れるこの楽曲には、
きっと「これまでの“応援歌”とは違う何か」があるはず――。
この記事では、楽曲イメージやタイトル、歌詞の奥行きから
あいみょんさんがこの曲に託した“メッセージの本質”を丁寧に深掘りしていきます。
どうぞ最後まで、お付き合いください。
▶ 楽曲イメージ|アコースティックサウンドが描く“心の旅”

『いちについて』のサウンドは、あいみょんさんの原点回帰とも言えるシンプルな構成。
アコースティックギターが中心に据えられ、
乾いたドラムの音が、淡々と一定のテンポを刻みながら、楽曲全体を包み込んでいく――

飾り気のないその音は、あいみょんさんの歌声とともに、聴く人の心の奥に直接触れてくるような感触を持っています。
筆者がこの楽曲を聴いて思い浮かべたのは、“ローカル線の鈍行列車”でした。

目的地を急ぐこともなく、車窓から見える景色や、
駅ごとに乗り降りする人々の姿を眺めながら、
自分自身と静かに向き合う旅――
そんな“内なる移動”のような時間を、この曲は与えてくれます。
▶歌詞の意味を徹底考察!

それでは、歌詞考察に入りましょう。
優しく語りかけるような歌声で紡がれていく歌詞の中から、
3つのフレーズに着目し、丁寧に深掘りしていきますね。
※JASRAC管理楽曲のため、すべての歌詞は掲載していません。
詳しく知りたい方は、以下のリンクからご確認ください。
◆泥濘ぬかるんだ世界に立ち尽くす“わたし”の足元
落とされた世界が少し泥濘んでいた
このフレーズが本楽曲の世界観を象徴している、といっても過言ではないでしょう。

“泥濘(ぬかる)んでいた”という表現は、ただ単に歩きづらいだけでなく、
どこか不快で、生々しい感触を伴うものです。
乾いた大地でもなく、柔らかく受け止めてくれる芝生のような地面でもない――
それは、多くの人々がこれまでに流した
“汗”や“涙”が完全には乾ききっていない、そんな場所なのではないでしょうか。

努力してきた跡、傷ついた痕、立ち上がれなかった夜……
そのすべてが蓄積し、目に見えない“重さ”として世界を少しだけ沈ませている。
そうした他者の痛みが染み込んだ場所に”わたし”は立っている――というイメージです。
◆“気持ちの悪い笑顔”が意味するもの
気持ちの悪い笑顔が心舐め回す
このフレーズからは、“作り笑い”や“不本意な微笑み”を強く連想させられます。

自分の感情を押し殺し、場の空気を読みながら言葉を選び、人との距離を測り続ける日々――
そんな日常において、知らず知らずのうちに“本音”が抜け落ちてしまう。
自分の“核”がどんどん薄れていく感覚。
そうした息苦しさが、このフレーズには滲み出ています。
そして、その直後に登場する「もう 砕いて」という言葉。
これは、“そんな生き方はもうイヤだ”という内なる叫びと受け取ることができます。

見せかけの笑顔を壊し、本当の自分で立ち向かうための、
痛みを伴う決意を表しているのではないでしょうか。
◆“自由”という名の落とし穴
なぜ自由は優しいふりをして 落とし穴を作るの
“自由”という言葉は、ときに甘く、ときに残酷です。
「自分らしく生きていい」「好きなように生きればいい」――
そんな耳障りのいい言葉に飛びつきたくなる瞬間。
あなたにもあるでしょう。
しかし、その“自由”が裏を返せば「すべては自己責任」という重荷になることもある。
このフレーズは、そんな”自由”に潜む落とし穴を見抜いた「気づき」の瞬間を表しているように思えます。
しかし同時に、こうした“誤解”や“つまずき”を繰り返しながら、
人は自分だけの生き方を模索していくのだ、というメッセージも含まれているのではないでしょうか。

“変わりたくて 生きていく”というラストのフレーズは、
その先にある希望を示しているのかもしれません。
▶ 楽曲タイトルに込められた想い

「いちについて」。
英語に訳せば、「On your mark」。
陸上競技なのでよく耳にしますよね。
でも、ドラマ『19番目のカルテ』の世界を思い浮かべながらこの言葉を見つめたとき、
筆者の胸に浮かんだのは、もう少し深いニュアンス――
「あなたの“今”と、真っ直ぐに向き合って」という意味でした。

医療は私たちの暮らしに欠かせない存在であり、
「病気になったら、医者が治してくれる」と信じて疑わない人も多いでしょう。
けれども、「いちについて」という言葉には、
それだけでは語りきれない“もっと人間的な意味”が込められているのではないかと、筆者は感じたのです。

この言葉を目にしたとき、ふとよみがえったのは――
かつて私が勤務していた、老人保健施設併設病院でのある「基本理念」。
病は人なり 医も叉人なり 人と人なり

病を患うのも「人」。
その病に向き合うのも「人」。
だからこそ――人と人とが“正面から向き合う”ことで初めて、病は癒えていく。
院長先生は、そう教えてくれました。
私たちは、ともすれば「病気は医者が治すもの」と思い込みがちです。
けれど院長先生は、こう語ってくれたのです。
「本当に病を治すのは、患者さん自身なんだよ」と。

医師は、その人が治るための“道しるべ”を与える人。
看護師や介護士などの医療従事者は、その道を一緒に歩いていく“伴走者”。
でも――
最後に一歩を踏み出すのは、他でもない「あなた自身」なのです。

「さあ、歩き出そう」
そう自ら構えた瞬間――それこそが、“いちについて”。
つまり「いちについて」とは、単なるスタートの合図ではなく、
“自分の人生に向き合う覚悟”そのものなのだと、筆者は思いました。
たとえ今は走り出せなくても、
たとえ足がすくんでいたとしても――
“向き合う”と決めたその瞬間から、人生はきっと動き出す。

ドラマ『19番目のカルテ』で描かれる「総合診療」という診療科。
それは、病だけでなく、患者の心や人生そのものと向き合う医療です。
だからこそ、このドラマの主題歌として選ばれた「いちについて」という言葉には、
あいみょんさんなりの優しい問いかけが込められているように思えるのです。
「医療とは何か」
「生きるとはどういうことか」
その問いを、私たち一人ひとりにそっと投げかけながら、
「さあ、あなたの“今”に立って」と語りかけている――
そんな気がしてなりません。
▶ まとめ

今回は、あいみょんさんの楽曲「いちについて」を徹底考察しました。
人生において、私たちは幾度となく立ち止まり、
ときには迷い、ときには痛みに身を委ねながらも、
また歩き出す「そのとき」を、静かに待っているのかもしれません。
あいみょんさんの「いちについて」は、そんな“静かな始まり”を歌った楽曲なのではないでしょうか。
走り出すことがゴールではない。
立ち止まったっていい。
大切なのは――
「今の自分と、正直に向き合ってみよう」と決めた、その瞬間。

そしてその時、
心のスタートラインに立ったあなたを診て、カルテに書き込まれる最初の言葉は――
もしかしたら「一緒に向き合おう」かもしれないし、
あるいは「あなたらしく生きよう」なのかもしれません。
いずれにせよ、その一言には、
あなた自身が自分に与えた「許し」と「希望」が込められているのです。

あなたは、どんな気持ちで「いちについて」と構えますか?
よければ、あなたの「いちについて」の瞬間を、コメントやシェアで教えてください。
ドラマとともに、あなたの物語も始まるかもしれません。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にもあいみょんさんの楽曲を考察しています。
そちらもぜひ、ご覧くださいね。










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