――科学が解き明かせないもの。
それは、人の心の奥底に静かに息づく“真実”。
たとえ証拠やデータがすべてを物語っても、そこに映らない“想い”がある――
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS
毎回、一つの楽曲を徹底考察し、あなたの心に癒しと力をお届けするこのシリーズ。
今回は、“永ちゃん”こと矢沢永吉さんが28年ぶりに手がけたドラマ主題歌「真実」を取り上げます。
矢沢永吉さんの楽曲「真実」は、岩井圭也さん原作、藤木直人さん主演のCX系ドラマ「最後の鑑定人」の主題歌。
1997年の「ベストパートナー」以来“28年ぶりのドラマタイアップ曲”としても、大きな注目を集めています。
ドラマ「最後の鑑定人」とは?
かつて科捜研のエースとして活躍し“最後の鑑定人”と呼ばれていた主人公・土門誠(藤木直人さん)が、科学的アプローチを駆使して難事件を解決に導いていくサイエンスミステリー。
―公式サイトより
本記事では、楽曲イメージやタイトル、
そして歌詞の世界観を深掘りしながら、
ドラマの背景とともに、75歳を迎えた矢沢永吉さんがこの曲に託した想いをひもといていきます。
矢沢永吉さんが描く“真実”とは何か――
どうぞ最後まで、お付き合いください。
楽曲を初めて耳にした瞬間、筆者の脳裏に浮かんだのは、
「極寒の地で飲むマグカップのコーンスープ」という一枚のイメージでした。
冷たく張り詰めた空気の中、マグカップに注がれ立ち昇る湯気に感じる温もり――
それは、冷徹な現実と向き合う人の心に、じんわりと沁みわたる“一杯の優しさ”。
スローで優しいメロディライン。
そこに乗せられる矢沢永吉さんの歌声は、渋さの中にやわらかさを秘め、
“科学では割り切れない人間の感情”をそっと受けとめるように響いていく。
証拠や論理では測れない、“想い”や“後悔”や“赦し”。
そんなものが、マグカップのスープのように、胸の奥へゆっくりと染み込んでくる──
そんなイメージを抱いたのです。
それでは、いよいよ歌詞考察に入ります。
※本記事では、JASRAC管理楽曲のため、すべての歌詞は掲載していません。
歌詞の世界観を詳しく知りたい方は、
音楽配信サービスや歌詞検索サイトでご確認ください。
Love is true
ドラマのクライマックス、重なるセリフの切れ間にふっと浮かび上がったフレーズ。
矢沢永吉さんが静かに歌い上げる「Love is true」という言葉が、耳に残りました。
このフレーズ自体が、歌詞に込められた想いそのものではないか。
そう筆者は感じます。
「Love is true」。
直訳すれば、“愛こそが真実”。
それは、証拠や論理では語れない、人間の根源的な想いのことかもしれない。
仮にそうであれば、この楽曲「真実」が描くのは、
科学では立証できない“心の真実”なのではないでしょうか。
たとえ誰かが嘘をついていたとしても、
その裏にある愛の動機や、守ろうとしたものがあれば、
その“嘘”は“真実”に変わることがある――
そんな逆説的なテーマが、
このワンフレーズ「Love is true」に凝縮されているように筆者は感じました。
また、「Love is true」という英語の響き自体が、
彼のバラードとしては普遍的かつ説得力あるフレーズ。
長年、愛や人生を歌い続けてきた彼だからこそ言える、
シンプルでありながら深く、そして潔い“答え”なのかもしれません。
ドラマ『最後の鑑定人』の中で、主人公・土門誠はこう語ります。
「科学は嘘をつかない。いつだって嘘をつくのは人間だ。」
この言葉は、科学という絶対的な“物差し”と、
それとは対照的な、人間の弱さや葛藤を鮮烈に浮かび上がらせます。
押収された“物”や、遺された“痕跡”――
それらを鑑定することで、科学はたしかに真実へとたどり着く。
だが、その真実は決して万人にとって優しいものではない。
時にそれは、過去の罪を暴き、心を切り裂き、
癒えない傷を再び開かせることすらある。
それでもなお、“人は真実と向き合わなければ前に進めない”。
このドラマが描こうとするのは、そうした苦い真実との対峙であり、
彼が静かに歌う「Love is true」という一節には、
まさにその“つらくても、愛として受け容れる”覚悟が込められているように感じます。
“悲しい真実”も、“救われない真実”もある。
だが、それでもその先へ進むためには、
その「真実を受け止めること」=「愛すること」が必要なのだ。
それは恋愛の話ではない。
過去に起きたことを、過ちを、
自分自身をも、赦し、受け容れるという人間の再生の物語。
“Love is true”――
この一言は、人間の弱さに寄り添いながらも、
歩き出す強さを促す祈りのような言葉なのかもしれないと筆者は感じました。
メロディーや歌声を聴き込んだ時、
筆者は「Love is true」という言葉の裏側には、
もうひとつの“真実”があるように感じました。
それは、“Truth hurts”――真実は、ときに人を深く傷つけるという“現実”です。
ドラマ『最後の鑑定人』で描かれるのは、まさにその二面性であり、
その象徴として“真実”という言葉が存在しているのではないでしょうか。
科学の力で暴かれる「事実」は、決してすべての人を救うとは限らない。
過去の過ち、愛する人の嘘、消せない記憶――
それらを知った瞬間、心はズタズタになり、もう戻れない場所へと追いやられることすらある。
それでもなお、人は“知らなければ前に進めない”。
たとえどれほど苦しくても、
「本当のこと」と向き合うことにこそ、生きる意味が宿るのだ。
矢沢永吉さんの「真実」は、その両面を包み込むように静かに響いてきます。
「Love is true」とは、すなわち、
“痛みも悲しみも含めて、それでも愛していく”という覚悟。
それは、甘く美しい言葉ではない。
むしろ、痛みの先でしか得られない、深くて重い希望なのかもしれない。
そんな風に、筆者は感じました。
今回は、矢沢永吉さんの楽曲「真実」を徹底考察しました。
「真実」という言葉には、どこか冷たく、容赦のない響きがあります。
それは科学が導く“正しさ”であり、時に人を突き放す“事実”でもある。
しかし、矢沢永吉さんがこのバラードで描いた“真実”は、
もっと人間くさくて、優しくて、そして強いものだったのではないでしょうか。
たとえ苦しくても、悲しくても、
誰かを想ってついた嘘も、自分を守るための弱さも、
そのすべてを受け容れていく――
“痛みごと愛する”という行為こそが、真実なのだと。
「Love is true」という一言が、そう教えてくれている気がしてなりません。
この楽曲は、このフレーズだけ見れば“ただのラブソング”のように感じるかもしれませんが、決してそうではない。
もっと奥深い“人生そのものと向き合う者たちへの応援歌”だと筆者は考えます。
過去を赦し、真実と向き合い、それでもなお人を、自分を愛して生きていく。
そんな、人間の心の根幹に在る“強さと優しさ”を、
矢沢永吉さんは75歳の今、静かに歌い上げてくださいました。
彼が歌う「真実」は、聴く人の人生に寄り添い、
それぞれの心の中にある“譲れない想い”を、そっと肯定してくれるはずです。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも多くの楽曲を考察しています。
そちらもぜひ、ご覧くださいね。
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