
――見えなくなった“明日”はやがて、希望をまとって私たちを照らす。
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS

毎回、一つの楽曲を丁寧に考察し、あなたの心に“癒し”と“力”を届ける本シリーズ。
今回は、yamaさんの楽曲「us」を取り上げます。
▶はじめに

yamaさんの「us」は、2025年7月スタートのテレビ朝日系ドラマ
『誘拐の日』(主演:斎藤工)の主題歌として書き下ろされた楽曲です。

ドラマチックなメロディと切ない歌声が、物語に描かれる“人と人との不器用な関係性”や、
“それでも求めたくなる温もり”と響き合い、
聴く人の心をじんわりと揺さぶります。
そして、タイトルの「us(私たち)」という言葉――
それは単なる代名詞ではなく、このドラマの登場人物たち、
そして、それぞれが誰かと築いている“関係そのもの”を象徴しているようにも思えるのです。
さらに、“us”は「明日(あす)」とも読める。
この曲が描いているのは、“私たち”がそれぞれに願う“明日”のかたち――
そんな普遍的な問いなのかもしれません。
果たして、「us」とは何を意味するのか?
本記事では、「us」という楽曲のイメージ、タイトルの意味、
そして歌詞に込められたメッセージを丁寧に読み解きながら、
ドラマ『誘拐の日』との関係性を踏まえ、その疑問に触れていきます。
どうぞ最後まで、お付き合いください。
▶楽曲イメージ:“つるべ落としの夕暮れ”が描く「us」の風景

音源を初めて聴いた時、筆者の脳裏に浮かんだイメージが
“つるべ落としの夕暮れ”のような情景でした。

日が沈むスピードが思いのほか早くて、気づけば空は藍色へ――
あたたかくて、少しだけ怖くて、でもその中に確かな希望の光が滲む。
まさにそんな“感情のグラデーション”が、楽曲全体に丁寧に織り込まれています。
ドラマ『誘拐の日』もまた、
予想だにしない展開の中で突如始まるふたりの逃避行を描きます。
不安と困惑に包まれながらも、どこかに人間らしい温もりがある――
「us」は、その“人と人との微かな光”を丁寧にすくいあげ、
夕暮れの色に似た音の温度で包んでくれます。

急に色を変える空
それでも、隣にいたいと願ってしまう――
そんな“夕暮れの情景”をまとった「us」は、
まさに「誘拐犯と少女」という関係の中に芽生える、
奇妙で愛おしい“親子のような絆”を音でそっと照らしているのかもしれません。
▶歌詞の意味を考察!少女のまなざしがすくい上げる“心のぬくもり”

それでは、歌詞考察に入りましょう。
記憶を失った少女の視点で描かれているというyamaさんの楽曲「us」の歌詞。
“誰かと一緒にいること”を静かに、そして切実に願う心が、
グラデーションを描きながら広がっていくように感じます。

それはまるで、筆者が感じたイメージ“つるべ落としの夕暮れ”のように。
日が沈むスピードが思った以上に早く、気づけば藍色の世界。
その中にある、ほんのわずかな希望の光――。
「us」は、そんな不安とぬくもりが同居する情景を織り込んだ楽曲です。
※JASRAC管理楽曲のため、すべての歌詞は掲載していません。
詳しく知りたい方は、以下のリンクからご確認ください。
◆ 判明した歌詞に見る、“us”という関係の輪郭
歌詞の中で、筆者が最も印象に残るフレーズは、この部分です。:
どうして どうして 傍にいてよ
ありふれた願いでしょ
優しさで包んで欲しいだけなの
どんな未来であっても 君となら描ける
タイトル”us”を象徴的に捉えたフレーズではないでしょうか。
ここにあるのは、「傍にいてほしい」という、ささやかだけど痛切な願い。
少女は記憶も家族も失い、言葉にできない不安の中で、
「一緒にいたい」と心から叫びます。
それは、ドラマ『誘拐の日』における誘拐犯と少女の奇妙で切実な共同体、
つまり“親子ではない親子”のような関係性=「us」をまさに体現していると言えますよね。
この「傍にいてよ」「ふたりでなら信じたい」というリフレインが示すのは、
未来を信じる力は「us」という関係から生まれるという希望の光だと筆者は感じます。
◆ “us”の語感がもたらす、あたたかな距離

“us”という語には、「あなたと私」という最小単位の関係性が凝縮されています。
そこに所有も、説明もいらない。
ただ「一緒にいる」という事実だけが、すべてを包む。
ドラマ『誘拐の日』の中で築かれていく“親子ではない親子のような関係”が、
まさにこの“us”の関係性に近いのではないでしょうか。

yamaさんの歌声は、強く訴えかけることなく、ただそっと隣に寄り添うように語りかける。
それはまるで、「us」が“ふたりで見る未来”を、静かに願っているようにも感じられます。

