前回から【実録】介護の本質chでは
24時間テレビを考えると題してお送りしています。
今回は、その2回目。
ギャランティー問題やバラエティー化を当事者はどう考えているのか?
1978年、民間テレビ放送開始25年を記念して通常のテレビプログラムを24時間休止し、「今、テレビに何ができるか」を、みんなで一緒に考えて行くとのことでスタートした 「24時間テレビ☆愛は地球を救う」
「24時間のチャリティー番組」として「日本の風物詩」となっているこの番組ですが、昭和から平成を経て令和に到るまでの間に、その本質が制作者・出演者、そして視聴者側との間で「疑念」が生じているように筆者は思っています。
その「疑念」というのが、大きく分けて2つ。
- ・番組出演者へのギャランティー問題
- ・福祉オンリーからバラエティー化した番組構成
ではないでしょうか。
この記事では、皆さんが疑念を抱いてやまないこの2つのことについて、当事者である番組制作者のお話や、番組出演者の方のコメントなどを交えながら、皆さんと一緒に徹底検証していきたいと考えますので、どうぞ最後までご覧ください。
それでは始めていきましょう!
これまでの活動内容から湧き立つ2つの疑念
先程お伝えした2つの疑念について
これまでの変遷を振り返りながら考えていきましょう。
福祉オンリーからバラエティー化した番組構成。本質はどこへ?
引用元-YouTube
24時間テレビの本質は「コンシャスネス・レイジング」と呼ばれるもの。
平たくいえば「多くの人々にまず、問題に気づいてもらう」ということでした。
このことは、過去の変遷においても分かる部分はあります。
一緒に見ていきましょう。
1978年からスタートした24時間テレビの歴代変遷は、このようになっています。
(24時間テレビのリンクを貼り付けておきます。必要な情報に飛ぶようになっていますので、今後のお話の理解を深める意味合いからも、ぜひご覧ください)
公益社団法人 24時間テレビチャリティー委員会
まず、本質の部分である「コンシャスネス・レイジング」についてですが
各回のテーマと視聴率とで見て行きたいと考えます。
第1回~第14回までの放送については
- ☆「寝たきり老人にお風呂を!身障者にリフト付きバスと車椅子を!」
- ☆「アジア・アフリカの飢えた子どもたちのために!次代に残そう平和と福祉」
- ☆「SAVE THE CHILDREN」
- ☆「君は地球のボランティア!お年寄りに在宅福祉を、障害者に社会参加を!」
などでお判りのようにテーマが明確に示されていますから
視聴者においても『この問題を解決へ導くために募金する』との意識付けが行える訳です。
平均視聴率は概ね10%前後であり、『問題提起⇒気づき』の公式については定着化したように考えられますが、第14回の放送において、視聴率が史上最低(6.6%)となったことで『マンネリ化』が声高となり、番組本体の企画を一新する形になりました。
このことは、ある意味
「昭和から平成へと時代が変化したことで、番組においても変革を余儀なくされた」
との考え方もできそうですね。
そして、第15回からは、福祉オンリーの内容から明確なコーナー割を行わず、様々な企画を盛り込むといった『楽しみながら募金する』形へと変化して行きました。
平均視聴率も15%を超え、より多くの人々が番組を視聴する結果となってはいますが、肝心の「コンシャスネス・レイジング」の部分については、15回以降のテーマが抽象化・漠然化が顕著になっています。
- 「いま、始めよう」
- 「生きる」
- 「告白~勇気を出して伝えよう~」
- 「想い~世界は、きっと変わる。」
- 「会いたい!」 ←2022年(第45回)のテーマ
などに表されるように
『一体何を訴えたいのか』が理解しづらくなっているように、筆者には思えます。
このことから、24時間テレビにおいて「私たちが何に気づくのか?」、「日本全国を24時間電波ジャックして、これ見よがしの大道芸や感動の押し売りをしているだけではないか?」といった疑念が湧き立っているように感じます。
善意の「募金」の裏に見え隠れする「ギャランティー」
次に、根幹の部分である「募金」についてお伝えします。
第1回放送から前回までの募金総額は、414億5,036万6,036円
2013年に公益社団法人となった「24時間テレビチャリティー委員会」の下で
- 福祉
- 環境
- 災害復興
3つの分野においてその募金を使用し、支援展開を行っています。
