
――“見せられない私”を抱えたまま、
生きていないふりをするのは、いつまで続くのだろう。
あなたには「自分の中にいる化け物」に気づきながら、
それを見て見ぬふりをした経験はありますか?

―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】
BRAND-NEW MUSIC DAYS
今回は、マカロニえんぴつの楽曲「化け物」を考察します。
▶はじめに

マカロニえんぴつが手がけた「化け物」は、
映画 『火喰鳥を、喰う』 の主題歌として書き下ろされた楽曲です。

映画の物語は、存在しないはずの“過去”が
家族の現在を侵食していくという不気味な世界観。
その空気感と呼応するように、
楽曲は“静”の繊細さと“動”の激しさが何度も入れ替わり、
リスナーの心を大きく揺さぶります。
この記事では、楽曲イメージやタイトル、歌詞から読み取れる
“内なる化け物”の正体を紐解きながら、
心の痛みと向き合うためのヒントを探っていきます。
▶楽曲「化け物」から筆者が感じた情景イメージ
初めてこの曲を聴いたとき、筆者の脳裏に浮かんだのは、
ノイズが走り、波形が乱れるバイオリズムのグラフでした。

・高い音が刺さるたびに脈が跳ねる
・低い音が沈むたびに心が落ち込む
・一定に整わない“生きづらさ”の波形
あなたにも、「気持ちの調子がガタガタで落ち着かない日」はありませんか?
この楽曲は、その“乱れた波形”にそっと寄り添いながら、
乱れの理由を一緒に探してくれているように感じます。
▶歌詞の意味を徹底考察!

ここからは、歌詞に込められたストーリーを丁寧に深掘りしていきます。
※本記事では、著作権等により、すべての歌詞は掲載していません。
歌詞の世界観を詳しく知りたい方は、音楽配信サービスや歌詞検索サイトでご確認ください。
歌詞全体を通して浮かび上がるのは、
自分の中に潜む“化け物=本音や弱さ”と向き合えない主人公の姿です。
- 「生きていない素振り」をする
- 「貝がらを集める子ども」のように過去に逃げる
- 誰かに“化け物(弱さ)を見せること”が怖くて、胸が痛む
- 眠れない夜、好かれたいだけなのに、どう生きても満たされない
主人公は、自分自身にキスをしながら、「kill me(殺して)」と呟きます。
これは“本当の自分を否定したい衝動”の象徴。
「ごめん」と続くのは、自分を傷つけてしまうことへの罪悪感でしょう。
そして、サビで繰り返されるのは、
どこが壊れても、だれに侵されても、心は涙を流せないようにできている。
という“麻痺した心”の告白。

つらいのに泣けず、壊れているのにまだ立っていようとする
――この矛盾が胸を締めつけます。
しかし、後半にかけて空気が変わり、
- 月に天使を添える
- ウイニング・ラン
- テレビジョンを売っぱらう
といった解放的なイメージが並びます。
これは
「他人の目(=テレビのモニター)を手放す=承認欲求から離れる」ことの
予兆のように見えるのではないでしょうか。
ラストでは、
醜いところまで全部見てほしい
でも痛む、ずっと痛む
どうして? と問い続けます。
主人公はまだ答えに辿り着いていませんが、
「化け物を見せる勇気」は確かに生まれている
――そんな物語になっています。
▶楽曲タイトル「化け物」が意味するものとは?――心の奥に棲む“火喰鳥”との対峙

「化け物」という言葉を耳にすると、
多くの人は外側から襲ってくる“脅威”をイメージします。
例えば、地球外生命体。
ジョーズのように巨大な生物。
ゴジラのように圧倒的な力を持つ存在……。
しかし、この楽曲の「化け物」は、
そうした“外敵”とはまったく異なる姿をしています。
むしろ、丁寧に歌詞を読み解いていくほどに見えてくるのは、
“自分の心の奥に潜んでいる影”こそが、この曲の化け物であるという事実です。

それは、醜さでも、愚かさでも、弱さでも、
誰もが心の中にひっそり抱えてきた“見せたくない部分”。

映画タイトルに登場する「火喰鳥」は、
世界でもっとも危険とされる実在の鳥。
そして “喰う” という行為は、
普通なら命を落とすほどのリスクを伴います。
しかし、物語の深層を探ると、
ここでいう「火喰鳥」とは異界の怪物ではなく、
人が生きていく中で避けられない“内なる怪物”そのもの
を指しているように思えるのです。
- みっともない嫉妬心
- うまくいかない自分への苛立ち
- 愛されたいのに素直に言えない弱さ
- 他人に見せられないコンプレックス
こうした感情は、時に“心を侵食する火喰鳥”となり、
主人公のように夜も眠れないほどの痛みを生み出します。
そして、この曲の主人公は逃げません。
「化け物を見せて?」と問いかけ、その痛みに向き合おうとする。
それは“倒す”のではなく
“飲み込む”という選択なのだと思います。

痛みを伴いながらも、
自分の弱さや歪さを抱えたまま前へ進む。
その姿勢こそが、映画タイトルの
「火喰鳥を、喰う」
という強烈なメタファーと呼応しています。
つまり、“化け物”とは、
外の敵ではなく、自分自身の中にいる“見たくなかった私”のこと。
そして“喰う”とは、
その弱さを否定するのでも、戦って捻じ伏せるのでもなく、
受け容れ、統合し、自分の一部として生きること。
弱さを飲み込むという行為は、
あなたが“変わりたい”と願っている証であり、
その痛みは、あなたが前に進もうとしているサインなのです。

この解釈に触れたとき、
痛みを抱えたまま生きる私たちに、
この曲がそっと寄り添っている理由が見えてきます。
心の中の“化け物”と向き合うのは苦しい。
でも、向き合った先にしか、自分らしさの再生は訪れない。
「化け物」というタイトルは、そんな人間の本質的なテーマ――
“自分を受け容れる勇気”を象徴する言葉なのだと感じます。
▶【メンタルエイド】的視点:この歌の、心への効用

この曲が効く痛みは、次のような心の状態です。
●「自分の弱さが怖い人」へ
化け物を“見せたら嫌われる”という恐怖は、多くの人が持っています。
でも歌は「見せてごらん?」と、小さな一歩を優しく促してくれます。
●「承認欲求で疲れ切ってしまった人」へ
“好かれたいために生まれたの?”と言ってしまうほどの苦しさ。
テレビを売る=他人の価値観を手放す、という解釈は、
あなたの心を軽くしてくれるはずです。
●「自分を責め続けてしまう人」へ
“I kiss me I kill me ごめん”という矛盾は、
「自分を愛したいのに、許せない」という心の形をそのまま映します。
曲を聴くことで、
その矛盾を“自分だけのものではない”と感じられ、
心の負荷が少しずつ、ゆっくりと溶けていきます。
▶まとめ

今回は、マカロニえんぴつの楽曲「化け物」を徹底考察しました。
マカロニえんぴつの「化け物」は、
“弱さを抱えたまま生きるあなた”を見捨てない歌 です。
化け物を抱えているから不幸なのではなく、
化け物を抱えながら「見せたい」と願うその心が、
すでにあなたを前へ進めています。
孤独で、苦しくて、自分が嫌いな夜。
どうかこの曲をそっと聴いてみてください。
あなたが抱える“化け物”が、
少しだけ言葉を話してくれるかもしれません。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にもマカロニえんぴつの楽曲を考察しています。
そちらもぜひ、ご覧くださいね。









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