今回も【実録】介護の本質chからは
施設や事業所に蔓延する2つの「毒」
についてお伝えします。
今回は、いよいよ「後編」になりますが
ここで、前回までのおさらいを簡単にしておきます。
施設や事業所に蔓延する2つの毒とは
- 正しいことを言っていても、キャリアや若さを理由にして潰される仕組み
- 施設や事業所の勝手都合に合わせて拡大解釈された付帯業務
ということでした。
<1.についての概要>
志高く、介護の道を歩み始めた中で抱いた疑問や違和感
新しいアイデアなどを提言しても、キャリアや若さを理由に意に介されず。
意見をすると恫喝まがいのことまでされて、モチベーションをなくし辞めていく…
<2.についての概要>
「やったことがあるから」や「資格を持ってるから」などと 専門職の職域を越えさせてまで、本来の仕事とは違うことを 「付帯業務」という勝手都合の論理で、半ば強引に推し進めていく…
という内容を「実体験」と「実話」を含めてお伝えしました。
そして、私が前回「中編」の終わりの方で
もっと深い闇がある
とお伝えしたことを、覚えていますか?
ある意味において、この2つの毒を絶え間なく生み出し続ける要因となるもの。
それが「深い闇の正体」になります。
- その「深い闇」と何か
- それを解毒するための方法とは何なのか
「後編」では、この2点についての私の見解をお伝えします。
あくまでも「私見」ですが、読み進めていくにつれて「ただの私見ではない」ことが分かりますし、実体験や実話を通じての見解なので、信憑性は高いと考えます。
「介護職をやめたい」、「介護業界をやめたい」と言い、去っていった人の想いを無にしないために、ありのままをお伝えしますので、どうぞ最後までご覧ください。
では、お話を進めてまいりますね。
施設や事業所に蔓延する毒:要因となる「深い闇」の正体とは?
私は前回のお話の中で、2つの毒の蔓延の背景については
「単に人員・人材不足ではない」といい、「もっと深い闇がある」といいました。
結論から言えば、その闇とは
保身です。
分かりやすく言うと
ええかっこしいです。
ある意味、福祉業界のみならず、他の業種の方々においても
共通することなのかもしれません。
今、福祉業界は「サービス業化」しています。
「お客さんに気に入られてナンボ」みたいな感覚でしょうか。
本来であれば、福祉といえば「慈善」であり、運営主体は「行政」。
介護保険制度が始まる前の制度は、施設への入所を考えたり、実際に施設へ入所する手続きには福祉事務所へ問い合わせて、施設を斡旋してもらい、入所する。
いわば「措置(そち)」と呼ばれるものでした。
分かりやすく言うと
「施設に入りたい人は、行政が紹介したところに入ってください」
ということです。
介護保険制度が始まってから「契約制度」へと変わり、先述の件においては、行政からの紹介ではなく、自分の条件と合致する施設と直接契約を交わして入所する。
分かりやすく言うと
「施設に入りたい人は、入りたい施設と契約して入ってください」
ということになりました。
一見すると「自分の思うところに行けるんだから、良いじゃん!」
果たしてそうでしょうか?
現在稼働している施設や事業所の多くは「営利団体」です。
言い換えれば「お金儲けする団体」。
「社会福祉法人」であっても、運営主体が「不動産屋」というのは現状ではよくある話です。
(居酒屋チェーンが社会福祉法人を運営しているという話もありましたね)
こういった団体の根幹となる概念は「入るを増やして、出るを減らす」。
入るはもちろん収益。
出るは?人件費を含む支出のことですよね。
- 入居者や利用者をどんどん増やして収益を上げ、報酬は理事や役員に一定率で分配。
- 国が定める基準の下限枠ギリギリの有資格者の正規人員で賄い、非常勤など安く雇える人などによって人員を確保し、人件費を抑える。
その結果、最低限の人員で業務を回すことになり、欠勤が出た場合は、いわゆる「コストが高い人」や「やったことがある人」などへとお鉢が廻り、「よろず屋」(便利屋)が蔓延する。
ここまでは、人員不足でくくられるとは思います。
私がいう「保身」は、その奥にある闇。
入居者や利用者、家族には、こういった状態は決して見せられないもの。
そりゃそうですよね。
利用前の面接や契約の際に、施設においては
「安心・安全にお暮しいただけるように、きめ細かい支援をいたします」
「手厚い介護を行い、穏やかにお過ごしいただけるよう支援いたします」
そう伝えているんだから。
事業所においては
「利用者のニーズに合わせた柔軟な対応を」と気前の良いことをいい
他の事業所へ浮気されるのが嫌だから、たとえ利用者や家族からの要望が無理難題であっても
介護保険法に抵触スレスレであっても、都合の良いように勝手に法解釈をして行っている。
「こういう風にすれば、行政から何か言われても大丈夫」的な感覚ですね。
この感覚こそが、私の言う「闇」の正体になります。
施設や事業所の「保身」のおかげで、どれだけの素晴らしい人財が失われ
ひいては、施設で暮らす、在宅で暮らす高齢者や家族にリスクを負わせているか
もちろん、このような施設や事業所ばかりではないですけどね。
単に営利だけを目的として、節税対策の一環で施設や事業所を立ち上げているのであれば、介護保険の理念からすれば本末転倒です。
見た目だけ、聞こえの良いだけの「経営理念」や「介護理念」など、実情と合わなければそれは、入居者や利用者、家族への背信行為に等しいです。
ここまでご覧いただいて、あなたはどう思いますか?