では、これまでに支援された内容についての概要はコチラです。
<募金の使い道> ※2020年度までのものです。
- <福祉分野において> 贈呈された福祉車両総数:11,404台。
- <環境分野において> 回収され、処理されたゴミの総量:約920トン。
- <災害復興において> 義援金として贈呈された金額の総額:2億4,469万9,235円
<義援金の内訳>
2017年の西日本豪雨災害、2018年の北海道胆振東部地震災害:1億7,969万9,235円。
2019年8月の佐賀県豪雨災害、10月の東日本台風災害、記録的豪雨災害:6,500万円。
これだけを見れば「明朗会計」ですよね。
毎年度「事業報告」、「決算報告」などもありますし
私たちの募金が何処に使われているのかが、はっきりとすることは良いと考えます。
ただ、どうしても皆さんの中で「腑に落ちない部分」があるのも分かります。
それはズバリ!「番組出演者へのギャランティー問題」ではないでしょうか。
それはおそらく頭の中で
「チャリティー=ボランティア=無償=奉仕活動」
との図式が成り立っているように思います。
以上の2つの疑念について、当事者であり番組の生みの親でもある都築忠彦氏が週刊文春のインタビューで話されている内容から言及されている部分がありますので、次の章で掘り下げていきますね。
疑念は解かれるのか?インタビュー内容から読み解く番組制作当事者の真意
果たして、疑念は解かれるのでしょうか?
インタビュー形式になっている記事の中で、一部を抜粋してご覧いただきます。
番組出演者へのギャランティーについての真意とは?
まず「番組出演者のギャランティー問題」に関する部分についてですが
インタビュアーからの質問は2つ。
- 番組出演者はノーギャラでやるべきだとの批判について、どのように考えているのか?
- 番組自体をやめて、全額寄付に回せという極論を唱える声については如何か?
まず1つ目の質問
番組出演者はノーギャラでやるべきだとの批判についての都築氏の答えはコチラ。
もしギャラを払わないということであれば、今の番組の形式そのものが成立しなくなってしまいます。別に、大スターだけがこの番組に出ているわけではないんです。 『24時間テレビ』での収入が大きな足しになる人だっていますし、出演者だけでなくスタッフもいますからね。 そこのところは、もっと現実的に考えてもらいたい。 現在のビジネスモデルをまず成立させて放送することが重要だと思います。 その上で、出演者が寄付をするのが合理的でしょう。 亡くなられた森光子さんは、当時そうしていました。
続いて、2つ目の質問
番組自体をやめて、全額寄付に回せという極論についての都築氏の答えはコチラ。
それでは『24時間テレビ』の原点であるコンシャスネス・レイジング、つまり問題をまず知ってもらうという大事な機能が失われてしまいます。 世の中には暴力や格差、差別といった問題がたくさんあるわけなんだけれども、そうした問題を解決するには、まず知ってもらわなければならないでしょう? そのためにコンシャスネス・レイジングは必要です。 もし日本テレビがやらずに『24時間テレビ』がやっていることを新しくやるとなると、人にも施設にも莫大な費用がかかって、それこそ寄付どころではなくなると思いますよ。 スポンサーを集めるためのテレビ番組なしで、しかもノウハウや信用もなしで出来ると思いますか? コンサル会社みたいなのが出てきて多額のお金を取られ、別の偽善が蔓延り、大赤字になると思いますよ。
途中からコンシャスネス・レイジングについても語られていましたが
皆さんはどのように捉えたでしょうかね?
確かに「24時間テレビ」は「一つの番組」であり
それを制作・企画・演出・放送する日本テレビ系列各局は「企業」です。
一つの番組を作るにあたっては、多くの企業などからの広告収入、協賛や資金提供などを要する訳であり、これは言ってみれば一般企業においても行っていることですよね。
と言うことは「お仕事の対価として、ギャランティー(報酬)が発生するのは当然」ということでしょうか。
「仕事をして報酬をもらって、その中から生活できるお金を除いて、余裕のある分を募金する」って考え方であれば、腑に落ちる部分も少しはありますが、であれば「24時間テレビに参加しない方々の『参加しない理由』の答えになっていない」ように、筆者は感じます。
福祉オンリーからバラエティー化した番組構成についての真意とは?
