
気がつけば、液晶の光を待ってる私がいる——
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS

毎回、一つの楽曲を徹底考察し、あなたの心に癒しと力をお届けする本シリーズ。
今回は、吉本おじさん feat. 雨衣さんの楽曲「お返事まだカナ?おじさん構文!」を取り上げます。
▶はじめに

「最初に聴いたとき、思わず『キモっ!』と口に出た。
でも、ふとスマホのトーク画面を見返して『……あれ、私も似たようなことしてない?』とドキリとしてしまった」。
この楽曲には、そんな“誰もがどこかに持っている”コミュニケーションの痛点を、ユーモアたっぷりに、そしてちょっぴり切なく描き出す力があります。
この記事では、楽曲のイメージや歌詞の意味を丁寧に読み解きながら、伝えたい想いの本質に迫っていきます。
どうぞ最後までお付き合いください。
▶「おじさん構文」とは?

例えば、こんな感じの文章です。
「おはよう😊今日も1日がんばろうネ❗️💪」
「この前のカフェ☕️、楽しかったナァ。また行けたらいいナ🥺」
絵文字だらけで、語尾がカタカナ。
どこかズレたテンションと“距離感バグ”が特徴。これが「おじさん構文」です。
Z世代からはネタとして親しまれつつも、そこに潜む“うざい”“キモい”“空気読めない”といった本音の視線も、確かに存在します。
この楽曲は、そんな「おじさん構文」をテーマにしながらも、ただ茶化すのではなく、登場人物の心理と関係性の揺らぎを丁寧に描いていきます。
▶楽曲イメージ

雨衣さんのアンニュイでどこか無機質な歌声、そして軽やかに跳ねるようなシンセとミディアムテンポのビート。

聴き心地はまるで「チル」なのに、歌詞の内容はどこか不穏で、滑稽で、愛おしい。
このアンバランスさがクセになります
SNSという現代の“舞台”を音楽で切り取る手腕は見事で、まさに「現代風エモ」の完成形といえるでしょう。
▶歌詞の意味を徹底考察!

それでは、いよいよ歌詞考察に入ります。
物語は、とあるSNS上での「おじさん」と「若い女の子」のやり取りから始まります。
コミカルでありながらも、どことなく哀愁が漂うストーリーを丁寧に紐解いていきましょう。
※JASRAC管理楽曲のため、すべての歌詞は掲載していません。詳しく知りたい方は、以下のリンクからご確認ください。
おっおー お返事まだカナ?
おっおー おじさんじゃ駄目カナ?
おっおー お寿司食べたヨ!
ういチャン今日もかわいいネ!大好き!ナンチャンテ(笑)
おっおー おやすみのチュッ!

おじさんは一所懸命、言葉を尽くして女の子と“お近づき”になろうとします。
丁寧すぎる敬語、ぎこちない絵文字、そしてテンション高めのコメントが続きます。(ある意味、鋼のハートの持ち主ですよね…)
まだまだです 忙しいです(仕事中です)
全身鏡をお届けします
まだまだです やかましいです
死ぬ程興味無いです
最初はやや警戒し、返事の口調も直球に。“ほんとキモいんだけど”といった心情を隠しもしない感じが見て取れます。
愛を言葉にできるのは 才能かもです
二度とは見れないキモさが 逆にエモいです
恋を絵文字にできるのも 才能かもです
無視さえ無視するキツさが 逆にチルいです
しばらくやり取りを続ける中で状況は少しずつ変化。
女の子は次第にそのやり取りを「ちょっとおもしろい」と感じ始めます。

純粋にコミュニケーションを楽しんでいるように見えるおじさんの姿に、エモさやチルさすら感じ、むしろリスペクトに近い感情を抱き始めるのです。
しかし——。
おっおー おっぱいおっきいネ!
はい ブロック完了
調子に乗ったおじさんが、ある日、距離を一気に詰めようと“あの一線”を越えてしまいます。

女の子がこれまで許容してきた“ズレ”が、急に耐えがたい“気持ち悪さ”へと変わった瞬間。
ラストに訪れる「ブロック」という冷酷な結末は、まさに“ごもっとも”なものなのです。
一見笑える歌詞の中に、承認欲求や孤独、そしてコミュニケーションの難しさがにじんでいて、誰もがどこかに心当たりのある、そんな物語となっています。
▶Z世代とのSNSでの向き合い方

この楽曲は「おじさん」だけの物語ではありません。
歌詞の中にある「鏡」を用いて言うと、若い人においても「合わせ鏡」になっているように感じます。
- 「おじさん側」だけではなく「若い側」だって、無意識に似たような“言葉の押しつけ”をしていないか?
- 「ウケを狙ってるつもり」が「ズレた構文」になっていないか?

年齢や立場に関係なく、誰もがSNSという空間の中で「距離の詰め方」と「言葉の届け方」を模索している時代。
そんな今だからこそ、この楽曲は「世代間を越えた人間関係の鏡」として機能しているのではないでしょうか。
筆者はそんな風に感じます。
▶まとめ

今回は、吉本おじさん feat. 雨衣さんの楽曲「お返事まだカナ?おじさん構文!」を徹底考察しました。
「お返事まだカナ?おじさん構文!」は、ユーモラスなだけでなく、どこか心にチクリと刺さる一曲です。
他人事のように笑っていたはずが、気づけばスマホのトーク画面を見返し、自分自身の言葉遣いに思わず赤面——。
言葉の温度や距離感に、これまで以上に敏感になった今、「誰かとつながりたい」という思いが、時に過剰になり、そしてすれ違う。
この歌は、そんな私たちに「言葉の向こうにいる相手を想像すること」の大切さを、そっと教えてくれているのかもしれません。

音楽は、聴くたびに新しい発見をくれます。
自分の気持ちを構文化するのではなく、純粋で素直な感情に、“節度”という名のスパイスを加え、日々のコミュニケーションを楽しめるようになると良いのではないでしょうか。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも多くの楽曲を考察しています。
そちらもぜひ、ご覧くださいね。
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