泡のように浮かんでは消える感情。
それでも消えきらずに、何度も湧き上がってくる想いがある。
――何度も繰り返してしまうこの感情が、
いつか消えるとわかっていても、
それでも燃やしたいと願ったことはありますか。
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS
今回は、ヨルシカの楽曲「あぶく」を考察します。
日本の男女混成ロックバンド・ヨルシカが手がけた楽曲「あぶく」は、
2026年4月スタートのTVアニメ「ライアーゲーム」のオープニングテーマ曲。
ダークでスリリングなメロディーに、どこか気だるく絡みつくような歌声。
一見すると重く沈んだ印象を受けるものの、
聴き込むほどに不思議な爽快感が残る――
そんな奥行きを持った一曲です。
この記事では、この楽曲をトレンドやタイアップという文脈から切り離し、
ひとつの“音楽作品”として向き合うことで見えてくるメッセージを
【メンタルエイド】の視点から丁寧に紐解いていきます。
筆者が初めてこの楽曲に触れたとき、
脳裏に浮かんだのは――
“堂々巡り”という言葉でした。
水面に浮かんでは消える泡。
けれどその泡は、完全に消えきる前に、また次の泡が浮かび上がってくる。
終わったはずの感情が、また戻ってくる。
抜け出したはずの思考に、また引き戻される。
そんなループの中に、ずっと閉じ込められているような感覚。
そしてもう一つ、強く残ったのが――
“かなりしつこい”という印象でした。
旋律も、感情の揺れも、どこか同じ場所をなぞるように繰り返される。
一度浮かんだものが、すぐには消えず、何度も何度も浮上してくる。
それは決して不快なだけではなく、
むしろ耳に残り続ける“執着”のような感覚で――
まるで、抜け出せない思考そのものを
音として聴かされているような感覚でした。
あなたも、こんなふうに感じたことはありませんか?
考えなくていいはずのことを、何度も繰り返し考えてしまうあの瞬間を。
※本記事では、著作権等により、歌詞の引用は行っていません。
全文が気になる方は、歌詞検索サイトや音楽配信サービスでご確認ください。
情景イメージの“堂々巡り”や“しつこさ”の正体を紐解く鍵として、
歌詞に登場する印象的な言葉があります。
それが――「トートロジー(同語反復)」です。
トートロジーとは、同じ意味を繰り返すことで、そこから先へ進めなくなる構造。
つまりそれは、答えに辿り着けない思考のループを意味します。
この楽曲の主人公は、まさにそのループの中にいます。
自分の中に蠢く“獣”。
どうしようもない衝動や悲しみ。
それらは消えることなく、感情となって浮かび上がり、また沈んでいく。
まるで“あぶく”のように――
しかし、主人公はただ苦しみに沈んでいるわけではありません。
・喜びに火をつけたい
・燃え尽きないものを掬いたい
・自分を震わせたい
そんな願いが、繰り返し現れます。
ここで重要なのが、「想像」や「言葉」といった要素です。
それらは現実逃避ではなく、
抜け出せないループの中で、
自分を燃やし続けるための手段として機能している。
つまりこの楽曲は、
抜け出せない思考と感情の循環(トートロジー)の中で、
それでもなお、自分の内側に火を灯そうとする意志の物語なのです。
そして終盤では、燃え尽きたものさえも掬い上げようとする姿へと至る。
それは単なる反復ではなく、
何度でも立ち上がろうとする再生の意志を示しているように感じます。
「あぶく(泡)」とは、
生まれては消えていく、一瞬の存在です。
形を持ったかと思えば、すぐに弾けて消える。
そこに確かな輪郭はなく、残るものもない。
この楽曲における「あぶく」は、
一見すると感情や思考の儚さを象徴しているように思えます。
しかし本作の描写を辿ると、そこにはもう一つの側面が見えてきます。
泡は、何度も繰り返し浮かび上がるものでもある。
消えたはずの感情が、また浮かぶ。
終わったはずの苦しみが、また戻ってくる。
それはまさに、トートロジー的なループと重なります。
つまり「あぶく」とは、
消えていくものではなく、
“何度でも湧き上がってしまう心の動き”を象徴しているのではないでしょうか。
そして泡は、外から与えられるものではなく、内側から生まれるもの。
それは抑えきれない衝動であり、
消そうとしても消えない感情そのもの。
このタイトルには、
人が抱えてしまう“消せないもの”が、
静かに込められているように感じられます。
この楽曲は、心を軽くするための“優しい歌”ではありません。
むしろ、
「その苦しさから、逃げなくていい」と伝えてくる歌です。
だからこそ、こんな人の心に深く響きます。
「あぶく」は、問題の解決を与えてくれるわけではない代わりに、
その苦しさを否定しなくていいという許しを与えてくれます。
繰り返してしまう思考も、
消えない衝動も、
すべてそのままでいい。
むしろそれを、
と、この楽曲は語りかけてきます。
トートロジーのように巡り続ける心。
その中に閉じ込められるのではなく、
その中で燃え続けることも、一つの生き方だと教えてくれる――
それが、この曲の持つ“メンタルエイド”としての効用です。
今回は、ヨルシカの楽曲「あぶく」を考察しました。
「あぶく」は、
消えていく感情の儚さと、
それでも繰り返し湧き上がる心の動きを描いた楽曲です。
堂々巡りの思考。
しつこく戻ってくる感情。
抜け出せないトートロジーの中で、
それでも主人公は願い続けます。
――火を灯したい、と。
この曲が伝えているのは、
“抜け出すこと”だけが正解ではない、ということ。
むしろ、
抜け出せないままでも、人は感情を燃やすことができるという、
静かで力強い肯定です。
もし今、
同じことで何度も悩んでしまっているなら。
もし今、
自分の中の“しつこい感情”に疲れているなら。
そのループは、決して無意味ではありません。
この曲は、誰かの物語ではなく、
あなた自身の内側にあるものを映し出しているように感じます。
「あぶく」は、
あなたの内側にある“消えないもの”に、そっと火を灯す歌。
どうかこの曲を、
あなた自身のための“処方箋”として受け取ってみてください。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも様々なアーティストの楽曲を考察しています。
ぜひそちらもご覧ください。
あなたの“心のリアル”に寄り添う一曲が、きっと見つかるはずです。
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