今回の【実録】介護の本質chからお送りするのは
【介護の基本】「排せつ介助」の本質をしっかり押さえた介護技術
先日、このような情報をみました。
ある日突然、あなたの大切な人が
病や事故によって介護が必要な状態になったら…
こんなこと、あなたは考えたことがありますか?
若い頃であればあまり実感が沸かないことでしょうが
年齢を重ねてくると、こう言った不安は
イヤでも頭のどこかに浮かんでくるものですよね…
私のように福祉業界での仕事をしていると、いざという時にはその経験がありますし
それをする上で必要な資格も持っていますから、突発的なことでもなんとかなるんですが
介護の経験が全くない人であれば、動揺や不安は計り知れないものだと考えます。
しかも「やったことのないもの」ですから
何をどうしたらいいのか分からないのは当然のことであり
ましてやそれが自分の親であれば、なおのこと余計な気を遣ってしまう。
では、他人であれば?
勝手も分からないのにもっと無理ですよね…
実際に、とあるデータでは40代、50代の子どもが親の介護の準備をするにあたって大切なこととして99.6%もの人が「介護に対する心の準備」を挙げているほどですから、事態は切迫しているとも言えますよね…
時節柄もあって「何が起きてもおかしくはない」ですから
こういったことへの知識と知恵を持っておくと安心だと考えます。
そこで今回から3回に亘って
「介護の基本」として誰もが知っている「3大介護」
(排せつ介助、入浴介助、食事介助)について
その本質をしっかり押さえた介護技術についてお伝えします。
この記事では、介護未経験の人から介護福祉士の資格取得を目標としている人まで
幅広く「自己研鑽」を行える意味合いから、本質を押さえた介護技術をお伝えしていきます。
第1回は、「排せつ介助」についてです。
「3大介護」と呼ばれるものの中で
最も神経を遣わなければいけないのが「排せつ介助」になります。
なぜなのか?
理由は2つあります。
- 排せつされるものや動作から、その人のリアルな身体の状態を知るきっかけになるから
- 「見られたくないものを見せなければいけない」という心の状態を理解することが大切だから
と言うことです。
お伝えする内容としては
- そもそも「排せつ介助」とは何か?
- 上手に排せつ介助をするためのコツと手順
- 気をつけなければいけない排せつ介助の注意点
- ここまでやれば完璧!排せつ介助は「状態確認」までが介助です!
これらをしっかりと押さえておくことで
真の基本がマスターできますので、どうぞ最後までご覧ください。
それでは始めていきましょう!
そもそも「排せつ介助」とは何か?
排せつ介助とは言っても「そもそも論」として、どんなことを言うのか?
ある程度は分かっているにしても、実際のところはどうなのか?
分かりやすく噛み砕いて考えていきましょう。
排せつと言うのは?
ウンチやおしっこをすることですよね。
その介助ということになると?
ウンチやおしっこをすることをお手伝いする。 と言うことなのは、言葉からも分かりますよね。
昔の言い方で簡単に言うと「下の世話(しものせわ)」。
トイレなどが上手くできない人に
上手くできるようにお手伝いをする。
もっとわかりやすく言うと
ウンチやおしっこが出にくかったり
した後の始末が上手くできない人のお手伝いをする ということになります。
私たちに置き換えて考えてみましょう。
排せつが上手くいかない時って、ものすごく憂鬱な気持ちになりませんか?
特に女性の方であれば、何日も思うようにお通じが出なかったりしたら、そのことだけでもイライラしてしまって、心の状態もあまり好ましくないのではないでしょうか。
また「出そうなのに出ない…」、「出たけど、まだスッキリしない…」と言った状態であれば、なんとも落ち着かないですよね…
反対に、たくさん出てしまうことや間に合わずに汚してしまったりすることなどがあったら、時間が経つと不潔になってしまいます…
心と身体の状態をしっかりと観て、排せつしやすい環境を作っていく
デリケートな部分なので、不潔にならないようにしっかりときれいにする
これが「排せつ介助」ということになります。
上手に排せつ介助をするために必要なことは?コツや手順もお伝えします!
排せつ介助の意味が分かったところで、次はそれを頭に入れながら
上手に排せつ介助を行うために必要なことをお伝えします。
上手に排せつ介助をするために必要なこと。
どんなことが頭に浮かびますか?
よく言われるのが「手際よくすること」、「時間を決めて声かけをすること」です。
実際、施設などでは「トイレ介助の仕方」や「漏れないおむつの充て方」などを先輩職員から学んだりしますし、朝6時半、9時、11時、13時、16時などといったように、時間を決めて排せつ介助をしているところが多いですし、お家で介護をする際でも、こういったことは往々にして起こり得るものですよね。
「手際よくすること」については、後でお話することにして、
「時間を決めて声かけをすること」について、よく考えてみてください。
他人が決めた時間に排せつする人って、います?
決まった時間に排せつしている人って、います?
排せつする時間って、人によってまちまちですし、あなたがトイレに行きたくても、私は行かなくても大丈夫な時ってありますよね。
ということは、上手に排せつ介助をするための一番のコツって何か分かりますか?
