――「離れない」と信じたい夜に。
あなたは、誰かの存在を“永遠”だと思いたくなったことがありますか?
人は、終わりを知っているからこそ、
今この瞬間を掴もうとして、時に不安になります。
Mrs.GREEN APPLEの「lulu.」は、
そんな“失うかもしれない怖さ”と共に生きる心に、
静かに寄り添う楽曲です。
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS
今回は、Mrs.GREEN APPLEの楽曲「lulu.」を考察します。
Mrs.GREEN APPLEの楽曲「lulu.」は、
2026年1月スタートのTVアニメ
「葬送のフリーレン Season2」主題歌として書き下ろされました。
穏やかで柔らかな旋律から始まり、
サビで一気に視界が開けるようなスケールへと広がる構成は、
“喪失を抱えながらも、なお前へ進もうとする意志”を
音そのものが語っているかのようです。
この記事では、トレンドや話題性としてではなく、
「この楽曲が、今を生きる私たちに何を差し出しているのか」
そのメッセージを、心の奥に触れる視点から読み解いていきます。
この曲を初めて聴いたとき、脳裏に浮かんだのは――
果てしない荒野に、静かに咲く一輪の花でした。
誰にも気づかれなくても、
強風に晒されても、
それでも“そこに在り続ける”命。
音数を抑えたAメロ、
そっと語りかけるような歌声、
そして感情が溢れる直前で踏みとどまるような旋律。
それはまるで、
「大丈夫だよ」と言いながら、
本当は自分自身に言い聞かせている声のようにも感じられます。
あなたも、この曲を聴きながら、
“守りたい何か”が浮かびませんでしたか?
「lulu.」が描いているのは、
離れゆくことを知りながらも、共に在ろうとする心の物語です。
この物語を生きる存在は、「終わり」が訪れることを、もう知っています。
だからこそ、その瞬間が来たとき、
どんな言葉を選べばいいのか分からない。
せめて、悲しくない形で。
せめて、温度だけは残るように。
かつて交わした言葉が、今も胸の奥で
痛みと同時に、確かな温かさを帯びて残っています。
「どこにも行かないよ」
そう言い聞かせるように繰り返しながら、
それが永遠ではないことも、心のどこかでは分かっている。
人は、知れば知るほど、
満たされるどころか、かえって何かを欲してしまう生き物です。
離れないと信じたい気持ちと、
失ってしまうかもしれない不安が、同時に存在してしまう。
それでも日常は続き、
カレンダーは淡々とめくられていく。
探しているものが、もし見つかってしまったら、
この時間が途切れてしまいそうで、
その答えを、鼻歌に隠してやり過ごす。
忘れていないのに、なぜか遠くなる存在。
視界から消えても、瞳の裏、心の奥底には、
いつもその人が居続けている。
やがて、その心に浮かぶのは、
「帰りたい場所がある」という想いです。
それは、単なる故郷ではありません。
地図に載る場所でもなく、
もう同じ形では戻れないかもしれない、
安心して存在できた時間そのもの。
あるいは、無条件で受け入れてくれた、大切な誰かの胸の内。
人は皆、この星に生まれ、
この大地を踏みしめて生きる存在です。
だからこそ、“帰りたい”と願ってしまう感覚も、
誰か特別な人だけのものではない。
それは、
生きている限り、誰もが抱いてしまう
根源的な郷愁なのかもしれません。
それでも、この物語は問い続けます。
もし、もう少し優しく在れたなら、何かは変わったのだろうか、と。
答えは出ません。
けれど、過去の思い出に包まれながら、
寂しさに涙する日があったとしても、
それを抱えたまま歩いていくことはできる。
なぜなら――
温かさは、この星に、大地に、
この胸の奥に、確かに残っているから。
物語を読み終えたあと、
ふと立ち止まって考えたくなるのが、
この楽曲のタイトルです。
「lulu.」
この短い言葉には、さまざまな言語圏で
“真珠”“愛しい人”“穏やかな輝き”といった意味が重ねられています。
けれど、この楽曲における「lulu.」は、
特定の誰かの名前というよりも、
失われつつあるのに、確かに心に残り続けるもの
その象徴のように感じられます。
強く主張するわけでもなく、大声で呼び止めるわけでもない。
それでも、ふとした瞬間に思い出してしまう存在――
それは、人かもしれません。
帰る場所かもしれません。
あるいは、
かつて無条件で世界を信じていた、
“やさしかった頃の自分自身”かもしれない。
真珠が、長い時間をかけて痛みの中から生まれるように、
「lulu.」もまた、喪失や不安を抱えながら育まれた
かけがえのない感情なのです。
「lulu.」は、
“喪失への不安”を抱える心に効く処方箋です。
誰かを大切に思ったからこそ、不安になった人。
離れゆくものを感じながら、それでも手放せずにいる人。
この楽曲が効くのは、そうした“揺れている心”です。
「大丈夫」と言いながら、本当は大丈夫じゃない夜。
優しく在れなかった自分を、ひとりで責めてしまう時間。
「lulu.」は、そんな心に対して、無理に前を向かせようとはせず、
そのままでいいと、そっと居場所を差し出してくれます。
悲しみが消えなくてもいい。
答えが出なくてもいい。
それでも、温かさが残っていることだけは確かだと教えてくれる。
彼らの音楽を“処方箋”とするなら、
「lulu.」は痛みを否定せず、抱えたまま歩くための処方です。
聴き終えたあと、
世界が劇的に変わるわけではないけれど、
胸の奥でこわばっていた何かが、少しだけ緩む。
その感覚こそが、
この楽曲が持つ、静かで確かな効用なのだと思います。
※この楽曲が描く“今”の祈りは、
物語の始まりで描かれた想いと、静かに繋がっています。
『葬送のフリーレン』という物語を、音楽の側から最初に照らした主題歌──
YOASOBI「勇者」の考察はこちら。
今回は、Mrs.GREEN APPLEの楽曲「lulu.」を考察しました。
人は、
失うことを知っているからこそ、
今を大切にしようとします。
うまく優しくなれなかった日も、
守れなかった約束も、
心の中に残り続けることがあります。
「lulu.」は、
そんな後悔や寂しさを抱えたままでも、
明日へ進んでいいのだと、静かに背中を支えてくれる歌です。
帰りたい場所が、
もう同じ形では存在しなくても。
それでも、温かさは確かに、あなたの中に残っている――
その記憶が、
その想いが、
いつか誰かを想う力に変わることを、
この楽曲は信じています。
どうか、心が少し疲れた夜に、
この曲を思い出してください。
「lulu.」は、
あなたが大切にしてきたものすべてをそっと肯定しながら、
明日へと繋いでくれる祈りなのです。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも様々なアーティストの楽曲を考察しています。
ぜひそちらもご覧ください。
あなたの“心のリアル”に寄り添う一曲が、きっと見つかるはずです。
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