――闇の中で灯る光。
その温もりを、誰よりも求めていたのは――
ほかならぬ”鬼”だったのかもしれない。
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS
毎回、一つの楽曲を徹底考察し、あなたの心に癒しと力をお届けする本シリーズ。
今回は、LiSAさんの楽曲「残酷な夜に輝け」を取り上げます。
2025年7月――
アニメ映画『劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章:猗窩座再来』が公開。
エンディングに流れたLiSAさんの歌声に、多くの観客が心を震わせました。
本記事では、
――これらを丁寧に読み解きながら、LiSAさんがこの曲で伝えようとしたメッセージに迫っていきます。
どうぞ最後までお付き合いください。
LiSAさんの「残酷な夜に輝け」を初めて耳にしたとき、
筆者の脳裏に浮かんだのは、“革命前夜”という不穏で張り詰めた空気感でした。
壮大なスケールを感じさせるドラマティックなサウンド、
そしてLiSAさんの力強くも切実な歌声。
その奥に重なる男声コーラスが、
時には勇壮な“叫び”として、時には悲愴な“呻き”として響き渡ります。
まるで、何かが始まる直前の、
抑えきれない衝動と哀しみが交錯するようなコントラスト――
それが、筆者に“革命前夜”という言葉を思い起こさせたのでしょう。
鳴り響くビートは、遠くで鳴る戦の太鼓のようにも聴こえ、
まさに”感情という名の戦場”へと、私たちを誘っているようです。
それでは、歌詞考察に入りましょう。
印象的な歌詞をピックアップし、丁寧に深掘りしていきますね。
※JASRAC管理楽曲のため、すべての歌詞は掲載していません。
詳しく知りたい方は、以下のリンクからご確認ください。
夜を超える僕らのうた
遠くまで響くように
憎しみより強い気持ち
探したんだ 手を伸ばして
闇の中で光るものは
小さく、だけどずっと側に
繋いだ心の証を
掲げて進む
これは鬼滅の物語全体に通底するテーマ、
「憎しみを超える感情」を指します。
鬼の存在理由は多くの場合“怒り”や“絶望”ですが、
人間が立ち向かう力は「愛」「希望」「共感」といった非暴力的な力です。
LiSAさんの楽曲における“うた”もまた、
「ただ倒す」のではなく“救い”を模索する姿勢が表れており、
このフレーズは“鬼殺”ではなく“救済”の意志の表明と捉えられます。
一方「繋いだ心の証」もまた、血縁や絆ではなく、
戦いの中で生まれた“共鳴”を意味していると考えられます。
義勇と炭治郎の関係や、煉獄と猗窩座の対峙の中にも、
ほんの一瞬でも“通じ合った心”の火種があったのではないでしょうか。
この楽曲は、そうした“通じ合いの可能性”に光を当てているようにも感じられます。
匂い立つ闇から生まれた
黒い願いの中に沈んでも
“闇”に“匂い”がある――これは明らかに異質な比喩です。
あえて「臭い」と言わず、「匂い立つ」としたことで、
“闇が何かを誘っている”ような妖艶さ、不気味さ、得体の知れなさが強調されます。
“匂い立つ闇”=過去のトラウマ、怒り、悲しみ、欲望……
そういった「人を沈ませる感情の深層」を意味しているのかもしれません。
猗窩座の“黒い願い”――
「強さ」への執着と破壊衝動――も
この「匂い立つ闇」から生まれたものと捉えると、辻褄が合うのではないでしょうか。
君の声が聞こえた
白く凍えた想いも痛みも
ずっと側に
憎しみより強いうたを
一人だって歌うけれど
とても遠くから聞こえる
君の声を信じてるんだ
>君の声が聞こえた
>君の声を信じてるんだ
この“君”は、明確に姿を描かれません。
ですが、それゆえに象徴的存在であると考えられます。
「とても遠くから聞こえる」という描写が、
死者からの呼びかけや、過去の記憶の再生にも感じられます。
よって、“君の声”は「希望の残響」なのではないかと筆者は感じました。
夢見ていたんだ
君が側にいて
懐かしい青空を見上げてた
生きていることは
美しいんだよ
それだけでいいよと 笑ってた
>懐かしい青空を見上げてた
>生きていることは美しいんだよ/それだけでいいよと笑ってた
このパートの純粋であたたかな描写は、
鬼滅の世界観の中では異質なほどに穏やかです。
だからこそ、多くのファンが「猗窩座の回想と重なる」と直感するのも頷けます。
彼が人間だった頃、父や慶蔵、恋雪と共に
「小さな幸福」を抱きながら生きていた時間。
「生きていることは美しい」――
これはまさに、失って初めて気づく命の尊さを歌った言葉。
ここに、LiSAさんが猗窩座というキャラクターに寄り添う視点が透けて見えるのです。
どこにも帰らない 明日へ
篝火を高く燃やすから
残酷な夜に輝け
>篝火を高く燃やすから/残酷な夜に輝け
“篝火”は、夜道を照らす小さな火――
でも、それは導きの灯でもあります。
この篝火は、楽曲の最後のフレーズ――
あと一歩だけ 一つだけ
夜を超えて 行け
――への布石となっています。
つまり、心の奥にある「小さな決意」や「まだ消えていない祈り」こそが、
残酷な夜を照らすための光であると読み取れるのです。
――光は大きくなくていい。
けれど、それを信じられるかどうかが未来を決める。
このメッセージが、「篝火」に込められているのではないでしょうか。
筆者は、そう感じます。
「残酷な夜に輝け」――
このタイトルには、二重の意味があると筆者は感じます。
ひとつは、“残酷”という現実に直面しながらも、なおも輝こうとする意志。
もうひとつは、過去や哀しみの象徴の中で、それでも灯り続ける“心の光”。
このタイトルが示すものとは、希望ではなく“覚悟”なのかもしれません。
そしてまた、その光が照らす覚悟こそが、“鬼の本心”なのかもしれません。
『無限城編 第一章:猗窩座再来』では、
猗窩座の過去が深く掘り下げられています。
失ったものへの悔恨、
救いを求めながらも救われなかった心――
この映画を見たあとに「残酷な夜に輝け」を聴くと、
彼の抱えていた“寂しさ”や“孤独”が、
曲全体を貫くテーマと見事に重なっていると気づくことでしょう。
楽曲は、彼の最期に寄り添う“鎮魂歌”として響いているのです。
今回は、LiSAさんの楽曲「残酷な夜に輝け」を徹底考察しました。
「残酷な夜に輝け」という楽曲を、
ただの劇場版主題歌として捉えてしまうのはあまりにも小さい。
それは、鬼となった者たちの
“失われた心”に寄り添う祈りであり、
闇の中にさえ微かに灯る
“本当の願い”をすくい上げるような壮大さを訴求する一曲だと感じます。
夜は残酷です。
過去の後悔も、叶わなかった夢も、
全てを沈めてしまうような深い闇。
けれどその中でなお輝こうとする“光”があるとすれば――
それは、「心を持つことを諦めなかった証」なのかもしれません。
LiSAさんの歌声は、
その光を見逃さず、そっと照らし出してくれます。
「残酷な夜に輝け」というメッセージが、
あなたの中の“まだ消えていない何か”をも
優しく照らしてくれることを願って――。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも“鬼滅の刃”関連の楽曲を考察しています。
そちらもぜひ、ご覧くださいね。
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