難しく考えなくていいですし、今、分からなくても大丈夫ですから、なんでもいいので1つ答えを頭の中に思い浮かべてみてください。
頭に浮かびましたか?
では、答えをいいますね。 答えは…
排せつするサイクルを知ること です。
特にトイレで用を足すことができる人については
普段、トイレに向かわれる時間をしっかりと分かっておく必要があります。
とある施設での様子を例としてお話しますね。
この後、あなたにもう1つ質問をしますので、よく憶えておいてください。
高齢者のAさんは、日中10時過ぎと12時前、14時半頃と18時過ぎにトイレに向かわれますが、どの時間も排せつ介助をする時には、既に下着やリハビリパンツ(紙製のパンツ)は汚れてしまっています。 とある日の12時前、いつものようにAさんがトイレに向かわれました。 あなたはAさんの耳元で「おトイレですか?少しお手伝いしましょうか?」と声をかけると、Aさんは「そう?じゃあお願いします」と返され、トイレで介助を行うことになりました。 Aさんのズボンと下着を下ろし、便座に座っていただきましたが、既に下着は汚れていました… お下をきれいに拭き、新しい下着とリハビリパンツを穿いていただき「きれいになりましたよ」と声かけすると、Aさんは嬉しそうに「ありがとう」と返されました。
では、質問します。
あなたがAさんを、次に排せつ介助する時間は、何時頃になりますか?
「え?! 14時半頃じゃないの? そう書いてあるじゃない?」
いえ、違います。
細かい話ですけど
「いつもトイレに向かわれる時間の10分程度前」になります。
どうしてか?
先程の章でお伝えした中にありましたね。
「不潔にならないようにすること」
「見られたくないものを見せなければならない」という気持ちを理解すること
「汚してしまったものをきれいにすること」は、誰にでもできることです。
でも「汚さないようにすること」って
あなたとAさん、どっちに対しての思いなのかと考えた時、いかがでしょう?
「汚されては困るから」との思いが先に来ていたら、その時点でアウトです。
なぜなら「(汚されたら後の始末が面倒になるから)少し早めに声をかける」という思いになってしまうからです。
「汚してしまうことでAさんに不快な思いをさせてしまう」からこそ
「少し早めに声をかける」につながるんじゃないですか?
これはオムツを使用している人においても同じことが言えます。
いや、もっとしっかりとサイクルを知らないといけないでしょうね。
考えてみてください。
ただでさえ排せつする体勢とは違う状態なのに
決まった時間にオムツを交換するとした時
その時出ていなかったら、次の時間までそのまま放っておきますか?
先程の施設での排せつ介助の時間を当てはめてみると
例えば13時のオムツ交換(排せつ介助)の時にウンチやおしっこが出ていなかったので
次は16時に交換すればいい…になりますよね。
このことは、介護保険制度が始まる前までの施設の排せつ介助「あるある」の一つでした。
その当時からも言われていたことですが
「出ていないことを確認した5分後に出た」場合であっても
そのまま16時までスルーするんですか?
この場合であれば「こまめにお部屋を訪問して声かけをする」ことがいいですよね(^-^)
一番のコツである「排せつのサイクルを知る」ことができれば
この2つのことを押さえることで、もう8割以上上手に排せつ介助ができます。
ここまでお伝えして、ここからはその手順についてタイプ別にまとめておきますね。
まずはトイレで排せつをされる人については、後の手順はこうなります(^-^)
トイレで排せつされる人においての介助の手順
- 身体の状態を聴いて、トイレまでお連れする
- ドアを閉め、トイレでの動作(ズボンを下すことや便座に座ること)をお手伝いする
- 上手く座れない人や落ち着かない人を除いてドアを閉め、様子を観る
- 排せつが済んだかを声かけで確認し、中に入って排せつされたものを目で観て確認する
- お下をきれいに拭くお手伝いをして、汚れたものを交換して衣服を整える
- 介助の時の声かけは最小限に(「スッキリしましたか?」程度で十分です)
次に、オムツを使用している人については、後の手順はこうなります(^-^)
オムツを使用している人においての介助の手順
- 身体の状態を聴いてからカーテンなどを閉めて周りに配慮し、交換に必要な部分のみ開ける
- 排せつの途中の場合は「お腹に力を入れるとかで、自分で出せますか?」と伺い、自力で出せそうになければお手伝いする
- 排せつが済んだことを声かけで確認してから、排せつされたものを目で観て確認する
- お下をきれいに拭いて新しいオムツを宛がい、衣服を整える(汚れがひどい時はぬるめのお湯をペットボトルなどに入れたものを用意して洗い流す)
- 介助の時の声かけは最小限に(「スッキリしましたか?」程度で十分です)
と言うことになります(^_-)-☆
こう言ったことからも「介護なんて誰にでもできる」ものではないことが解ってもらえると思いますが、ある意味「これができるようになれば不安なく介護ができる」ということになりますよね。
気をつけなければいけない排せつ介助の注意点
私、先程の章の冒頭で
上手に排せつ介助をするためには
「手際よくすること」という話を後でする と言いましたね。
なぜ、ここでお話することにしたのか?