歌詞の方は公式発表後に、さらに深掘りしていきますが、
ここで冒頭にお伝えしていた“疑問”について触れていきたいと思います。
「us」は、“私たち”という言葉ですが、果たしてその「私たち」とは誰を指すのでしょうか?
そして、“明日”と読んだ時、その「明日」とは誰に対するものなでしょうか?
ドラマ『誘拐の日』の構造を見ていくと、そこにはいくつもの「us」「明日」が重なり合っていることに気づかされます。
この点について、次のセクションでは「us」という言葉に込められた
複層的な関係性を読み解き、その本質に迫っていきます。
▶ 「us」とは、誰と誰のこと?――関係性を読み解く

yamaさんの楽曲「us」のタイトルは、あまりにシンプルで、それゆえに奥深い。
“us”――それは「私たち」を意味する最小単位の英語であり、
誰と誰を含むのかによって、意味がまったく異なってくる言葉です。
この言葉を、ドラマ『誘拐の日』の登場人物たちの関係に重ねてみると、
いくつもの“us”が浮かび上がってきます。
① 記憶を失った少女と、誘拐犯の男

最も直接的で、楽曲の中心にあると考えられる「us」。
家族を失い、過去もわからない少女。
崩壊しかけた人生を生きていた中年の男。
本来であれば出会うはずのなかった二人が、
“犯罪”という悲劇的な入口から、
奇妙で切実な共同体=usを形作っていく。
少女の目線で語られるとすれば、その“us”は、
「今この瞬間、私の手を離さずにいてくれる唯一の人」
という、極めて個人的で切実な絆を意味しているはずです。
この「us」は、“本当の親子”ではないけれど、何よりも深く信じたくなる関係を象徴しているのです。
② 誘拐犯とその妻

男には、かつて一緒に暮らしていた妻がいます。
二人の間には、娘に“重度の心臓病を患わせてしまった”という心の傷がある。
それが原因で、彼らは心をすれ違わせ、別々の道を歩むことになった――
この二人の間にも、終わったはずの“us”が存在します。
それはかつて「家族」だった人たちが、
心の奥底ではまだ“私たち”でありたいと願ってしまう、
届かない再構築の祈りです。
「us」には、過去にこぼれた関係への鎮魂歌としての側面もあるのかもしれません。
③ 少女と、失われた家族

記憶をなくした少女には、かつての家族の姿が思い出せません。
でも――
誰かと過ごしていた時間の「ぬくもり」だけは、手のひらの感覚として残っている。
たとえそのぬくもりが“夢だった”としても、
それを信じたいと思えることが、
彼女の“明日”を照らす光なのかもしれません。
そんな描写が、もし歌詞の中にあるとすれば、そこにもまた、見えない「us」が存在しているのだと感じます。
それは“もう会えないかもしれない人たち”への祈りであり、
「あなたたちと一緒にいた私」が確かにいたことを信じたい――
という、存在の証明そのものなのです。
◆それぞれの「us」が、描こうとする“明日”

「us」は、“私たち”であると同時に、“明日(あす)”とも読めます。
これは偶然のようでいて、きっとyamaさんが意識的に選んだダブルミーニングでしょう。
- 誘拐犯と少女にとっての“明日”は、逃げ切ることかもしれない。
- 容疑者夫婦にとっての“明日”は、立ち止まった時間を動かすこと。
- そして少女にとっての“明日”は、“誰かと一緒に生きたい”と願える未来。
ひとつの「us」に対して、ひとつの“明日”がある。
そのどれもが、不確かで、儚くて、それでも信じたくなる希望なのです。
◆“us”とは、あなたが一緒に“明日”を願う「誰か」との関係

今までの考察から「us」と「明日」の示すものが読み解けましたが
ここで終わりではありません。
読み解けた後、この楽曲は私たちに“問いかけ”をくれています。
その“問いかけ”と、一緒に向き合っていきましょう。
この曲が問いかけてくるのは、きっとこんなことではないでしょうか:
- あなたにとって、「us」は誰との関係ですか?
- そして、その“us”で描く“明日”は、どんな風景をしていますか?
「us」という小さな単語の中に込められたのは、
誰かと共に歩もうとする意志であり、
どんなに不器用でも関係を信じてみたいという希望です。

それは、たとえ記憶が失われても、血が繋がっていなくても、
“人と人”のあいだに確かに生まれる――「私たち」という絆。
そんな想いを、まっすぐに語りかけてくる楽曲だと筆者は感じます。
▶まとめ

今回は、yamaさんの楽曲「us」を徹底考察しました。
“us”が描く、それぞれの“明日”。
不確かで、儚くて、壊れそうなほど脆いものかもしれないけれど
それでも信じたくなる“希望”を抱かせる――そんな楽曲だと筆者は感じました。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも多くの楽曲を考察しています。
そちらもぜひ、ご覧くださいね。





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