今度の質問は、24時間テレビのターニングポイントとなった
1992年以降の番組構成やテーマ設定に関する質問です。
今までの報道・福祉オンリーの内容からバラエティー路線への大改革を行い、今や名物となった24時間マラソンも始まりましたが、この改革をどう見ているのか?
奇しくも私が疑念を抱く内容についての質問ですが、都築氏の答えはコチラです。
素晴らしいことだと思いますよ。 今、『24時間テレビ』って、みんなグーグー寝ているような時間も含めて(24時間を)通して平均18%、19%(視聴率を)とっているでしょう? ゴールデンの番組でも、10%あるかないかという時代に。一種の怪物ですよね。 「今の『24時間テレビ』はバラエティー色が強すぎる」という声もあると聞きますが、視聴率があるということは、それだけの社会的なインパクトがあるということですから。 そこの基盤を失ってしまってはいけないと思うんです。
如何だったでしょうか?
「24時間テレビを続けて行く、続けなければならない意義」というものが、この部分で見え隠れしている感じがしますね。
放送を続けていくことでコンシャスネス・レイジングを担保するとの考え方は決して間違ってはいないと考えますが、「番組全体の企画編成を変えたことで、愛は地球を救うの本質部分が失われているのではないか」との疑念は否定できないのではないでしょうか。
このことが今、根強くある「疑念」であり
さらなる「疑念の肥大化」へとつながっていると筆者は考えます。
最も基本的な、いわば「【24時間テレビ☆愛は地球を救う】の本当の意味での『存在意義』なるもの」とは、前回お話した「大橋巨泉さんからのメッセージ」の中にも含まれていると思いますし、視聴率至上主義であるがゆえにその疑念は可視化され、既に今の日本社会の中にも広がっているように筆者は思うのです。
- 「何について語られているのか」
- 「何を問題として考えるのか」
- 「その先にあるものとは何なのか」
- そして、「私たちが考え、取り組むべきこととは何なのか」
これらを抽象的なテーマとしてぼやかし、良い方は悪いですが『走って、歌って、泣き笑い』の24時間のテレビ番組に委ねることで本当に良いのだとすれば、未来は際限なく閉ざされてしまうと筆者は考えます。
まとめ
24時間テレビを考える②
ギャランティー問題とバラエティー化を当事者はどう考えているのか?
と題してお伝えした今回。
お伝えした番組当事者の真意については様々な意見はあるでしょうが、これまであまり語られてこなかった部分なので、一定の理解はできたのではないでしょうか。
ただ、理解できても納得はできないといった思いが残るのは事実ですよね。
単なる24時間のバラエティー番組としての存続は誰も望んではいませんし、ただ単に募金することが番組を作ることではないと筆者は考えます。
かつて、番組の最後にテロップで映し出されていた
本当にこの番組を作ったのは、あなたです。
言い換えると「あなたが居なければ始まらない」になります。
自分の人生の主人公は、自分。
あなたの人生の主人公は、あなた。
「人」という字は、支え合っていると言うことを茶化す方々がいらっしゃいますが、それはその方々の「漢字の書き方」に問題があるわけであり、実際に「人」という字はよく見ると「シンメトリー(左右対称)」なのです。
人が生まれてから終焉を迎える直前まで
多かれ少なかれ誰かとつながりはあるのです。
支え合い、労り合う想い、そしてその言動。
それこそが何においても「原点」であり
「本質」なのではないでしょうか。
今一度原点に返り
本来のコンシャスネス・レイジングの役割を果たしてもらいたい。
筆者は切に願います。
次回はいよいよ3回目。最終回です。
番組に対する「感動ポルノ」との批判などについての都築氏の思いなどを踏まえながら、筆者からの「提言」を行ってまいりたいと考えますので、次回もどうぞお楽しみに!
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