- 「えぇ⁈…こんなひどい状況なの?」
- 「薄々感じてはいたけど、お世話になってるから何も言えない…」
そう思われているかもしれません。
言葉を選ばずはっきり言いますが、現状なんてこんなものです。
では、これを打開(解毒)する方法はないのか。
次の章でお伝えしますね。
施設や事業所に蔓延する毒:それを解毒するための方法とは?
その方法とは、ズバリ!
各専門職の専任の徹底です。
前回の終盤でもお伝えしたように、施設や事業所において支援活動をしているそれぞれが、それぞれの仕事についてプライドを持っています。
「業務独占」という職種もあるくらいです。
介護福祉士、正(准)看護師、(管理)栄養士、生活相談員(支援相談員)、 介護支援専門員(ケアマネジャー)、主任介護支援専門員 など
どれもみな、片手間でできる仕事ではありません。
それぞれが、それぞれの役割をしっかりと果たすことが大前提であり、そうすることで職種においてのレスポンスも、入居者や利用者の安心も高まっていきます。
施設長(管理者)としては「専任業務への理解と必要人員の確保」が挙げられます。
お金ばかり管理するのが施設長(管理者)ではない。 ということです。
必要な職種に対し、必要数×1.5倍程度の確保が常に必要 かと思います。
これは単に「絵空事」で言っているのではありません。
施設(事業所)で業務にあたる専門職の心と身体の状態を常に把握し
必要に応じて面談やカウンセリングなどを行いながら
「労い」、「安心」、「保障」を伝えながら方向性を確認し合うことを
継続性を以て遂行して行く。
これが、施設長(管理者)の専任業務だと、私は思います。
それぞれが、それぞれの仕事に対して理解し、安心と安全が担保されることで、
一個人を尊重し、支え合うことこそが「チームワーク」なのではないでしょうか。
自分が与えられた資格についての責任や使命を、しっかりと果たして行く。
そうすることで、高齢者の安全・安心がしっかりと担保され、
入居者や利用者、家族との信頼関係も深まると私は考えます。
安易な考えで、本来の仕事内容に沿わないようなことを「チープなチームワーク」の下に押し付けることが、ひいては高齢者や家族の安心や安全を損ない、最悪な場合には、信用・信頼までもを奪い去ってしまう…
このことからも
「よろず屋」を開店させてる場合ではない。
ということが分かりますよね。
まとめ
それでは、最後に今回の話をまとめます。
施設や事業所に蔓延する2つの毒についての要因。
「深い闇」とは「保身」である。 ということ。
ええかっこしいで掲げられた理念の下で、振り回される専門職。
そのことが、利用者様に対して多大なリスクを負わせることになる。
それを打開する方法。
それを解毒するための方法は「各専門職の専任の徹底」。
各専門職が一個人を尊重し、それぞれの仕事に対して互いに理解し、
職権を侵されることなく、自信を持って自分のすべきことを行っていくことで
入所者や利用者の安全・安心がしっかりと担保され、利用者様や家族様との信頼関係も深まる
と、言うことでした。
志高く、日々、高齢者介護に懸命に取り組んでいる職員たちがいます。
そういった人たちによって施設や事業所は成り立つのだと、私は思うんです。
すべては今、目の前におられる入居者、利用者。そして、それを支える家族。
双方の、笑顔多く、穏やかな暮らしの継続のために。
この想いを忘れずに、今後も業界の表と裏をしっかりと見極め、私は物申していきます。
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