――人生のハンドルを手放すとき。
本当に返納しなければならないものとは?
あなたは人生の岐路に立ったとき、
「これまでの自分」と別れなければならなくなった経験はありませんか?
長年続けてきた仕事。
慣れ親しんだ環境。
当たり前のようにできていたこと。
それらを手放す瞬間、人は喪失感を覚えます。
しかし、その別れは本当に終わりなのでしょうか。
THE ALFEE「Crossroad-愛の免許返納-」は、
そんな人生の転換点に立つすべての人へ向けた
メッセージソングなのかもしれません。
―心に効く、音楽の処方箋―
【メンタルエイド】BRAND-NEW MUSIC DAYS
今回は、THE ALFEEの楽曲「Crossroad-愛の免許返納-」を考察します。
結成50周年を越えてなお、
日本のロックシーンを走り続けるTHE ALFEE。
彼らの楽曲「Crossroad-愛の免許返納-」は、
2026年6月19日公開の映画『免許返納⁉』の主題歌です。
映画では、
アクションスターとして一世を風靡した70歳の大俳優・南条弘が、
俳優仲間によるバイク事故への軽率なコメントをきっかけに、
世間から「いつ免許返納するのか」と問い詰められる立場へ追い込まれていきます。
一見すると高齢ドライバー問題を扱った作品のようにも見えます。
しかし、その根底にあるのは「免許返納」そのものではなく、
人生の転換点をどう受け止めるか
という普遍的なテーマではないでしょうか。
この記事では、映画『免許返納⁉』との関係性も踏まえながら、
この楽曲が現代社会に投げかけるメッセージについて
【メンタルエイド】の視点で考察していきます。
筆者がこの楽曲に触れたとき、脳裏に浮かんだのは――
終電を指さし確認で見送る駅長の姿でした。
ホームから静かに離れていく最後の列車。
賑わいは消え、駅は静寂に包まれる。
けれど、その光景に悲壮感はありません。
なぜなら終電は終わりではなく、
翌朝の始発へと続く区切りだからです。
夜が来るから朝が訪れる。
別れがあるから出会いが生まれる。
人生の転機もまた同じではないでしょうか。
何かを失うことばかりに目を向けていると、
その先に待つ新しい景色を見逃してしまう。
この楽曲から感じたのは、そんな静かな希望でした。
歌詞からまずイメージされたのは――
「愛」と「夢」という二つの免許を返納する二人の姿でした。
物語は、
冷めてしまった二つのティーカップから始まります。
かつては同じ時間を過ごし、
同じ温度を分かち合っていたはずの二人。
けれど今は、
それぞれがスマートフォンやパソコンに向かい、
会話らしい会話もない。
そこにいるのは恋人同士なのに、
心はすでに別々の場所にいる。
その静かな違和感を破るように、
彼女が「最近、心がときめかない」と問いかけます。
部屋に広がる沈黙は、真夜中の交差点のよう。
車も人もいないのに、どこへ進めばいいのか分からない――
そんな二人の心そのものです。
やがて彼女は、二人が一緒にいる意味そのものを問い始めます。
対する主人公の心は、
ガソリンが尽きかけた車のように、もう動く力を失っている…
アクセルを踏んでも、以前のようには走れない。
ここで歌われる「車」は、単なる移動手段ではありません。
二人の恋そのものを走らせてきたエンジンなのです。
刺激を求めて走ってきた恋には、
いつしかブレーキがかかっていた。
しかし、二人は憎み合っているわけではありません。
むしろ、言い争うことさえなくなった。
本音を言えず、言い訳ばかりが増え、
主人公は自分でも分かっていながら、
向き合うことから逃げ続けています。
「別れたほうがいい」
頭では分かっている。
それでも、その一言を口にすることができない。
そこには、まだ相手への想いが残っているからです。
そして二人は、ついに人生の交差点――
Crossroadに立ちます。
ここで二人が向いているのは、同じ方向ではありません。
隣り合わせではなく、背中合わせ。
二人はこれまで一緒に描いてきた「同じ地図」を静かに畳み、
それぞれの人生へ戻っていくのです。
そこで「愛という免許」を返納します…
さらに物語の中盤では、
「夢という免許」までも返納することになります。
これは単純に「恋人と別れる」という話ではないでしょう。
二人が手放そうとしているのは、
「二人なら、この先も同じ人生を歩いていける」
という未来への期待なのだと思います。
恋が終わるとき、
人は相手だけを失うわけではありません。
その人と一緒に描いていた未来。
一緒に行こうと思っていた場所。
いつか叶えようとしていた夢。
そうした「まだ来ていない時間」まで、
同時に手放すことになる。
だからこそ、この別れは苦しいのです。
ところが、物語の最後になって、
二人の本当の気持ちが浮かび上がります。
憎み合っているのなら、別れることはもっと簡単だった。
けれど二人は、まだ互いを想っている。
それでも、素直に「好き」と言えない。
主人公を縛っているのは、
愛がなくなったからではなく、愚かなプライドなのです。
そして印象的なのが、
冒頭から登場していた冷めたティーカップです。
最後まで片づけられることなく、
ただ時間だけが過ぎていく。
