―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】
BRAND-NEW MUSIC DAYS
毎回、一つの楽曲を徹底考察し、あなたの心に癒しと力をお届けする本シリーズ。
今回は、ちゃんみなさんの楽曲「I hate this love song」を考察します!
「I hate this love song」は、住野よるさん原作、出口夏希さん・奥平大兼さん主演映画『か「」く「」し「」ご「」と「』の主題歌として書き下ろされたものです。
映画『か「」く「」し「」ご「」と「』とは?
“少しだけ人の気持ちが見えてしまう”という能力をそれぞれ隠し持つ5人の男女が織りなす、もどかしくも切ない日々を描く青春ラブストーリー。
そんなラブストーリーに寄り添うべく生まれたはずの主題歌のタイトルは、「I hate this love song(私は、このラブソングが嫌いだ)」。
一見、物語と相反するようにも思えるこのフレーズが意味するのは、一体何なのか?
この記事では、映画のテーマや楽曲イメージ、歌詞の意味を手がかりに、楽曲に込められた本質的な想いに迫っていきます。
どうぞ最後までお付き合いください。
音源から筆者が感じたイメージは、「誰もいない教室で時を刻む時計」でした。
勉強や部活、交友関係や恋愛など、いろんなことに悩みや不安を抱え、“なんとかしなければ!”と思うほど、やることが空回りし、もどかしさの中で時間だけが過ぎていく――
静かなメロディーと気だるい歌声を聴き込むほどに、そういったイメージが筆者には浮かんできました。
それでは、いよいよ歌詞考察に入ります。
この楽曲では、3つの印象的なフレーズを深掘りしながら、伝えたい想いの本質に迫っていきます。
※考察を進めるにあたり、歌詞の一部を引用しています。
※歌詞の全文を知りたい方は、以下のリンクからご確認ください。
ちゃんみな I really hate this love song
序盤では、こんなフレーズが登場します。
Boy you know it’s not fair(ねぇ、不公平だよね)
思わせぶりな態度のくせに、なにも言わない彼。
“好き”だと気づいた時には、もう戻れない場所にいた――
恋心が一方通行だとわかった瞬間、世界は少しだけ冷たくなる。
でも、終盤にはこんなふうに歌われます。
Girl you know it’s so fair(わかるでしょ? もうフェアなんだよ)
それは、心がようやく追いついた合図。
不器用で遠回りだったけれど、同じ想いが重なった瞬間です。
“not fair”と“so fair”――
この対比が描くのは、恋が「片思い」から「通じ合い」へと変わるまでの、儚くも美しい軌跡なのではないでしょうか。
中盤には、こんな切ない想いが込められています。
世界中の人が知っても
教えない あなただけには
誰よりも大切な人だからこそ、簡単には伝えられない。
それは、強がりの裏にある、一途な想いの証。
しかし、物語が進むにつれて、心情は変化します。
世界中がもう知ってるよ
くだらない話はもういいから
もう、隠しきれない。
言葉よりも先に、想いが溢れてしまったから。
このフレーズには、“恋すること”が“愛すること”へと移り変わる瞬間の、痛みと愛しさが同居しているのです。
クライマックスで歌われるのが、このフレーズ。
「2人の最後のかくしごと」
知りたいなら言ってもいいよ
But you and I 2人でせーの
この“かくしごと”とは、おそらく「好きだった」「ずっと忘れられなかった」といった、ラブソングでは語りきれない、真実の想いなのではないでしょうか。
「I hate this love song」と言っていた彼女が、最後には「あなたとなら言ってもいい」と思えるようになった――
それは、この想いが言葉だけでは終わらないほど、本気だった証拠です。
この3つの対比と変化が、「I hate this love song」というタイトルの裏にある本当は、誰よりも愛していた”という叫びを、静かに、でも確かに伝えてくれます。
この楽曲の印象と、映画のタイトルは深く結びついているように思えます。
まず注目したいのは、タイトルの不思議な表記――『か「」く「」し「」ご「」と「』。
一見、「かくしごと=隠し事」という言葉をバラバラにしたように見えますが、よく見ると最後の鍵括弧だけ“閉じられていない”のです。
この“開いたままの括弧”は、何を意味しているのでしょうか。
筆者は、これを「心の隙間」だと捉えました。
誰にも言えない秘密や想い。
でも、実は誰かに気づいてほしい――
だからほんの少しだけ、心の扉を開けておく。
そんな“言えないけど、気づいてほしい”というもどかしい感情。
それこそが、楽曲や映画の登場人物たちの本音なのかもしれません。
本記事のタイトルには、「お決まりのラブソングは、いらない」という副題を添えました。
これは、筆者がこの楽曲から『私たちの恋(愛)は、決してありきたりなラブソングでは計れない』というメッセージを感じ取ったためです。
縁あって出逢い、共に過ごす日々の中で繰り返される「共感」「共鳴」「誤解」「錯覚」。
それらが友情から恋に、さらには愛に発展するのか、あるいはすれ違いや仲違いを経て疎遠になっていくのかは分からない――
“どっちに転ぶか分からない想い”を、ある意味期待し(楽しみ)ながら関係性を深めていく。
そんな不安定で、でもかけがえのない「瞬間」の中で、“どんなラブソングにも描かれていない恋愛ストーリー”を、自分の心の中に――
そしてお互いの心の中に抱きながら、二度とない青春を謳歌していく。
「I hate this love song」は、そんな彼らの叫びを代弁するアンチテーゼであり、それと同時に、“本当に欲しかったラブソング”なのではないでしょうか。
今回は、ちゃんみなさんの楽曲「I hate this love song」を徹底考察しました。
「ラブソングが嫌い」――
そう言いながらも、その奥に確かに存在している「誰かを想う気持ち」。
「言わない/言えない」その理由は、決して“気持ちがないから”ではなく、むしろ“想いが強すぎるから”こそ言えないという場合もあるのかもしれません。
ちゃんみなさんの「I hate this love song」は、そんな心の奥底にある「叫ばない叫び」に静かに寄り添いながら、誰にも言えなかった想いに、そっと名前を与えてくれる――
そんな一曲なのかもしれません。
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