【バレンタイン/感動エピソード】
はじめてのバレンタイン
筆者がこれまでの人生の歩みの中で
想い出に残るバレンタインのエピソードをお伝えする内容です。
あなたの想い出とともに、どうぞご覧くださいね。
はじめてのバレンタイン第1章:バレンタインって?
私が小学2年生の頃。
学年最後の授業参観が間近にあり
毎日音読など「生活発表会」の練習を頑張っていた
そんなある日。
学校へ行く準備をしていると
綺麗に包装された「小さな箱」を手に
嬉しそうにしている姉を見た私は声をかけた。
しょうらく:「おねえちゃん?それ、なあに?」
姉 :「これ?チョコレートだけど」
しょうらく:「チョコレート⁈ほしい!ちょうだ~い」
姉 :「ダメダメ。このチョコは好きな男の子にあげるの」
しょうらく:「ぼくのじゃないの?」
姉 :「しょうちゃん?もうすぐ2月14日でしょう?2月14日は『バレンタインデー』といって、女の子が好きな男の子にチョコをプレゼントして「あなたのことが好きです」って告白する日なの」
しょうらく:「ふ~ん」
姉 :「しょうちゃんも、女の子からチョコレートをもらえるかもしれないよ」
しょうらく:「ほんと?」
母 :「ちょっとちょっと!何してんの?学校に遅れるわよ」
姉との話は、ここで終わった。
「そうかぁ。『女の子からチョコをもらえる』んだぁ」
とウキウキしながら学校へ。
「でも…」昼休みに私は考えた。
「ぼくのことを好きな女の子って、だれだろう。チョコをくれそうな女の子いるかなぁ」
その日1日考えたが、結論は。
「…いないなぁ」
はじめてのバレンタイン第2章:約束
家に帰ると、母が「しょうちゃん。ちょっとおつかい行って来てくれる?」と。
母から200円をもらい、
「これでニンジンとじゃがいもを買って来てちょうだい。おつりは「お駄賃」ね」
「は~い!」
当時まだ自転車に乗れなかった私は
歩いて10分ぐらいのところにある「八百屋さん」へ。
にんじんとじゃがいもを買って、おつりは30円。
「おかし買おう!」
その店から歩いて5分のところにある「平木商店」へ直行!
「平木商店」は、優しいおばあちゃんが1人でお店をやっている「駄菓子屋さん」
当時の私の、いわば「いきつけ」のお店であった。
しょうらく:「おばあちゃん。こんにちは」
平 木 :「いらっしゃい。あら、しょうちゃんかい。おつかいかい?」
しょうらく:「うん!そう!お駄賃もらったから、チョコを買いに来たの」
平 木 :「そうかい。じゃあ、いつものチョコ3つだね」
しょうらく:「ありがとう」
このお店に来るといつも私は「10円チョコ」を買って帰るのを
おばあちゃんもよく分かってくれていた。
しょうらく:「ねえねえ。おばあちゃん。『バレンタインデー』って知ってる?」
平 木 :「ああ、知ってるよ。しょうちゃんは、チョコをもらえそうなのかい?」
しょうらく:「もらえないよ」
平 木 :「あら?どうしてだい?」
しょうらく:「すきな子いないもん」
平 木 :「そう…。だったら、おばあちゃんがしょうちゃんに『バレンタインチョコ』をあげようかねぇ」
しょうらく:「ええっ!ほんと?」
平 木 :「本当だよ。どのチョコがいい?」
お店にはいっぱいチョコレートがある。
どれが欲しいかと言われても…
しょうらく:「ん~~っと。いつものでいいよ」
平 木 :「欲のない子だねぇ、しょうちゃんは。じゃあ。これにしようか」
おばあちゃんが指さしたのは、1枚の「板チョコ」
しょうらく:「こんなにおっきいの、くれるの?」
平 木 :「そうだよ。これを『バレンタインデー』に、しょうちゃんにプレゼントするからね」
しょうらく:「やったぁ!じゃあ『ゆびきりげんまん』!」
ゆびきりをした後、家に帰って母に報告!
母 :「そう!それはよかったね」
しょうらく:「うん!とってもうれしかったよ!」
母 :「でもね、しょうらく。人様からものをもらうってことは、その気持ちにお返しをしなければいけないんだ。今のお前がおばあちゃんから『チョコ』をもらって何かお返しできることってあるかい?」
しょうらく:「う~ん…」
おばあちゃんのために何ができるか。
考えてはみたが、答えが出なかった。
はじめてのバレンタイン最終章:やさしさとぬくもりをくれた人
しばらく経って、学校の帰りに「平木商店」の前を通ると
「しばらくお休みさせていただきます」の貼紙が。
「お休みなんだ…」
それは『バレンタインデー』の日も…
近所の人の話では
「おばあちゃんが体調を崩してしまい、お店ができない状態」らしいと母が私に話してくれた。
母 :「病気じゃ、しょうがないねぇ」
しょうらく:「でも、おばあちゃん、早く良くなってほしいね」
母 :「そうだねぇ」
しょうらく:「おかあさん。ぼく、おばあちゃんに『元気になってね』ってお手紙書く!」
母 :「そうかい?おばあちゃん喜ぶと思うよ」
しょうらく:「うん!」
私は一所懸命、おばあちゃんへお手紙を書いた。
『ぼくのチョコレート食べていいから、早く元気になってね。 しょうらくより 』
その時
♪ピンポ~ン
時間は夜の8時過ぎ。
こんな時間に、だれだろう?
私が玄関を開けると、そこには。
「おばあちゃん!」
「平木商店」のおばあちゃんが立っていた。
平 木 :「しょうちゃん。『バレンタインデー』おめでとう。はい、これ!約束の『チョコレート』だよ」
しょうらく:「おばあちゃん。病気じゃなかったの?大丈夫なの?」
母 :「何してんの?あら!平木さん。お身体大丈夫なんですか?」
平 木 :「ええ。でもだいぶ腰を悪くしたみたいで、しばらく入院することになったんです」
しょうらく:「入院するの?おばあちゃん」
平 木 :「大丈夫だよ。すぐに帰って来るから。またしょうちゃんにお店に来てもらわないとね」
母 :「じゃあ、この子にチョコを渡すために…」
平 木 :「子どもとの約束は果たしてやらないと。大好きなしょうちゃんとの約束ならなおさらだからね」
しょうらく:「ありがとう、おばあちゃん。あっ。ちょっと待ってね」
私は「おばあちゃんへの手紙」を取って戻り、「はい!おばあちゃんに」
平 木 :「お手紙かい?」
しょうらく:「うん!早く良くなってほしいから」
平 木 :「ありがとう。これもらったら腰の痛いのもどっかへ行っちゃったよ」
この2日後、おばあちゃんは入院した。
母と姉とで病院へ面会に行った時
おばあちゃんは、私の書いた手紙を大事に枕元に置いてくれていた。
私の「はじめてのバレンタイン」であった。
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