二人が同時に深いため息をついたとき、
呆れたように猫まで部屋を出ていく。
この場面には、どこかコミカルさがあります。
けれど、その可笑しさの奥には、
二人の関係の切なさが隠れています。
もう終わりだと分かっている。
それでも、誰も動けない。
そんな二人を、
猫だけが先に見切りをつけて部屋を出ていくのです。
やがて二人は、それぞれの道を歩き始めます。
それは決して、相手を嫌いになったからではありません。
むしろ――
まだ好きだからこそ、同じ道を歩き続けることができなくなった。
「愛」という免許を返納することは、
愛そのものを否定することではない。
過去に二人で描いた人生の地図を閉じ、
新しい道へ進むための決断なのかもしれません。
そう考えると、
この曲の「Crossroad」は単なる恋愛の分岐点ではありません。
人生には、どれほどアクセルを踏んでも、
以前のようには走れなくなる瞬間があります。
そのとき必要なのは、
無理に走り続けることではなく、
自分が今どこにいるのかを見つめ直すこと。
そして、必要であれば、
これまで握り続けてきたものを手放すことなのかもしれません。
愛も。
夢も。
過去の自分も。
手放すことは、敗北ではない。
それは、新しい人生の道を選ぶための「返納」なのです。
Crossroadとは、
「分岐点」「岐路」「交差点」を意味する言葉です。
人生は一本道ではありません。
私たちは何度も交差点に立ち、
その都度進むべき方向を選んでいます。
映画の主人公・南条弘にとって、
免許返納は人生のCrossroadだったのでしょう。
しかし、それは高齢者だけの話ではありません。
転職。
結婚。
子育て。
定年。
夢の断念。
新しい挑戦。
私たちは誰もが人生のCrossroadに立つ瞬間を迎えます。
そのとき本当に苦しいのは、「失うこと」ではなく、
失った後の自分を受け容れられるか
という不安なのです。
映画の主人公を見ていると、浮かんでくる日本語の中に
「矍鑠(かくしゃく)としている」という言葉があります。
年齢を重ねても心身ともに健やかで元気な様子を表す言葉です。
本来は素晴らしい言葉です。
しかし現代では時に、
「まだ若い」
「まだ衰えていない」
ことを証明するための言葉として使われる場面もあります。
もちろん元気であることは素晴らしいことです。
しかし、年齢を重ねても若い頃と同じであり続けることが
果たして正解なのでしょうか。
年齢を重ねることは、
老いや衰えだけを意味するものではありません。
かといって、変化を拒み続けることでもありません。
本当に大切なのは、
変化した自分を受け容れながら、
その時々にふさわしい生き方を選ぶこと
ではないでしょうか。
THE ALFEEが
長年にわたり第一線で活動を続けている姿は、
まさにその象徴です。
若さにしがみつくのではなく、
変化しながら前へ進み続ける。
だからこそ彼らの音楽には説得力があるのだと思います。
現代社会はとても便利になりました。
スマートフォンひとつで買い物も連絡も情報収集もできます。
キャッシュレス決済によって財布すら必要なくなりつつあります。
しかし、その便利さの中で、
私たちは大切なものを見失ってはいないでしょうか。
効率。
タイムパフォーマンス。
最短距離。
それらは確かに便利です。
けれど、人間らしさとは本来、効率だけでは測れません。
迷う時間。
待つ時間。
遠回りする時間。
失敗する時間。
そうした一見無駄に見える時間の中で、
人は感情を育み、他者を理解し、自分自身と向き合います。
もし世の中が便利さだけを追求し続ければ、
人は変化を受け容れることさえ苦手になるかもしれません。
なぜなら便利さとは、
多くの場合「今の状態を維持するための仕組み」だからです。
しかし人生は変化し続けます。
若さも。
健康も。
立場も。
永遠ではありません。
だからこそ、この楽曲が伝えているのは、
変化を拒むことではなく、変化と共に生きること
なのだと感じます。
今回は、
THE ALFEEの楽曲「Crossroad-愛の免許返納-」を考察しました。
THE ALFEE「Crossroad-愛の免許返納-」は、
単なる免許返納を描いた楽曲ではありません。
それは人生の岐路に立つすべての人へ向けられた応援歌です。
年齢を重ねることは敗北ではありません。
何かを手放すことも終わりではありません。
人生のCrossroadとは、
失う場所ではなく、新しい道を選ぶ場所なのです。
静寂の夜があるからこそ、希望の朝は訪れる。
もし今、あなたが人生の転換点に立っているなら、
この楽曲に耳を傾けてみてください。
「Crossroad-愛の免許返納-」は、
変化を恐れるあなたに、
“その先にも道は続いている”ことを教えてくれる
“心の処方箋”のような一曲になるでしょう。
BRAND-NEW MUSIC DAYSでは
他にも様々なアーティストの楽曲を考察しています。
ぜひそちらもご覧ください。
あなたの“心のリアル”に寄り添う一曲が、きっと見つかるはずです。
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