排せつ介助をする上で、気をつけないといけない部分があるからです。
それは何なのか?
技術よりも思いを理解することを先にする ということなんです。
平たくいうと「手先の技術ばかりを先に身につけてはいけない」ということです。
何かさっきまで言ってたことと「ちぐはぐ」になっていませんか?
そう思っているあなた。
これを知ることで、ある意味排せつ介助は完ぺきに近い形でできるようになりますから
話を最後まで聞いてくださいね(^-^)
「手際よくすること」という言葉の意味を考えてみてください。
それは、誰に対しての思いが先にありますか?
「介護される人に不快な思いをさせてはいけない」との思いが先にあればいいんですが
「早くしないと他の物事が捗らない」なんて思いが先に来たら
もう本末転倒です。
おそらくそんな思いで介助をしたとしたら
お下には汚れが残ったままになっていたりなどして、余計に不快な思いをさせてしまいます…(>_<)
「手際よくすること」とは「早くすること」ではありません。
「見られたくないものを見せなければいけない」という気持ちを理解して
「不快な思いをさせてはいけない」という思いを先に立てて
ゆっくりであっても確実に、丁寧に介助をしていくこと。
これが「手際よくすること」になります。
ですから、いくら「私は誰よりも早くオムツを巻くことができる!」と言っても
その中に「介護される人の気持ちを理解する」ことが抜け落ちてしまっていたらいけないんです。
排せつ介助をする上で、気をつけないといけない注意点とは
技術より先に、思いを理解することから始める です。
オムツの正しい充て方や失敗しないトイレ誘導の手順など
学校やテキストなどにしっかりと書いている技術だけを憶えて
実践して身につけていくと何が起こるか?
手先にばかり目が行き、早くする技術に溺れてしまって
介護される人の気持ちを蔑ろにしてしまう危険があるんです。
何よりもまず「思いを理解すること」から始まります。
そこからゆっくりであっても確実に、丁寧に介助をしていくこと。
「手際よくすること」でしたよね(^-^)
それに先程お伝えした「排せつのサイクルを知ること」ができるようになったら
不安なく自信を持って排せつのお手伝いができるようになっています(^.^)
技術なんて、すべての人に当てはまるのものではありません。
誰一人として同じ人間はいないんですから、それぞれ対応は違ってきます。
コツと手順を憶えてしまえば、いくらでも応用は利きますからね(^.^)
ここまでやれば完璧!排せつ介助は「状態確認」までが介助です!
トイレでの介助、ベッドでのオムツ交換の介助ができるようになったあなた。
ここまでできればもう安心!
と思っているかもしれませんが、これで介助が終わった訳ではありません。
排せつ介助をする時に気をつけたいこととして大切になることがあと1つあります。
それは「排せつされたものを確認すること」です(^-^)
これは介護される人のその日の体調を知る上で重要になってきます。
「ただ、見るだけでいいの?」って思ったあなた。
「見る」ではなくて「確認する」です。
「でも…どうやればいいのか分からない」
そう思っているあなたへ。
排せつされたものについてのチェックポイントをまとめておきますので
参考にしてみてください。
排せつされたもののチェックポイント<おしっこの場合>
- 量…1回のおしっこの量は、平均200~400cc。1日1500㏄が目安です
- 色…透明な場合や薄い場合は問題ありません。朝一番を除いて日中のおしっこの色が濃い場合は水分不足や脱水が考えられます
- 臭い…臭いが強いほど病気の兆候があります。ちなみに「強いアンモニア臭」の場合は膀胱炎。「甘酸っぱい臭い」の場合は糖尿病が考えられます
排せつされたもののチェックポイント<ウンチの場合>
- 量…人によって様々ですけど、1日平均200gです
- 形状…硬いか軟らかいか。水分の多いものか少ないものか。消化されているかいないかなど
- 色…黄色から茶色がベター。赤や黒色ならば要注意です
- 臭い…黄色に近いほど臭いは弱いです。食べ物によりますが、肉食であったりすると臭いが強いです。また、女性の場合に多い便秘が続いた後に出るウンチも臭いが強いです
気をつけたいのは
確認するからと言って、排せつされたものをマジマジと凝視しなくてもいいです(^-^;
あくまでも目安として憶えておくことで
体調変化などに早く気づくことができますから
押さえておいてくださいね。
まとめ
今回は
【介護の基本】「排せつ介助」の本質をしっかり押さえた介護技術
についてお伝えしました。
「私の思いを分かってほしい」
様々な場面でよく耳にするフレーズの1つですけど
排せつ介助をする時には、この言葉が「原点」になります。
排せつすることは、ある意味すべてをさらけ出してしまうことでもあるので
恥ずかしいと感じるのは当たり前のことです…
ましてや漏らしたりなど、失敗したりしたら情けない気持ちでいっぱいになってしまいますよね。
だからこそ「技術より先に思いを理解する」って重要なことなんです(^.^)
一つ一つしっかりとマスターしていけば
それが「経験」になる訳ですから
自信を持ってやってみてくださいね。
次回は「入浴介助」についてを予定していますので
次回もどうぞご覧ください!
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