――”まやかし”の中で、さりげなく自分を表現できるようになれたら。
それが「ちょっとだけエスパー」の原点なのかもしれません。
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】
BRAND-NEW MUSIC DAYS
今回は、こっちのけんとさんの楽曲「わたくしごと」を考察します。
こっちのけんとさんの「わたくしごと」は、
2025年10月スタートのテレビ朝日系ドラマ
『ちょっとだけエスパー』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。
ドラマは、人生のどん底にいたサラリーマンが“少しだけエスパー”の力を得て、
世界を救う使命を託されるという、笑いと切なさが同居したヒューマンドラマ。
この物語の裏には、
「見えない誰かの痛みを感じ取る力」を持つことの尊さと、
同時に「感じ取ってしまう苦しさ」も描かれています。
そんな作品世界と響き合うように、「わたくしごと」は
“まっすぐに生きたい自分”と“素直になれない自分”との狭間で揺れる
心を描いたメッセージソングだと感じます。
この記事では、楽曲イメージやタイトル、歌詞の意味を丁寧に深掘りし、
この歌が伝えたいメッセージを紐解いていきます。
初めてこの曲を耳にした瞬間、
筆者の脳裏に浮かんだのは“ジョハリの窓”でした。
――「自分が知っている自分」「他人が知っている自分」、
そして「誰もが知っている自分」と「誰も知らない自分」。
こっちのけんとさんの歌声は、その境界線をやさしくなぞるように響きます。
あなたも、ふとした瞬間に“自分を客観的に見てしまう”ことはありませんか?
「これが本当の自分なのかな?」と、問いかけながら。
ここからは、歌詞に込められたストーリーを丁寧に深掘りしていきます。
※本記事では、著作権等により、すべての歌詞は掲載していません。
歌詞の世界観を詳しく知りたい方は、音楽配信サービスや歌詞検索サイトでご確認ください。
歌詞を読み解いていくと「わたくしごと」は、
“自分を守るためについた小さな嘘”
を描いているのではないかと考えられます。
それは誰かを欺くためではなく――
むしろ、優しさの裏返しのようなもの。
誰かのために生きようとするほど、自分の言葉がうまく出てこなくなる。
そんな不器用な愛の形が、この歌の中心に流れています。
歌詞全体を通して描かれているのは、
「本当は伝えたいのに、どうしても言葉にできない」もどかしさ。
そしてその裏側にある、“想いを抑える強さ”です。
歌詞の中で筆者が特に注目したのは、
「伝えたい気持ち」と「それをうまく言葉にできないもどかしさ」
この2つを対比的に描く部分です。
この表現は、心の揺らぎそのものを象徴しています。
伝えたいのに言えない――
その葛藤は、相手を思うあまり言葉を飲み込んでしまう、
繊細で誠実な優しさの現れともいえるでしょう。
ところが、楽曲の後半に進むにつれて、
その“言葉にできない思い”がひとつの輪のように結ばれていきます。
そこに感じられるのは、「自分のことばかり話す不公平さ」への戸惑い、
そして「これ以上話すと重く感じさせてしまうかもしれない」という
相手への思いやりです。
つまりこの楽曲は、
「伝えたい」と「抑えたい」の間で揺れる心を通して、
相手を想うがゆえの“愛の成熟”を描いた歌なのです。
伝えたい気持ちと抑えたい優しさ。
その相反する感情がひとつに溶け合うとき――
「わたくしごと」は、他者を思いやる愛の歌へと姿を変えるのです。
「わたくしごと」とは漢字で書けば「私事」。
一般的には“個人的なこと”を指しますが、
もう一つの意味として“隠しごと”という解釈もできます。
つまりこのタイトルは、
「誰にも言えない自分の心」そのものを象徴しているのではないでしょうか。
それは罪でも恥でもなく、誰もが抱える“静かな秘密”。
ドラマにおける「ちょっとだけエスパー」という設定も、
まさに“他人には言えない自分の力”を意味しています。
この二つが重なるとき、
「わたくしごと」は“本音を隠して生きる現代人の葛藤”という
普遍的なテーマへと昇華します。
孤独、喪失、再生、そしてアイデンティティ――
そのすべてが、この一言に凝縮されているように感じます。
「わたくしごと」は、“本音を隠してしまう人の心”に効く歌だと思います。
「優しくありたいのに、冷たくしてしまう」
「わかってほしいのに、黙ってしまう」
そんな矛盾を抱える人は、
決して弱いのではなく、
“感じ取る力が強い”人。
この楽曲は、
その“繊細さ”を否定せず、そっと包み込んでくれます。
聴いているうちに、硬く閉ざした心が少しずつ解けていく――
まるで、冬の朝に差し込む陽だまりのように。
音楽という名の“やさしいエスパー”が、
あなたの中の痛みに、そっと手を伸ばしてくれるのです。
今回は、こっちのけんとさんの楽曲「わたくしごと」を徹底考察しました。
「わたくしごと」は、
他人のために生きすぎて疲れた“あなた自身”を、
もう一度抱きしめるための歌です。
素直になれない夜、どうかこの曲をそっと流してみてください。
きっとあなたは気づくでしょう。
――隠してきた“わたくしごと”こそが、
実は、いちばんやさしい“ほんとうの自分”だったのだと。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも多くの楽曲を考察しています。
そちらもぜひ、ご覧くださいね。
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